分室,提携サイト:ゲーム工房URA
第1章 回復、隠蔽の効率
火力インフレゲーム
本論文はアクションカード枚数、捨て札の枚数、手札の枚数等カードの枚数が作る国の違いとそこから解析的に導かれる戦術について検討した結果です。シナリオA/Mを基本に、できるだけ汎用的な計算になるように心がけたつもりである。
シナリオ A 及 M での各国の平均モラルとパニック値をまとめると、Table 1.1のようになる。
Table 1.1 各国別平均モラルとパニック値
国籍 | モラル | パニック |
---|---|---|
独 | 3.2 | 3.9 |
露 | 3.3 | 3.9 |
米 | 2.8 | 4.3 |
海兵隊 | 3.6 | 4.9 |
英 | 3.1 | 4.1 |
伊 | 3.1 | 2.4 |
仏 | 3.2 | 3.7 |
日 | 3.6 | 3.6 |
最初に射撃、回復、隠ぺいの効率の国による違いと、そこから見る各国の戦術の違いについて考察した。
Table 1.2は火力別に射撃カードを1枚引くのに必要な枚数の期待である。これから読み取れることは4枚捨てれば1枚は射撃カードが引けることを示している。。相対距離1〜2での火力グループのFPは8〜10であるから、約6枚に1枚は射撃可能なカードである。
Table1.2 火力別射撃期待数
火力 | FP1 | FP2 | FP3 | FP4 | FP5 | FP6 | FP7 | FP8 | FP9 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
期待数 | 54.0 | 27.0 | 16.2 | 11.6 | 9.5 | 8.5 | 7.5 | 6.5 | 6.0 |
火力 | FP10 | FP11 | FP12 | FP13 | FP14 | FP15 | FP16 | FP17 | FP18+ |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
期待数 | 5.6 | 5.2 | 4.9 | 4.6 | 4.4 | 4.1 | 3.9 | 3.6 | 3.4 |
次に、射撃判定を考えます。Table 1.3に示すように、RNCは黒0+=1/2、黒1+=1/3、黒2+=1/4、黒3+=1/6なので、射撃力1で撃ち、1/6でPinになる(黒3以上でPinになるモラル4)とするとTable 1.4に示す確率で1人以上がPinとなる。
Table 1.3 RNCの確率
RNC | R6以上 | R5以上 | R4以上 | R3以上 | R2以上 | R1以上 | R0以上 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
確率 | 100% | 98% | 95% | 90% | 83% | 75% | 64% |
RNC | B0以上 | B1以上 | B2以上 | B3以上 | B4以上 | B5以上 | B6以上 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
確率 | 1/2(50%) | 1/2.7(37%) | 1/4(25%) | 1/6(17%) | 1/10(10%) | 1/20(5%) | 1/54(2%) |
Table 1.4 射撃力1で撃ち、1人以上Pinになる確率
人数 | 1人 | 2人 | 3人 | 4人 | 5人 | 6人 | 7人 | 8人 | 9人 | 10人 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
確率 | 17% | 31% | 42% | 52% | 60% | 67% | 72% | 77% | 81% | 84% |
大きなグループは一般的に6人以上いることから、70%位で1人以上Pinすることが期待できる。これをTable 1.5に各RNCで1人以上がピンになる確率が50%、75%を越える人数としてそれぞれまとめた。
Table 1.5 1人以上がピンになる確率が50%以上の人数
RNC → | B5 | B4 | B3 | B2 | B1 | B0/R0 |
---|---|---|---|---|---|---|
Pin確率50%の人数 | 13.6 | 6.6 | 3.9 | 2.5 | 1.5 | 0.7 |
Pin確率75%の人数 | 13.4 | 7.7 | 4.9 | 3.0 | 1.4 |
大きなグループ(6人以上)を目標とする場合、目標の平均モラルが4であっても、射撃力0で50%、射撃力1で75%で1人以上をピンにすることが期待できる。また、比較的小規模のグループ(5人以下)の平均モラル4のグループに対しても射撃力1で50%、射撃力2で75%で人以上をピンにすることが期待できる。つまり小さい射撃力で撃たれた場合でも、モラルに関係なく1人位はピンになることが期待できる。
以上見てきたように、一度射撃すると1人はPinになる射撃を4枚(相対距離1〜2なら6枚)に1枚で行える。一方、回復はTable1.6に見られるように7〜9枚に1枚しかありません。このことは2回射撃される間に回復を1度期待できることを意味しています。UpFrontは基本的に火力インフレのゲームです。
Table 1.6 国別アクションカード期待数(注:回復には2枚のヒーローも含む)
国籍 | 移動期待数 | 隠ぺい期待数(効果数) | 回復期待数(効果数)-合計数 |
---|---|---|---|
独 | 6.0 | 11.6(-1.6) | 回復6.5(2.6)-66 |
米 | 6.8 | 12.5(-1.5) | 回復7.0(2.8)-64 |
露 | 5.4 | 8.5(-1.5) | 回復7.7(2.7)-56 |
日 | 5.4 | 8.5(-1.5) | 回復7.7(2.7)-56 |
英 | 6.0 | 11.6(-1.6) | 回復6.5(2.6)-66 |
仏 | 6.0 | 11.6(-1.6) | 回復6.5(2.6)-66 |
伊 | 6.8 | 14.7(-1.6) | 回復8.5(2.8)-54 |
射撃と回復/隠ぺいの効率
遠距離での射撃と回復/隠蔽の効率
遠距離(相対距離0)では有効射撃カードが最大の独国で12枚に1枚であるから、1度射撃後、次の射撃を受けるまでに隠ぺい(9〜12枚に1枚)や、回復(7〜9枚に1枚)を引くことが期待できる。つまり、この距離では、敵に狙撃兵程度のラッキーヒット以外は与えられない。
中距離での射撃と回復/隠蔽の効率
次に中距離(相対距離1-2)を考えます。この距離になると、有効射撃カードも6枚に1枚は含まれるようになる。隠ぺいは基本的に枚数が少ないので、射撃2以上で射撃できる可能性が多々あると言える(隠ぺいは9〜12枚に1枚しかない)。
独英軍の場合、回復カードが7枚に1枚あるので、6人中1人以上がピンになる確率70%と合わせて考えると、1射撃毎に回復が1枚使われることになり、KIA以外ではあまり有効打を与えられ無いと考えられる。
仏軍は2アクションを行っている場合は独英と同じ能力を発揮するが、捨て札が1枚のため、平均的に見て独英軍より約1.5倍時間がかかると思われる。つまり、回復する前に2撃目が来る可能性が高いと言える。
米軍は回復、隠ぺいとも独英より少ないうえ、小さい回復が少ない点が問題となる。経験的には、ピン1人を回復するために回復3以上を用いることが多々発生するように思われる(米軍の回復期待値は3人)。しかし、現実は米軍の低いモラルが影響して、数人ピンになり、回復は引く毎に有効に利用されることになる。米仏は手札の多さからこの距離では回復を取っておかないと、回復を探している間に、ピン兵士に悪運の弾が命中する可能性が高くなる。
露日伊国は回復のために、9枚引くことが期待される。この距離では1枚回復を引く間に1.5回以上撃たれることを表していることから、回復していない状態で撃たれる可能性が2回に1度発生することを意味する。従って一番ピンに成りやすく壊走しやすいモラルの低い兵士が長期間戦場にとどまることはほとんど期待できないでしょう。モラルの低い兵士はこの距離でほぼ壊走することから、分隊崩壊を避ける意味でも、別の小規模のグループに編成する方が良いと言える。敵が低モラルの小グループを撃てば、結果的に、射撃グループがピンになることが避けれることになる。
前記考察で隠ぺいを考慮していないか説明する。隠ぺいは言い換えれば、兵士のモラルを上げているのと同じなので、Table 1.5に示したように比較的人数の多いグループが1人もピンにならない確率をそれほど増やすことはできない。射撃力の小さい遠距離では、1人がピンになることにより、使用可能射撃カードが減ることや、移動できなる方が相手に与える影響が大きいため、隠ぺいより、回復が重要になる。
近距離での射撃と回復/隠蔽の効率
近距離(3,4,5)では、小規模のグループでFP10程度、射撃グループではFP16以上をもつことになる。この距離では引いてきたほとんどの射撃カードが射撃可能となることを意味している。射撃力も増大しますから、1度の射撃で数人がピンになることが期待できる。こうなると、回復カードは人数制限があるため、全員を回復させれなくなる。1枚で期待できる回復人数は3人程度であり、射撃は3枚に1回、回復は独軍でも7枚に1回ですから、回復が間に合わないことが予測される。
隠ぺいはこの近距離で有効になる。この距離の射撃は1撃で半数以上の兵士をピンにし、1人程度KIAにすることが期待できる。Table1.7に全員がピンになる確率を示したが、Table1.4と合わせて考えると、隠ぺいはピンになる兵士を0人にはできないが、ピンになる人数を減らしたり、KIAを防ぐためには非常に有効である。これは黒3を黒4にするだけで、確率を50%減らせることからも明らかである。
Table 1.7 全員ピンになる確率
RNC → | B6 | B5 | B4 | B3 | B2 | B1 | B0/R0 | R1 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1人グループ | 1.9% | 5.0% | 10% | 17% | 25% | 37% | 64% | 75% |
2人グループ | 0.0- | 0.3% | 1.0% | 2.8% | 6.3% | 14% | 41% | 56% |
3人グループ | 0.0- | 0.0- | 0.1% | 0.5% | 1.6% | 5.9% | 26% | 42% |
4人グループ | 0.0- | 0.0- | 0.0- | 0.1% | 0.4% | 1.9% | 17% | 32% |
5人グループ | 0.0- | 0.0- | 0.0- | 0.0- | 0.1% | 0.7% | 11% | 24% |
6人グループ | 0.0- | 0.0- | 0.0- | 0.0- | 0.0- | 0.3% | 6.9% | 18% |
7人グループ | 0.0- | 0.0- | 0.0- | 0.0- | 0.0- | 0.1% | 4.4% | 13% |
8人グループ | 0.0- | 0.0- | 0.0- | 0.0- | 0.0- | 0.0- | 2.8% | 10% |
9人グループ | 0.0- | 0.0- | 0.0- | 0.0- | 0.0- | 0.0- | 1.8% | 7.5% |
10人グループ | 0.0- | 0.0- | 0.0- | 0.0- | 0.0- | 0.0- | 1.2% | 5.6% |
隠ぺいは人数制限がないうえ、兵士のモラルを一時的に上昇させる効果を持つため、部隊のピン/KIAになる人数を減らすことが期待できる(少なくとも1人はピンになるが)。しかも隠ぺいはアクションでないため、次の回に反撃するkとを期待できる。
西側は隠ぺいが12枚に1枚程度なので、この距離では先手を取った方が勝ちとなる。回復してもまた撃たれてまたPinになり射撃する機会を失い、一方的に撃たれ続けることになる。
露日国は隠ぺいなしで、2回射撃を受けることになるが、西側よりも(西側は3回撃たれる)反撃できる機会が多くなる。しかも高いモラル兵士との組み合わせは西側の先手に耐え打ち返すことで、相手をピンにしてイニシアチブを奪うことを可能にしている。
本章のまとめ
露日国の場合
これらの国はモラルの低い兵士は中距離でほぼ壊走する。したがって分隊崩壊を避ける意味でも、別の小規模のグループに編成する方が良い。また、大グループは射撃を受ければ1人位Pinなるので、これを防ぐには小さい高モラル兵士を撃ってもらい射撃チームが撃たれないようにする必要がある。撃たれない間に素早く相対距離2に前進し、独軍との撃ち合いに持ち込む必要がある。次に射撃チームの援護の元、高モラル兵士グループが近距離に前進し火力インフレの条件で勝負する必要がある。火力インフレ条件こそ、隠ぺいがもっとも活躍する条件であるから。
米仏国の場合
逆に米仏は中距離での撃ち合いで相手にダメージを与え、前進してくる敵に1撃で致命傷を負わせるようなやり方が必要となる。これは、3グループによる一方的側面射撃の可能性を得るか(相手が3グループなら4グループが良いのだが、人数が不足しますから現実的でない)、少し大きめの射撃グループで撃ち合うのどちらかが選択できる。大きなグループを編成した場合は小グループが弾よけになることは期待できないことから、ほぼ100%1人ピンが発生するはずである。つまり、移動できないことを示している。相手が2歩前進し自分が0になるとと次の一歩は両方ともなかなか動けないことから、3デッキ終了でVPで負けることに成りやすい。
独英国の場合
独英は人数が少ない点を除けば露日よりは近距離で弱いですが、中距離では米仏同じレベルである。つまり、相手によって戦術を選択できる柔軟さがある。英独は相手の戦術を見て対応することにより、人数の少なさを補う必要がある。
伊国の場合
伊国は遠距離で露国と同じで、近距離ではどの国より悪い条件で戦う必要があるため、解析的には幸運以外での勝機は無いと言える。しかし、UpFrontはデッキをきる3回間だけ、幸運があれば、勝利できるのだから...。
2. UP FRONT
第2章 射撃力と射撃の効率
Dash's Clinic: All right reserved by Kazuhiro Ueda, 1998.
Club TUBG was established in 1984 as a volunteer club.
We keep enjoying Simulation/Board/CardGames, ComputerGames and so on.