分室,提携サイト:ゲーム工房URA

1980 Asteroid

Asteroid [GDW] - Series 120 -

"Asteroid" was designed by Marc W. Miller and Frank Chadwick. The game was published by Game Designers' Workshop (GDW) in 1980. Reprint of the game in color box issued in 1983. In Japan, the reprint issued in 1985, 2003 and 2020. This is looked like a "role playing board game". The game follows the adventure of twelve comedians chosen to saved the earth.

 小天体と地球の衝突を扱った小説や映画は多数あるが、ボードゲームの代表は"Asteroid"だと思う。これまで、タクティクス誌[1]、シミュレータ誌[2]やRPGamer日本版[3]でリプレイ記事が公開されていることからも、このゲームの知名度の高さが伺える。TUBG内でのAsteroidのプレイは、1対1の対戦以外に、ロールプレイング・ゲーム風のルールを利用してExpedition (探査隊/人類側) playerを複数人で担当して、Computer (コンピュータ頭脳側/コンピュータ側) player ≒レフリーでプレイした。

 AsteroidはGDWが1980年にSeries 120の小箱(9 x 6 x 1.5 inch)版として出版した。国内では、1982年にホビージャパンが和訳付きで輸入販売した。Fig. 1は1982年にホビージャパンが輸入して和訳付きで販売していた、Series 120の小箱版"Asteroid"である。カバーアートは、William H. Keith Jr. が描いたイラストが用いられている。


Fig. 1 Game components of "Asteroid" in the small boxed edition
The 1st package of "Asteroid" published in Series 120 game box.

 Fig. 2は、1983年に再版されたカラーイラストの平箱(11 x 9 x 1 inch)版"Asteroid"である。Paul Richard "Rich" Banner が描いた、警備ロボットに立ち向かうニコルと、その陰に他のメンバーが隠れているアメコミ風のイラストは、このゲームをプレイしたBannerが経験した一場面のように見える。内容物に関しては、ルールブックとマップは1980年の初版と同じである。カウンターシートは切断の金型が替わったようで、下にあった余白が上に変わっている。


Fig. 2 Game components of "Asteroid" in a color illustration box
Game components of this Asteroid in color illustration box is same as 1st edition.

 Fig. 3は、1983年のカラーイラストの平箱版"Asteroid"の第2版である。カバーイラストはFig. 2と同じであるが、ルールブックがボックスと同じサイズになり、巻末のcopyrightが、Copyright(c) 1980, 1983となっている。e-bay等を見ていても、Fig. 2のAsteroidは見かけても、2nd editionのAsteroidは1度しかみたことがなく、流通数の少ないアイテムのようである。ルールは言い回しの修正を除けば、第1版と同じであるが、レイアウトが2段組になり、全体の雰囲気はホビージャパンの日本語版に近い。


Fig. 3 Game components of "Asteroid 2nd edition" in the color box
"Asteroid 2nd edition" published in color illustration box in 1983.
The rule booklet is same size as box.

「アステロイド」日本版は、ホビージャパンが1985年に GDWゲームの日本版ライセンス生産の1つとして出版している。Fig. 4はホビージャパンの「アステロイド」日本版である。特徴としては、8分割マップが裏打ちされていることである。タクティクス誌には、発売当時の販売促進用のリプレイが掲載されている[1]。突入前の緊張感あふれる集合写真のような箱絵は加藤直之が描かいたものである。


Fig. 4 Game components of "Asteroid" of Japanese Edition by Hobby Japan
The maps are printed on cardboards.

 Fig. 5は国際通信社発行のRPGamer日本版の創刊号(2003年)の付録として添付された「アステロイド」日本版である。基本的には変わっていないが、チャートに記載されていた、Hit Close, Hit Far, Kill, Melee, Move等の値がユニットに印刷されている。アステロイドの説明を兼ねたリプレイ記事として速水螺旋人さんの漫画[3]が掲載されている。


Fig. 5 An appendix version "Asteroid" in a RPGamer Japan edition
The value of characters are printed on the counters.

 Fig. 6は2020年に国際通信社(K2)が「アステロイド」日本版を600個限定のボックス版で再版したものである。このバージョンは、RPGamer日本版の創刊号(2003年)の付録と基本的には同じだが、ユニットサイズが15 mmに大きくなり、裏打ちされたマップもユニットに合わせて大きくなった。また、速水螺旋人さんのリプレイ漫画[3]も再録された。限定版として出すのであれば、ユニットのシルエットを速水螺旋人さんのイラスト(リプレイ漫画の絵)にして欲しかった。


Fig. 6 Game components of "Asteroid" reprint version of Kokusai-tushin Co., Ltd.
This version of the maps were printed on cardboard, increasing the size of the counters and maps.

 "Board Game Geek"での評価は6.5。評価数もある、古いSci-Fiゲームとしては良い方である。いつも参考にしている、B級SFゲーム分科会には残念なことに記事が無い。ただ、B級SFゲームの日記でのコメントを読む限りでは、ゲームとしての評価はあまり高くない。

 一方、私にとってのアステロイドは「地球を救う、選び抜かれたコメディアン達」のゲームであり、勝敗を競うよりも、人類側の勝利条件を含めたストーリー性とはちゃめちゃ感を楽しむゲームでした。印象の近いゲームとしては、怪獣征服/シーボイガンを喰った怪獣[HJ/K2/SPI]やバグアイドモンスター[K2/WE]が思いあたる。ただし、アステロイドがシーボイガンを喰った怪獣やバグアイドモンスターと異っているのは、勝利条件が人類側プレーヤーにしかないことである。

 コンピュータ側に勝利条件が無いため、コンピュータ側プレーヤーが単純に人類側プレーヤーの勝利条件阻止を目標とするのは良く見るゲームである。西山が公開しているアステロイドの戦術は、ゲームの目標を人類側勝利の完全阻止に置いてシミュレーションする場合の一つの可能性である[4]。ロールプレイング・ゲーマーでもある私から見ると、勝利条件が無いコンピュータ側はプレーヤーというよりもゲーム・マスター/レフリーの立場に良く似ている。コンピュータ側に明確な目標が与えられていない以上、目標を人類側勝利の完全阻止とするのも、他の条件(例えば、いわゆる無理心中的な感じでニコルの拉致を目標とする)とするのも、ゲーム参加者が楽しめるのであればコンピュータ側プレーヤー(ゲーム・マスター/レフリー)の自由である。プレーヤーがゲームに望むこと(勝敗やコミュニケーション)を、この自由が拡大するため、Asteroidの印象や評価を大きく変動させていると考えられる。

 Asteroidは戦争というよりは個人戦闘なので、ウォーゲームというよりはF. Chadwickが好きなミニチュア・ゲームに近い。またMarcが目指したAsteroidは、勝利条件が人類側にしかないことや探査隊メンバーの個性を表す多くのルールから、ボード上のロールプレイング・ゲームや今でいう協力ゲームなのかもしれない。しかし1970年代後半にデザインされたAsteroidは、シミュレーション・ゲームからロールプレイング・ゲームがスピンオフしていく時期に作られた過渡的ゲームといえる。

地球を救う、選び抜かれたコメディアン達

 アステロイドを「地球を救う、選び抜かれたコメディアン達」としてプレイしたい方は、次の様にルールを微修正してプレイすることを薦める。

  1. 1つの平面図上に2個以上の階段を配置できない。
    →コンピュータ頭脳を停止させた教授(Prof)を脱出不可能にすることができるため。
  2. 人類側プレーヤーが自爆装置を作動させる迄の持ち時間を100分とする。持ち時間は、人類側プレーヤーの思案/移動で消費する。両プレーヤーの射撃戦/格闘(接近)戦を解決する時は時計を止める。持ち時間がなくなると、小惑星97Bを爆破しても、小惑星と地球の距離が近いためその破片の大半が地球に降り注ぎ、地球に甚大な被害を与える。このため人類側の敗北と扱う。
    → Series 120にはプレイ時間を120分以下とするデザイン・コンセプトがある。
  3. 射撃戦は白ダイスと色付きダイスを一緒に振る。白色を命中判定に、色付きを死亡判定に使用。コンピュータ端末利用時も同様にする。白色を情報取得判定に、色付きを警戒発生判定に使用。
    → 持ち時間節約のため。
  4. 透明(不可視)ベルト使用キャラクターが射撃をした場合、射撃戦終了後に姿を表す。
    → 姿を表すタイミングの明確化。射撃は同時解決のため、コンピュータ側のロボットは透明ベルト着用キャラクターを狙えない。
  5. 透明ベルト使用キャラクターがロボットと同じマスに入った場合、停止する必要はない。同じマスで停止しても格闘戦をする必要はない。透明ベルト装備者が射撃をした場合と透明ベルトが故障した場合は、格闘戦が発生する。
    → ルールの明確化。
  6. 透明ベルト使用キャラクターはロボットと同じマスに入った状態でも射撃ができる。ただし射撃戦終了後に姿を表すため格闘戦が発生する。この格闘戦はコンピュータ側のロボットが自動的に先攻で格闘戦を解決する。
    → 姿を表すタイミングとルールの明確化。
  7. 透明ベルト使用キャラクターが格闘戦をする場合、そのキャラクターが自動的に先攻で格闘戦を解決する。この格闘戦でロボットが撃破されなかった場合、キャラクターの姿が見えるようになるため、コンピュータ側のロボットの格闘戦を解決する。
    → 姿を表すタイミングとルールの明確化。
 私は1つの平面図上に自由配置グループのユニットとランダム(無作為)配置グループのユニットをそれぞれ1個以上配置した方が楽しめると考えている(賛否はあると思う)。また、マクドナルド博士の生前の性格や感情(ニコルに恋をしている等)がコンピュータ頭脳にコピーされているため、コンピュータ頭脳にプレーヤーなりの性格付けをしてプレイするとプレイに個性が表れて面白くなる。

ブラインド・ゲーム用シナリオ

 ブラインド・ゲーム(ルール41項)は、コンピュータ側が極端に有利になるため、ルール内でバランス調整(ルール40)の適用が薦められている。私はクローン兵士部隊と探査隊の2隊各12名が別々の進入路から攻略するシナリオを作り楽しんでいる(3人プレイも可能)。エリアン2のような戦闘部隊とコメディアン部隊のコントラストがゲームを面白くする。

 クローン兵士部隊と通常の探査隊の2隊各12名を選抜する。侵入と脱出のルールを以下のように変えて、別々の進入路から突入し、脱出する。

  1. クローン部隊の爆薬は自作する。
  2. 侵入路は探査隊とクローン部隊は別々に決定し、同時に侵入する(一方の侵入を遅らせることは可)。
  3. 生存者が13名以上の場合は、所属部隊の侵入路から脱出すること。生存者が12名以下の場合、探査隊/クローン部隊のどちらかが使用したどちらか一方の侵入路から全員が脱出してよい。2カ所から脱出してもよい。ただし、探査隊の侵入路から脱出するメンバーに、パイロットが必要であることを忘れないこと。

備忘録

 良く見かける勘違いに「探査隊が視認していないマップ上のロボットを起動し、移動させる」ことがある。これはブラインド・ゲームのルールである。アステロイドの通常プレイに関する注意を書いておく。

  1. 平面図は、人類側プレーヤーに見える場所(コンピュータ側プレーヤーの前)に番号順に置き、探査隊に視認された平面図は人類側プレーヤーの前に置く。
  2. 活動状態にするロボットは平面図上のどこにいるロボットでも可能(番号順に置かれている未探査の平面図上も含む)。
  3. ロボットが移動できるのは探査隊が視認した(人類側プレーヤーの前に置いた)平面図上に限られる。

References

[1] T. Taku: TACTICS Mgz. Jpn. No. 24, pp. 86 (1985).
[2] C. Nishikawa: SIMULATER Jpn. Ed. No. 21, pp. 56 (1989).
[3] R. Hayamizu: RPGamer Jpn. Ed. No. 1, pp. 30 (2003).
[4] T. Nishiyama: Privet website (since 2001) URL://www.geocities.jp/aokigaryou/


1. GDW Sci-Fi Games
Dash's Collections: All right reserved by Kazuhiro Ueda, 2005, 2020, 2023.

Club TUBG was established in 1984 as a volunteer club.
We keep enjoying Simulation/Board/CardGames, ComputerGames and so on.