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第4回 帝国の地勢学

インペリウムにおける戦略

 この論文を読む人に、Imperiumが傑作Sci-Fi ボードゲームの1つであると言って反対する人は少ないと思う。しかし、勝敗バランスでみると、日本国内の研究記事やアメリカでの戦術記事によれば、帝国有利が通説である[17-20]。リプレイやヒストリカルノート[21-24]では、地球連邦が勝利しているが、その結果が、このゲームが地球連邦有利を示唆しているわけではない。『地球連邦が困難を乗り切って勝利する』という物語が地球人の共感を呼ぶため、記事において、地球の劇的勝利が描かれるだけでである。
 日本の地球人プレーヤーの多くは、『地球連邦勝利』という解を得るために、ゲームを研究し、その結果を確認するために繰り返しプレイしたようで、いくつかの戦術記事がある[19,20]。一方の米国では、ゲームの初出荷が1977年とかなり昔のため、米国ゲーム誌上で組まれた特集等は日本国内には殆ど流通しなかった[1,2,4-8,11-12,16-18,25-31]。
 Imperium第1版をベースとしたアメリカでの戦術記事[17,18]、日本国内の研究記事[19,20]によれば、帝国有利が通説である。例外としては、ディベロッパーのFrank A. Chadwickは連邦と帝国のモニター艦を用いて、帝国有利説に反論している記事[16]がある程度である。日本では、バランス改善に関する同人誌[32]や雑誌記事[33]があり、ネット上でも盛んに議論されていた。しかし、アメリカでは日本と比較して雑誌、ネット上でバランスの議論がほとんどなされていない。Marc W. MillerはG. Cotikyanのインタビュー記事[2]や受賞投稿記事[1]で、Imperiumをmy best Gameと言い、GDWの公式雑誌でも、前述の戦術研究[17]とChadwickの記事[16]以外は、バリアント記事[25,26]がある程度である。つまり、アメリカでは、日本国内とは異なり、ゲームバランスに関する議論がなされた感じがない[1-8,11,12,16-18,25-31]。多分、米国人は日本人ほど、この種のSci-Fi Gameに、勝敗バランスを求めていないのではないかと考えてしまうほどである。
 ゲームのバランスの悪さと、ゲームとして面白さとは、別のことではあるが、バランスの悪さを理由に、低い評価をする人が居ることも事実である。高濱さんから、松家@GJ氏、談として、「インペリウムをゲームバランスの観点から駄作呼ばわりさせないためにも、なんらかの形で(初心者指南のために)初期移動の定石研究・紹介をするべきである」との話を又聞きし[37]、私の考える、帝国と連邦の戦略を紹介する。
いる。

本論文はMarc Miller氏とのQ&A等で得られたルールを元に記述してある。
そのため、国内流通した日本語訳、日本版のルールとは若干異なる[12]

略号一覧

大文字:第1種星系、小文字:第2種星系、大文字:第3種星系
艦種略号:宇宙艦
WD:ワールド
OP:前哨基地(設置済), PD:砲台(設置済)
RT:一般兵、JT:降下兵

帝国の植民政策

 国際通信社のインペリウムセカンドエディション[43, 44]では、帝国の初期配置に関して、「ワールドと前哨基地は接続(連絡)可能な星系に配置する」となっている。HJ版の和訳[41, 42]は、「ワールドと前哨基地は1つのジャンプ路を介してお互いに結ばれるように配置する」となっていたが、版により「結ばれる」の定義が異なっていた。
 英語版[38-40]は、"Care must be taken that all Imperial outposts and worlds are connected."は変わっていない。また、英語文献で、初期配置に関する記述があるのは、Steve Listのレビュー[18]だけである。S. Listは、レビューの中で、"The mperial player has discretionary placement of ten Outposts and Worlds, which must be placed in adjacent systems (this is not readily apparent in the rules, but was affirmed by Marc Miller in an interview).”(11ページ 左コラム 第2パラグラフ 4行目)と書いている。初期配置に関して、ルールからは分かりにくいので、Marc Millerのインタビューで確認したと書いている。
 帝国にとって、国際通信社のルールよりも、S. Listの解釈の方が、配置制限が厳しい。帝国が有利と思うプレーヤーは帝国に制限をかける意味で、「ワールドの前哨基地は1つのジャンプ路を介してお互いに結ばれるように配置する」としてはどうだろうか。もし地球連邦が有利と思うプレーヤーは、帝国に初期配置での戦略的自由度を与えるという意味で、「ワールドと前哨基地は接続(連絡)可能な星系に配置する」とすれば良い。
私は、帝国有利と思っているので、ここでは、S. List[18]、HJ日本語訳[41]に沿って話を進める。


2000年にMarc Millerがデザインし直したImperium 3rd Millenium[45]のシナリオは、前哨基地とワールドの配置星系が指定されていた。銀河戦争シナリオ6: 第1次恒星間戦争も開戦時の前哨基地とワールドを置く星系が指定されていた。SOL2 Marsの地上ボックスが追加されたり、未設置の前哨基地が無い、初期配置される前哨基地の数がGDW版と異なってる等、GDW版Imperiumにそのまま移植することはできないが、帝国のワールドと前哨基地が1つのジャンプ路を介してお互いに結ばれるように配置されていた。Imperium 3rd Milleniumで示された M. Millerの配置は、S. Listの説明が正しいことを示している。


帝国の干渉

 これまで数多くの人とゲームをプレイしていると、ルールには「シーケンスに従ってプレイする」とか「シーケンス以外のことはできない」と書かれているのに、意外と思い込みによってとシーケンス通りにプレイしない人が多くいることに気がつく。
 インペリウムでは、帝国の整備と生産フェイズの進め方で、シーケンス通りにプレイしない場合がよく見受けられる。帝国の整備と生産フェイズは、1. 収入の計算、2. 整備(と生産)、3. 生産完了ユニット受け取り(と配置)、4. 帝国干渉表、5. 皇帝への直訴の順にプレイすることになっている[40, 43]。国際通信社2019年版[44]では帝国干渉表と直訴が1つサブフェイズにまとめてある。読者の方も帝国干渉表と直訴表を参照してから、収入の計算していないだろうか?
 インペリウムでシーケンスの順番が問題となるのは、主に予算が増減するイベント(不況と好況、直訴の10ルーを与える、予算の増額)である。なぜなら、これらのイベントが発生した時、シーケンス通りに進めていると、収入の計算も、整備と生産も終わっているからである。つまり好況や直訴で与えられた10ルーは、直ちに受け取れるが、使うのは次の帝国ターンの生産と整備フェイズになってからである。同じように予算の増額も次のターンの収入の計算からになる。不況のルールは分かりやすく「次の3ターンの間、収入が10ルー減る」[38-42]となっていることから、次ターンの収入の計算から10ルー減るのである。
 国際通信社版[43,44]では、「現在のターンを含めて3ターンの間、収入が10ルー減る」と修正されている。収入の計算、整備や生産が終わった後で減った10ルーは、マイナスの資源備蓄として次ターンに繰り越すことなると考えられる。次のターンは、見かけ上、20ルー減るので最低1ルーの予算があるというルールが適用されやすいかもしれない。
 同じ理由で、戦時急造許可で建造される宇宙艦の受領と配置は次ターンとなる。
 辺境地での危機、増援や攻勢命令は、同じターンの第1移動フェイズにマップ端のジャンプ路を経由して、宇宙艦が出入りすることになる。内戦に関しては、内戦が発生した帝国干渉表サブフェイズに、直ちに派遣部隊を選び、ミサイル力を計算し、内戦表を参照し結果を得ることになる。派遣部隊はつづく第1移動フェイズに秘密裏に盤端から出て行ったことになる。内戦の結果は最速1ターン後なので、予算の増額や報奨金などは、次のターンの開始時に受け取れる可能性がある。


帝国の構想

 S. Listは、インペリウムのマップは3つの領域に分割している。1つはAgiddaを一方の端とし、地球連邦中枢を含み、もう一方の端をProcyonとするテラン ネットワーク(地球圏)である。2つ目は、帝国側マップ端からNUSKUを介して地球圏と繋がっている星系列である、インペリアル ネットワーク(帝国圏)。最後の一つはSIRIUSを一方の端、他端をShuruppakとするマイナー ネットワーク(シリウス圏)である。ProcyonからMILRABILISに繋がっている支流は地球圏の一部であり、NUSKUからAMARKU, LAGASHにつながる支流は帝国圏の一部である。
 帝国のワールドと前哨基地の配置は、DINGIR, GASHIDDA, ISHKURのワールドを1つのジャンプ路を介して結ぶため、Shulgu, Allamu/Shulgili, Enki kakammaに3個の前哨基地を配置することは確定している。またSIRIUS方面の蓋としてShuruppakにも前哨基地を配置したい。残るワールド3つの配置箇所は、NUSKU, TAU CATI, EPSILON ERIDANI, AMARKU, LAGASHしかない。つまり、Zaggisi, Apishalに前哨基地をNUSKUにワールド配置することも自動的に決まる。つまり、残りのワールドと前哨基地の配置は、実質的に以下の4種類の配置で代表できる。

(1) TAU CATI, EPSILON ERIDANIにワールドを、Agiddaに前哨基地を配置。
(2) TAU CATI, EPSILON ERIDANIにワールドを、Markashiに前哨基地を配置。
(3) AMARKU, LAGASHにワールドを、Ishimshulgiに前哨基地を配置。
(4) LAGASHとTAU CATI にワールドを、Ishimshulgiに前哨基地を配置。

 最後の前哨基地をDushaamに配置する案もある。しかし、Dushaamに前哨基地を配置するのであれば、Agiddaに前哨基地を配置し、1ターンの生産で作った前哨基地を2ターンにDushaamに設置する方が良い。その程度の時間はAgiddaでの争いで十分稼ぐことができる。


国内の状況

 日本において、帝国軍の最優戦略とされているのは配置(1)を用いて、Agiddaを一方の蓋として、Barnard's starかProcyonを攻略する短期決戦型の配置である。日本の代表的なレビュー[19,20]では、国内でのセットアップルールの混乱もあるが、前哨基地をAgiddaに配置するセットアップ(NUSKUにワールド、DushaamとAgiddaに前哨基地を配置)で戦略が議論されている。
 この配置において、中村[19]は「艦隊封じ込め戦略」を帝国軍の最有力戦略であると指摘している。「艦隊封じ込め戦略」は、Marc Millerのルール説明と中村の解釈が少し異なっている。このため、中村の「インペリウム百年戦争史」に書かれている基本戦略のいくつかに見直しが必要である。
(A) 艦隊立てこもり戦略: 地上ボックスの艦隊を宇宙空間に移せるのは「対惑星サブフェイズ」、または「宇宙戦サブフェイズ」に上空にいる味方艦隊と合流する場合のみに限定されている。このため、上空に敵艦隊がいる星系の地上ボックスの宇宙艦は、友軍の来援なしに上昇できないため、運用を変える必要がある。

国際通信社2019年版[44]では、地上ボックス→恒星ヘクス移動の例外ルールがある。
「地上ボックスにいる宇宙艦は、移動フェイズの最初に恒星ヘクスに離陸できる。
恒星ヘクスに敵宇宙艦がいる場合は、移動を停止し、続く戦闘フェイズで戦闘することになる。」

(B) 艦隊封じ込め戦略:移動フェイズ開始時に敵宇宙艦の居る星系の宇宙艦はジャンプ/亜光速移動で星系を離れられる(つまり、生産されてSOLに配置された宇宙艦は、SOL以外の星系に移動できるのである)ため、成立しない。連邦艦隊を封じ込めれるのは、SOL〜ALPHA CENTAURI A/Bではなく、Barnard's star〜Proxima centauri〜Junctionのネットワーク内になる。

国際通信社2019年版[44]には、生産完了ユニット配置の例外ルールがある。
「恒星ヘクスに敵宇宙艦がある第1種星系に生産された宇宙艦を配置する場合、地上ボックスにしか配置できない。」

 (A)(B)の修正をした上で、帝国が1ターン目にBarnard's starやProcyonに攻勢をかける短期決戦戦略を選択した場合、帝国は攻撃軸に特別移動フェイズに主力部隊が移動しなければならない。つまりセットアップ時に決めておく必要がある。
 特別移動フェイズに主力部隊が移動した場合、連邦の主力での反撃は、失敗=ゲームエンドとなることから、安全に2ターン目の生産物を受け取れる連邦の「宙域確保戦略」[19]は優れた戦略である。この戦略の弱点は、第2ターンの第2移動フェイズにしかProcyonに増援の歩兵を送り込めないことである。つまり、西山[20]が指摘するように、第1ターン第1移動フェイズに連邦SCがSIRIUSに進出してない場合、反撃フェイズ中にProcyonへ進出し、歩兵部隊が無爆撃降下することは、帝国の義務である。
 次に主力が運悪く敗北した場合に、戦線維持に必要な兵力を考える。帝国主力艦隊が敗北した場合、連邦には足止めのSCしか残っていないと考えられるため、Procyon〜SIRIUSラインにDDx2, AOを、NUSKU〜Agidda〜Barnard's starの防衛ラインには、SCx1とAgiddaのモニター艦で2ラインが引くことができ、連邦の第2ターンの攻撃を凌ぐことができる。従って、予備兵力は、DDx2, SC, AOとなる。また、主力が敗北した場合の最悪事態としては、連邦がNUSKU/Dushaamに歩兵部隊を降ろし、前哨基地を設置していることが考えられる。救援の歩兵を送り込むためには第1ターンに歩兵を生産して置く必要がある。

 中途半端な兵力で特別移動フェイズにBarnard's starに攻撃をしかければ、連邦軍はモニター艦と共に反撃し、勝利することになる(主力艦隊同士の戦闘でも、帝国の勝率は30〜20%)。帝国軍は主力で連邦主力艦隊を捕捉、撃破できるが、SIRIUS方面の帝国軍は第2移動フェイズにしかProcyonに到着でない。そして連邦が第2ターンの第1移動フェイズにProcyon, Barnard's starに増援を送り込めるため、「宙域確保戦略」が成立することになる。また、SIRIUSに攻撃をしかける場合、Agiddaに残す兵力は、モニター艦を含めて、連邦の攻勢に耐えれるレベルが必要となるため、SIRIUS方面の兵力は減少する。SIRIUS方面は連邦のモニター艦が無いが、連邦主力艦隊(CL, MB, DDx2, SC, TRx4)相手に勝利できる艦隊を派遣することは難しい。連邦がSIRIUSで勝利すると、Barnard's star方面の帝国軍が第2移動フェイズに到着できるのはSOL〜ALPHA CENTAURI A/Bのライン、Procyonとなる。連邦は第2ターンの第1移動フェイズにProcyonに増援を送り込めるため、「宙域確保戦略」が成立することになる。兵力的な観点から見ると、SIRIUS方面に主力を配置することは難しい。つまりBarnard's star方面からの侵攻が現実的である。

 帝国は、モニター艦の整備に3ルー、Dushaam又は、Markashiに配置する前哨基地に4ルー、降下兵部隊に3ルー消費したい。帝国は残りの13ルーで第1ターンの生産をすることになる。宇宙艦を中心として攻撃兵力を生産するか、前哨基地を生産し、長期的な生産力確保を目指すか、ある程度決める必要がある。


帝国の戦略

 配置(1)は、前述のように、国内での研究が進んでいる[19、20]。この配置の問題点は、2つである。1つは、DushaamとMarkashiに早期に前哨基地を配置する必要があること。このタイミングが初期攻勢と重なっているため、生産、配置のタイミングの見極めが難しいことにある。もう1つは、Agiddaを防衛する反撃艦隊が対応可能な範囲が、Agidda - Zaggisi - Shuruppakとなり、シリウス圏が防衛圏外に取り残される。このため、ワールドを失う可能性があることである。
 初期攻勢を行わずに、帝国圏内の整備と戦力充実を図った場合、1つ目の問題はなくなる。一方で、連邦がBarnard's starとProcyonを長期保持体制に入ると、連邦反撃艦隊が対応可能な範囲が、Barnard's star〜Procyon〜Shuruppak、またはAggida〜Junction〜EPSILON ERIDANI, Markashiとなるため、シリウス圏が連邦の反撃範囲に入ることになる。NUSKU/Dushaam〜Karkhar〜EPSILON ERIDANI, Markashiに防衛圏をシフトし、シリウス圏を反撃範囲に入れると、Agiddaが圏外に取り残される。この問題は、初期攻勢に失敗した場合にも発生する。
 帝国は、TAU CATI, Markashi〜NUSKU/Aggida〜Kagukhasagganまでで35ルーの予算を確保しているのに対して、連邦は、Barnard's star〜SOL〜Procyon〜MIRABILISで49ルーの生産力となる。帝国がシリウス圏を失うと、帝国-3ルー、連邦+17ルーとなり、経済格差は致命的になる。
 国際通信社2019年版[44]は、惑星ボックスに配置可能な砲台/惑星防衛システムの数を1個に制限している。このため、最前線の星系は、降下兵などによる無爆撃降下を受ける可能性が高くなったため、砲台をNUSKU、Aggida、Shuruppakに配置するのが一般的である。

 配置(2)は、S. List[18]がTAU CATI, EPSILON ERIDANIにワールドを配置するのであれば、最後の前哨基地はAgiddaよりMarkashiに配置したいと書いている初期配置である。(1)と比較すると短期決戦への大きな利点は無いが、NUSKUやMarkashiから初期攻勢が可能な上、帝国防衛圏を最初からNUSKU/Dushaam〜Karkhar〜EPSILON ERIDANI, Markashiにシフトしてあるため、守り易い配置である。また、長期戦に関しても、最初にDushaamに前哨基地を配置し、帝国圏内の星系に前哨基地を配置しながら、Agidda、SIRIUSを戦場に設定できるため、AgiddaやProcyonへの連邦モニター艦配置の阻止しやすい。また、連邦に無砲台前哨基地2カ所を防衛させ、Procyon、Barnard's starの安全確保のために連邦を小型艦の消耗戦に引きずり込むことも可能である。一方、AMARKU/LAGASHにワールドが無い状態では、NUSKUの戦場化がAMARKU/LAGASH方面ネットワークに前哨基地を配置して収入源とする場合のリスク因子になる。(2)の配置は、帝国防衛圏の端が、NUSKU〜EPSILON ERIDANI〜Markashiになり、ワールドが最前線に露出し、ワールドの得失が終戦を決めることになり、直訴で終戦を調整できる帝国の優位が失われることも小さいが問題である。それに対応するため、シリウス圏の2か所のワールドに砲台を配置するか、1つをMarkashiに配置するかも、悩ましい問題である。

 配置(3)は、TAU CATI, EPSILON ERIDANIの替わりにAMARKU/LAGASHにワールドを配置し、NUSKUより先のネットワークとの連絡を確保し、同ネットワークに配置する前哨基地を安定した収入源として、長期戦を戦うための配置となっている。この配置は、NUSKU/Dushaam〜Karkhar〜EPSILON ERIDANI, Markashiを最初から帝国防衛圏と設定し、(2)同様、Agidda、SIRIUSを戦場に設定し、小型艦での消耗戦を強いることができる。この配置は、連邦にBarnard's star、ProcyonやAgiddaの防衛戦を強要でき、それらの中から攻撃目標を選択できるため、初期の戦略選択の幅が(1)より広いと言える。また、TAU CATI, EPSILON ERIDANがワールド化していないため、キャンペーン初期は戦闘機と小型艦での防衛がやりやすく、シリウス圏は功績面でも戦場に設定しやすい。その場合、帝国にとってのShuruppakが連邦のProcyonと同じ役割を持つことになる。

 配置(4)は、配置(3)の AMARKUのワールドをTAU CATIに配置したもの(EPSILON ERIDANIより内地に配置し、SIRIUSからの攻撃に曝されにくくしている)で、配置(2)と(3)の間の配置(2.5)と呼ぶべきものである。この配置のポイントは、LAGASHのワールドでNUSKUより先のネットワークとの連絡を確保し、同ネットワークに配置する前哨基地を安定した収入源として長期戦を戦うことと、TAU CATIのワールドをEPSILON ERIDANI〜Markashi〜Shuruppakのネットワークの連絡ワールドとして砲台を設置して防御力を上げて利用することである。一方で、配置(2)の持つ、地球連邦がSIRIUSを突破した場合にワールドが攻撃に曝されること、配置(3)の持つEPSILON ERIDANI, Markashiに前哨基地を早く設置する必要がある等の両方の配置の弱点を合わせ持つことに注意が必要である。尚、Marc W. Miller's Traveller Worldの未来史におけるヒストリカル配置は(4)である。

 S. Listのレビュー[18]では、(1)よりは(2)、(3)の配置によるAgidda、Barnard's starとProcyonで消耗戦を展開しながら、領土を整備することを勧めている。(2)〜(4)の配置は、時間をかけてキャンペーンを進める戦略のため、ゲームエンド(終戦)に向けた戦略が描きにくいという問題点がある。また、初期配置でも、NUSKU防衛艦隊の編成と整備計画で2通りの戦術がある。
(a) NUSKUにRTx3, M, CR、Shuruppakに AO, TR(JT), DDx2、残りのSCx2, CLx2, TRx3 をApishalに配置する。これは連邦にNUSKUを攻めさせ、勝敗に関係なくMB, SCx3を消耗させ、防衛戦力不足を強いる戦術である。反撃フェイズにShuruppakのDDx2でSIRIUSに進出しているSCを攻撃する。連邦の残存艦隊が、SCx2, DDx2, CLのため、NUSKU, Agidda, Procyon防衛に3ユニット使うと、SIRIUSへの第2移動での攻撃は困難を極める。NUSKUに攻撃をしない場合は、Apicalの艦隊でAgiddaに、またはShuruppakの艦隊でSIRIUSに反撃移動することになる。
(b) NUSKUにM, SCx2, CLx2, CR, TR(RT)x2, TR(JT)、ShuruppakにAO, TR, DDx2と配置する。連邦はNUSKUへの攻勢は不可能なので、NUSKUの艦隊でAgiddaに反撃移動する。

 連邦から見ると、帝国の配置が(2)(3)の場合、Agiddaが確保でき、Barnerd's starの安全が確保できるため攻勢に出ない方法もある。帝国がKarkharに基地を構えると、NUSKU/Dushaam〜EPSILON ERIDANI〜Markashiが帝国の反撃範囲に入るため、EPSILON ERIDANI〜Markashiラインを超えての侵入は簡単ではなくなるが、Procyonの安全もある程度確保できる。ただし、帝国が初期攻勢を仕掛けてきた場合、「宙域確保戦略」[19]を用いても、Agidda、Barnard's starとProcyonの惑星ボックスを同時の維持することは、連邦にとって簡単ではないことに気がつくはずである。

 連邦が第1移動フェイズに、Agidda、SIRIUSまで進出した場合、帝国の反撃は、先に書いたように、NUSKU方面艦隊によるAgidda攻撃、またはShuruppak方面艦隊によるSIRIUS攻撃のどちらかである。帝国がAgiddaを攻撃する場合、Agiddaは連邦が命運をかけて防衛する重要星系ではないため、Agiddaを攻撃した艦隊が少数で無い限り、連邦がAgiddaに反撃してくることはない。したがって帝国第1移動フェイズでは、Barnard's starとSIRIUSが攻撃可能となる。連邦には、どちらか一方しか攻撃する戦力が無いため、特別移動フェイズでBarnard's starに移動し、モニター艦と共同で反撃することになる。帝国はAgiddaへの退却ができないため、Barnard's starはCLとSCからなる艦隊で攻撃すれば十分である。帝国は第2移動フェイズで、ProcyonとBarnard's starを再攻撃することで、連邦軍がモニター艦を両星系に配置することを阻止できる。また、連邦がAgidda防衛に地上軍や前哨基地を配置している場合は、Agidda, Barnard's star, Procyonの中で弱兵の惑星ボックスを攻撃すればよい。
 帝国がSIRIUSをDDx2で攻撃した場合、連邦は第2移動フェイズに全力で反撃する必要がある。連邦が反撃しない場合、連邦が失う星域はAgidda〜Barnard's starとSIRIUS〜Procyon〜Junction〜Hades〜Infernoとなる。連邦はこの防衛戦でSCx6, DDx1を失う。連邦がProcyonを救援に行けるのは、第2ターン第2移動フェイズとなるため、帝国はProcyonで最大3回(自身の2回の戦闘フェイズと反撃フェイズ)地上戦を実施できるため、Procyonは帝国の制圧下となる。
連邦がSIRIUSに反撃した場合、反撃兵力はSIRIUSから脱出できないため、連邦の特別移動と反撃はより限定される。その結果、帝国は主力を持って、第1移動フェイズでSIRIUSに移動し攻撃、残余艦隊でAgiddaを攻撃することが可能となる。また、連邦は特別移動を実施しても、AgiddaやSIRIUSに反撃しないと考えられるため、つづく第2移動フェイズで、ProcyonとBarnard's starを攻撃でき、Agiddaを攻撃した場合と同じくターンエンドになる。ターンエンドの状況は同じであるが、後者の方が連邦モニター艦との戦闘をしていないため、損害が少ない可能性が高い。この点でSIRIUS攻撃の方が良い選択と考えられる。
 連邦が攻勢に出ず、帝国を引き込もうとする場合も考えられる。この誘いにのると、帝国は反撃戦力が分散しているため、ターン終了時には宇宙艦不足に悩むことになる。

 連邦は、シリウス圏のワールド化が進まなければ、Agidda〜SOL〜Procyon〜MIRABILISの星域で確保可能な生産力は、43ルーである。連邦が手持ちの前哨基地を全て配置したとしても、新たに13個の前哨基地を生産、配置する必要がある。帝国は、TAU CATI, Markashi〜NUSKU/Dushaam〜Kagukhasagganで34ルーが確保可能であり、11個の前哨基地の生産と配置が必要である。第1種星系のワールド化が進まなければ、経済力格差は最大でも9ルーに留まるため、シリウス圏の第1種星系が連邦のワールドになるのを阻止するが、中盤戦のポイントである。
 前哨基地は、DushaamとKarkhar、シリウス圏の星系に最優先で配置したい。功績ポイントの増減条件(前哨基地設置: 0ポイント、前哨基地損失: -1ポイント、敵前哨基地破壊: +1ポイント)から考えると、属州長官が戦時中に植民することは殆ど無く、戦後に植民すると考えられるが. . . 、長期戦略を考える上では、残りの前哨基地も第1次戦争中に配置し終えたい。1次戦争で全て配置するには、1ターンに3個前哨基地を生産したといても4ターン必要なうえ、艦隊の補充にも影響を与える。現実的な線としては、1ターンに2個前哨基地を生産し、6ターンにまで戦争を続けることである。この場合の終戦功績は3ポイントなので、必要に応じて経済直訴し、増額予算を前哨基地建設に利用するべきである。また、帝国は、連邦の前線にプレッシャーを与え続け、前哨基地の大量生産が困難な状況に置いておくことも重要がある(2019日本語版では例外処理のおかげで、前哨基地だけの惑星ボックスの攻略がやりやすく修正されているので、地球圏にTR(RT)を侵入させ、ゲリラ的に前哨基地を破壊するのも良い戦術になる)。
 続く戦争において、Procyonを主攻勢軸、Agiddaを補助軸として戦い、Procyonの確保を目指す。EPSILON ERIDANI, Markashiを帝国が保持していれば、帝国が有利な最初の数ターンは、Procyonに直接攻撃が可能であり、この時間帯にProcyonより内部の連邦前哨基地を破壊し、経済ダメージを与えることが重要である。連邦が経済、戦力を回復する前に、Agiddaにプレッシャーを与えつつ、Procyonを攻略することが目標となる。Procyonは連邦側に4つのジャンプ路があり、帝国側はSIRIUSを経由して2つのジャンプ路があるため、平時の領土交換で交換することが難しい星系である。戦時中に攻略することが必須である。連邦が反撃してきた場合も、シリウス圏の第1種星系に前哨基地を設置させないように戦うことが重要である。 TAU CATI、EPSILON ERIDANIを帝国のワールド化は、功績面でのマイナスがあるが、シリウス圏の防衛には良い方法である。
 最終的には、連邦の予算が約50ルー、帝国の予算が34ルー+αになる。この経済格差と、戦力差を埋める戦略が必要となる。明確な戦略が無いと、Shuruppak、SIRIUS, Agidda, Barnard's starの1〜2カ所で大規模な戦闘が発生し、その勝敗がキャンペーンエンドにつながることになる、連邦初期のBarnard's star戦のような状態になる。帝国は、小型艦の性能優位性(経済性換算: 0.5ルー/ユニットの優位性)と直訴/補充で出入り16ルーの利益を得れば良い訳で、大変な作業ではない(例えば、CRを補充で受け取ったときに、CRでSCを撃破しMBと相打ちとする。次ターンはCSを補充で受け取り、CSでSCを撃破しMBと相打ちとする。このローテーションを繰り返すと、補充だけで16ルー/ターンの回収ができる)。経済的なダメージを考えると戦場はシリウス圏とAgidda〜Barnard's starあたりに設定するのが望ましい。
 数次の戦争の間に、Procyonを確保できれば、後は力をため、後の戦争でSOL、ALPHA CENTAURI A/Bを1回の戦争で落とすつもりで進めれば良い。


1. Imperium
第3回 インペリウムを楽しむ
第5回 連邦の戦略

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