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帝国の晩節

Evening of the Imperium

降伏しない帝国

 登坂のHP「銀河辺境」に、帝国軍が1つの星系に立て籠もり引き分けとしたリプレイがあった[1]。初めて読んだ時は時間はかかるけど、最終的には地球プレーヤーの勝ちになるのだろうと考えていた。Imperiumのルールが第1版[2]から第2版[3]に変更になった理由を考えていた時に、末期の帝国が負けない戦略として「1星系立て籠もり戦略」が成り立ち、それを避けるために第2版ルールが作られたのではないかとの考えに思い至った。

 第1版ルールで検証すると、直訴による予算の恒久的な増額と惑星防衛システムの惑星防御射撃のため、地球の全戦力を持ってしても、1つの第1種星系に立て籠もった帝国軍を排除することは不可能との結論になった。第2版ルールを用いた検証でも、連邦は勝利できないと考えられた(後述)。

 つまり残念なことに、インペリウムは、地球プレーヤーが初期の困難な時期を乗り越えてたとしても、引き分けまたは、敗北でしか終了しないゲームなのである。

孤立星系に立て籠る帝国属州

 帝国プレーヤーがワールドのある惑星地表ボックスに一般兵(RT) 12個師団、降下兵(JT) 4個師団、惑星防衛システム(PDM) 11個で立て籠る場合を考える。地球プレーヤーは、マップ上に最大でワールドマーカー(WLM)を11個、前哨基地マーカー(OPM)を21個配置でき、毎ターン109 RUの収入を得る。帝国の領土は1つのワールドとなっている為、直訴以外の要因で功績は変化しない。つまり、戦争の期間は最長8ターン、最短4ターンで帝国が選択できる。また、資源の備蓄上限は99 RUとなっている為、地球は戦争最終ターン以外で資源の備蓄はできない(平和時の予算総額は153 RUとなる)。

 平和が5ターンを超えると、帝国軍は7PDM、8RT、1JTが退役で無くなることが期待されるため、再建費用は87 RUになる。これだけの資源を平和までに備蓄することが帝国の戦時目標となる。帝国は毎ターン11 RUの収入があるため、戦時7ターン+敗戦時予算(1ターン)で88 RUを集積できる。

地球軍の最終攻勢

 地球軍の合計ミサイル力の最大値は、11DD, 11CL, 11CS, 11CR, 11MB, 5B, 6BB, 2MS(3F)の347ミサイル力である。これは42ミサイル力 x 8 + 11ミサイル力であり、一度の惑星爆撃で8PDMを破壊/無力化ができることを意味している。

 帝国軍は惑星地表ボックスにWLMと11PDMを持っているため、惑星爆撃後に惑星防御射撃可能なのは4PDMになる。地球軍がモニター艦に一般兵(RT)を積み、降下兵(JT)と一緒に降下した場合、各ユニットの生存確率は(5/6)^4 = 48.2 %である。ここでは生存確率の高い第2版の惑星防御射撃力で計算している。地球軍の10RT、4JTの半数の7個師団しか地上に到着できない。地上には帝国の12RTと4JTの計16個師団が待ち構えているため、敗北は確定的である。

 第1戦闘フェイズ、第2戦闘フェイズと連続して惑星爆撃し、その後に地上軍を降下させる場合、第1戦闘フェイズの惑星爆撃の効果は前述と同じである。帝国の惑星防御射撃をくぐり抜ける艦隊の合計ミサイル力は、94.5ミサイル力と期待される。第2戦闘フェイズに残存艦隊で惑星爆撃すると、残りは2PDMになる。この状態で地球軍がモニター艦(RT)とJTが一緒に降下した場合、各ユニットの生存確率は(5/6)^2 = 69.4 %となり、9.7個師団が地上にたどり着くことが期待できる。10個師団が地上に降り立ったとしても、16個師団の帝国軍に勝つにはかなりの幸運が必要である。

 帝国はこの一連の戦闘で、8PDMとRT, JT で合計10 個師団を失い、再建に必要なコストは100 RU位と考えられる。地球は期待値として29 RU分の小艦艇と66 RU分の戦艦が残る。投入兵力は525 RU分の爆撃艦隊と98 RU分の地上攻撃部隊である。爆撃艦隊再建に、5ターン、地上攻撃部隊再建に1ターンを必要とする。つまり帝国は5ターンは80 RU、6ターンで100 RU備蓄できる予算があれば、同じ状態の繰り返しになる。そのために必要な帝国予算は15 RUである。先に第1版ルールでは、5回の経済直訴で実現できる値であり、第2版ルールでは内戦に正統派で2回勝利すると得られることが期待できる額である(この予算額が確保できれば、5戦争ターン+平和予算で96 RUを備蓄するにことができる)。

地球軍の戦略爆撃

 次に地球軍が毎ターン惑星爆撃した場合について考える。3PDMを確実に無力化するには、126ミサイル力が必要である。しかし連邦の生産力が109 RU / ターンのため、1ターンの生産力で126ミサイル力は生産できない。

  1. 6MB、6CS、の84ミサイル力で2PDMをリアクション戦闘フェイズに惑星爆撃し、惑星防御射撃で撃破された艦艇を直後の生産フェイズで生産する。
  2. 5MB、5CS、CR、MS(2F)の84ミサイル力で2PDMをリアクション戦闘フェイズに惑星爆撃し、惑星防御射撃で撃破された艦艇を直後の生産フェイズで生産する。

 地球は後攻なので、リアクション戦闘フェイズで惑星爆撃することで、第1ターンの生産で失われた艦隊を再建できる。これを繰り返すと、3ターンで6PDMを爆撃し、4PDMを減らすことができる。この戦術は、帝国軍に戦時中にPDMの再建を強いることができる。

 もし帝国軍がPDMを再建しなかった場合、地球軍は4ターンの第1フェイズに全力で惑星爆撃を実施し、7PDMとWLMの内、5PDMと1WLMを無力化できる(84ミサイル力は生産中)。第2フェイズに再度惑星爆撃すると、PDMは全て無力化できる。地上軍が帝国16 個師団、地球14 個師団のため、前哨基地を設置しても、同じターンに活動状態にできない。直訴により戦闘が4ターンで終わるのであれば、この時点で終戦となり、平和時に帝国ワールドが回復する。もし5ターン目がある場合、帝国軍は地上軍を増強できないため、第5ターン中に地球の前哨基地が機能しワールドの中立化が維持されるようになる可能性が高い。

 これを避けるには、戦争を4ターンで終わるように直訴する、7PDM以下にならないように2PDMが破壊された時点で1PDM以上生産しておく必要がある。PDMを生産すると、戦争中の目標資源備蓄量に到達するのにターン数が延びること、地球艦隊の再建が進むことへの注意が必要である。

 簡単に扱うため、4ターンで終戦になるように直訴している場合を考える。地球は150 RUの平和時の資源量では、艦隊を回復できない。艦隊再建には1回の戦争(4ターン)を艦隊回復に費やす必要がある。帝国は退役を含めて、10PDMを生産する必要がある。また、地上軍の再生産に回復に36 RUが必要である。つまり再建に136 RUが必要となる。これを2回の戦争で回復すると考えると、1回目の戦争中に地球プレーヤーが毎ターン惑星爆撃する可能性がある。これに備えるには、歩兵全てと5PDMは設置しておく必要がある(地球軍の攻勢に対して生産受け取りは後手になるため、地上軍は地球の生産分を含めても勝てる数を揃えておく必要がある)。90 RU弱の資源を必要とすると考えられる。結論的には、帝国の予算額が17 RUを超えると、デッドロックすることなる。

元属州が降伏する可能性

 先に示したように、地球軍は全力で惑星爆撃することにより9PDMまで無力化できる。つまり開戦時に帝国の第1種星系に設置されている9PDM以下になると帝国ワールドを中立化できる。終戦時の帝国の資源備蓄が70 RU未満になるように毎ターンの惑星爆撃を続け、11PDMが全て退役するまでゲームを続ければ帝国を降伏させることができる。11PDMが全て退役する確率は約1.2%、平和が5ターン以上の確率が約47%なので200回平和を過ごすつもりでゲームを進めれば、その間に帝国を降伏させることが期待できる (数百戦争ターン中に内戦が数回発生すると考えられる。その際、帝国が中央に戦力を派遣できないため、予算が恒久的に3RU減少することも、若干であるが帝国が降伏する可能性を増やす要因になる)。

 インペリウムを楽しむのであれば、帝国プレーヤーがデッドロックさせるような準備をしなければ良いだけで、インペリウムを無駄に200戦争もプレイしてPDMの退役を確認する必要も、デッドロックした際に強硬に引き分けを主張して、晩節を汚す必要もないはずである。

アンロック

降伏条件

 もっとも単純な解決方法は、ゲーム前に「自国ワールドが1つになったら降伏する」等、デッドロックする前の降伏条件を決めておくことである。地球プレーヤーもSOLに立て籠もり無駄に時間を稼ぐことはできるので、「自国ワールドが1つになったら降伏する」は時間を無駄にしない良い条件である。

 または、地球がマップ外にまとまった戦力を送り出す毎に、予算と使用可能なユニット数を減らす方法も良い案である。使用可能ユニットに関しては、連邦が外に出したユニットと同じ種類のユニットを同数だけ使えなくするのが良いと考えられる(送り出せるのは、SC, DD, CL, CS)。予算に関してはバランスを考えると、10ビーム力毎に-3 RU位で試すの良いと考えらえる。

スタック制限

 第2版において、予算の恒久化制限、PDMの惑星防御射撃の低減が適用されているが、前述のデッドロックを避けれていない。残ったデットロックを避ける方法は、PDMのスタック制限しかないと考えられる。そこでスタック制限は何ユニットが適当なのかを考えてみた。

 帝国軍は建造許可を得ないで建造可能な全艦隊(初期戦力のCRを含み、モニター艦と空母積載できない戦闘機を除く)の合計ミサイル力は165である。これは42ミサイル x 3 + 39ミサイル力である。また地球軍も160ミサイル力までは効率よく爆撃力を得れるが、それを超えるとミサイル力を得るのに必要が資源量が大幅に増大する。このことからWLM/OPM+2~3PDMが最大値の候補となる。惑星地表ボックスの攻略をしやすくする場合は2PDM、難しくするのであれば3PDMがスタック制限として適当である。

 帝国が地上軍を全て集めた場合、16 個師団あり、地球の地上軍14 個師団を超える。地球軍の実効的な最大爆撃力は336である。爆撃で帝国地上軍2 個師団を撃破しないと同数にならないことから考えると、最低でも126ミサイル力は地上軍への惑星爆撃に利用したい。残りは210ミサイル力であり、5PDMを無力化できる。この合計ミサイル力が最大値であることを考えると、ワールド/前哨基地+3PDMは良いスタック制限と言える。

国際通信社版インペリウム セカンドエディション2001[4]

 国際通信社の出版したインペリウム セカンドエディション日本版(2001年発行)では、WLMとOPMの上限数が撤廃してある。インペリウムのマップ上にあるSOLと接続できる惑星地表ボックスは45個である。その中には第1種惑星地表ボックスが12個、M型恒星系でない第2種惑星地表ボックスが5個含まれている。連邦が帝国の支配する1つの第1種惑星地表ボックスを除くすべての惑星地表ボックスにWLMとOPMを設置した場合、1ターンの収入は121 RUになる。さらにテラフォーミング(惑星改造)を実施すれば、WLMが5つ増え、1ターンの収入が156 RUになる。資源備蓄の上限は99 RUなので、地球は帝国の資源備蓄を気にすることなく、惑星改造を進め収入を最大化を進めることができる。1ターンで生産可能な爆撃力が126に達するためには174 RUが必要であることから、地球は戦争開始時に24 RU以上残っていれば、毎ターン3PDMを爆撃、無力化することが可能になる。具体的な検討は進めていないが、126ミサイル力による毎ターン惑星爆撃と全力惑星爆撃を組み合わせることで、デッドロックを回避できる可能性があると考えらえれる。

国際通信社版インペリウム セカンドエディション2019[5]

 2019年に再版された国際通信社の出版したインペリウム セカンドエディション日本版では、惑星地表ボックスに配置できるPDM数が1個に制限された。この修正はインペリウム終盤の帝国によるデッドロックを回避する良い修正である。これにより惑星地表ボックスを塹壕に見立てて、PDMと地上軍が立てこもることを回避でき、宇宙戦闘と惑星爆撃の重要性が増した。

 この修正に関して調べていたら、S. Listのレビュー[6]の地球の初期戦略における初期配置の記述が目に止まった。「Barnerd's starには、PDMを1個とモニター艦が必要である。2つ目のPDMはどこでも良い」とあった。1977年の最初から、惑星地表ボックスに配置できるPDMは1個だったのかもしれない。 私は英語Nativeでないので正確なニュアンスは分からないが、同じ内容を示すマーカー(マーク)は、複数枚重ねることは、しないものなのかもしれない。

References

[1] M. Tosaka: Privet website 銀河辺境 (2001~2016).
[2] Imperium rules booklet (GDW: 1979).
[3] Imperium rules booklet (GDW: 1990).
[4] Imperium rules booklet (Kokusai-tushin Co., Ltd.: 2001).
[5] Imperium rules booklet (Kokusai-tushin Co., Ltd.: 2019).
[6] S. List: GRYPHON #1, pp.6 (1980).


1. Imperium
第5回 目的と目標
Dash's Clinic: All right reserved by Kazuhiro Ueda, 2012, 2019.

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