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Belterの圧縮

Compress the playing time of the Belter

 Belterの目的が、Sci-Fiシミュレーションを楽しむことにあるとしても、200 ゲームターン(1週間)以上かかるのは、21世紀では長すぎる[1, 2]。また、出納・採掘量管理も煩雑である。今ではユーロ・ゲーム的なアステロイド採掘ゲームも出版されているため、Belterような古き良きシミュレーションが再び出版されることは無いと考えられる。そこで古き良きBelterを大きく変えることなく、プレイの圧縮を試みた。

ベルターのスケール

 Belterのスケールは、1ターン = 1週間、1ヘクス = 不明(ルールやマップに記載がない)となっているので、最初に物理スケールを明確にしておく。

空間スケール

 アステロイド・ベルト(メイン・ベルト)は、太陽から2.3~2.8 AUの範囲(天頂方向への広がりは無視)の領域で、発見済(末登録含む)の小惑星が34万個、直径1 km以下のものを含めると1億個ほど存在すると考えられている。平均すると4.5E8 km^2 (1辺 21,200 kmの正方形)に1個存在することになる。Belterのマップは22 x 28インチ、この中に232個のアステロイドと3個のプラネロイドがある。平均すると2.62 インチ^2(1辺1.62インチの正方形)に1個あることになる。縮尺は大雑把に13,094 km : 1 インチ(5,155 km : 1 cm)となり、2/3インチ幅の1ヘクスは8730 km、マップは、288,100 km x 366,600 kmとなり、約0.961 x 1.22光秒の範囲であると考えられる。地球-月の距離が平均で384,400 km (357,000~406,000 km)なので、地球-月の距離の80~90 %位である。

 0.5G加速のパトロール船は、3日連続加速、3日連続減速すると4.4 AU(太陽-木星が5 AU位)も移動できるため、Belterのマップスケールと合ってない。0.5ヘクス加速、0.5ヘクス減速で43分で1ヘクス移動できるし、1ヘクス加速、1ヘクス減速だと61分で2ヘクス移動できる。マップを対角線に沿って横断するのに必要な時間は、40~29時間なので、32時間(後述)あればマップ上のどこにでも行けると考えられる。

時間スケール

 1970年代、米国の平均労働時間は、1820時間位(2010年代は1780時間位)なので週休1日で38週勤務(1日8時間労働)、14週98日(有給休暇を含む)のバカンス・クリスマス休暇が必要である。Belterのゲーム上で14ターンの休暇は再現できない。

 アステロイド採掘会社は、2074年のベンチャー企業なので、労働環境も今より良いと考えらる。トラベラー(TRAVELLER)的に1年を52週+正月(0日)、閏年(00日)の特別休日として、1年52週とする。年間の労働時間は、 7.0時間労働 x 5日x 52週 - 140時間 (有給休暇) = 1680時間となるので、1週間は7.0時間労働で5日、残り2日が休日となる。採掘施設、製錬施設はWorker 3名で1日8時間勤務(7時間労働、昼休み1時間)、週休2日である。手掘りもWorker3名、またはThugs4名で1日8時間勤務 (7時間労働、昼休み1時間)、週休2日と考えられる。1人当りの月給はCr.450、60万円位である (プラザ合意前のレートだと、2倍の120万円位)。

 Belterの宇宙船は、機動移動も慣性移動も1週間で最大6ヘクス移動する(貨物船の機動移動は4ヘクス)。先の空間スケールから1ヘクス8273 kmを24時間で横断するには時速345 km、8時間で横断するには時速1030 kmが必要なので、宇宙船は海上船舶ではなく航空機として考える。米国のパイロットの"Flight Time Limitations: Flag Operations"は、「パイロット1~2名でのフライトは、1 週間に 32 時間以下、且つ 1 週間の間に連続 24 時間以上の休養が必要」としている。Belterの宇宙船はリーダー1人(探査船)か、Crew2名で運行するため、この条件に該当する。Crewは、実動6日、トータル32時間のフライトとなる(慣性飛行中でも操縦士のコックピット不在はNGだと思うので、宇宙船は時速1600 kmで5時間20分飛行したら、停止し休息する)。出港前、入港後に1.5時間の作業が必要とすると1週間で35時間労働(Workerと同じ労働時間)となる。隣接ヘクスに移動した後で、許可を得てアステロイドに固定・停止して休息することになる。隣接ヘクスにアステロイドが無い場合は、そのままアステロイドがあるヘクスまで移動をつづけ、飛行時間の2倍以上の休息時間を連続でとる(本来、これは4人パイロットでの連続飛行の規定である)ものと考えられる。プレーヤーは宇宙船を運行する際、経営者としてパイロットの労働環境を考えて、(アステロイドのあるヘクスを通過するよう)運行コースを設定しましょう。

Contra-Terrene-Matter (CT)

 BelterではCT(反物質) 1ユニットは、0.01トン(10 kg)となっている。10 kgの反物質が対消滅エネルギーはTNT換算430Gトンである(1 gの反物質の対消滅によるエネルギーは、スペースシャトルの外部燃料タンク23個分に相当するとWikipediaに書かれている位である)。2010年代の研究レベルでは、反物質は自然界には存在せず、加速器で10個位の反陽子を創り、1000秒間保持するのが限界である。CTを捕集/短期保管する磁気セルのサイズを10 kg、1 CT-unit(以後、CTUと省略)として、セル内の反物質(反水素か反ヘリウム) の量は不明とする。宇宙船のCT保管室(1ユニットサイズ)は長期保存、運搬用と考える。

Contra-Terrene-Matter
BGGのBelter's Descriptionによると、ジャック・ウィリアムソン(Jack Williamson)の小説"Seetee"から引用された反物質の名称とのこと。

RichnessとExtensiveness

 Belterでのアステロイド評価は、Richness(豊かさ)とExtensiveness(広さ)で表わされている。Extensivenessの単位は書いてないが、採掘施設1基で採掘できる広さを単位面積としていると考えられる。HJの和訳では「鉱脈数」で単位は「本」となっていた。意味は少し違うが、ここでは先達に倣い鉱脈数と本にする。Richnessの単位はunit(ユニット)である。Prospectin and Mining(採掘と調査)ルールで、1ユニットは資源1トンと定義してある。アステロイドベルトは低重力下なので、質量や重量よりは、体積の方が重要である。資源の輸送ルールから考えて、宇宙船のCargo Holdの単位も同じになる。そして、施設や武装のWeightも同じ単位である。TRAVELLERに合わせて液体水素1トン(5.0E5 mol)、約14立方メートル(一辺約2.4メートルの立方体)のコンテナに入る量が1ユニットと考えると収まりが良い。

 ガス凍結アステロイドの場合、採掘時に凍結ガスが気化するため、捕集し、液化または固化することになる。凝固点を利用した精錬ができるので、純度99.9%レベルの液化ガス/凍結ガスが得られる。つまり、採掘した氷の量は、Richnessに関係なく同じで、得られる純度99.9%レベルの液化ガス/凍結ガスの量をRichnessが示している。

 金属/岩石アステロイドの場合、採出した鉱石に含まれる金属量が全てのアステロイドで同じと考えるのは無理がある。地球上の露天掘鉄鉱石の場合、鉄の含有率は65%位であり、Fe2O3の理論値が70%である。希土類のサマリウムモナズ石のサマリウム含有率は最大でも2.8%である。遷移金属、希土類のどちらを掘るにしても、出荷前に酸化物の含有率を調整し、品質を揃える必要がある。ただし、これはBelterの精錬施設(Smelter)を使った精錬とは別である。

 Richnessは、施設1基当りの1週間の採掘量を示しているのに対して、産出物の品質にRichnessが依存していない点が重要である。HJの和訳では、Richnessは「純度」としてあるが、この訳語だと産出物の品質に対応した言葉なので誤解を与える。ここでは「産出量」にする。

 本来、精錬は単元素素材の作製である。採掘鉱石の酸化鉄含有率が48%として、精錬した場合、純度99.9%の鉄になる。この精錬施設は高炉である(笑)。希土類のモナズ石の含有率を3倍に引き上げる方がBelterの精錬に近い。しかし、これは採掘時の品質調整と同じで、精錬設備を使う意味が余りない。

 精錬施設(Smelter: 2基, 購入費: Cr10,000、 整備費: Cr10 / turn)ルールは精錬施設で実施する工程も良く分からないうえ、資源管理を煩雑にしているので削除する。その代わりに鉱石の採掘施設に精錬工程(品質調整)を組み込み、鉱石の品質を揃えている扱いに変更する。金属アステロイドに採掘施設を1ユニット設置する毎に、Cr2,000追加コストを負担する。ただし、整備コストの負担は変更なし。採掘量も変更なし。同じ考え方に従うと、岩石アステロイドに設置する場合も追加コストが必要になるが、Belterの精錬施設は、金属アステロイドに設置するので、岩石と金属のアステロイドの差別化を図る上で、岩石アステロイドに採掘施設を設置しても追加コストはなしとする。手掘ルールは、1ターンの採掘量を10 % x 4週間 = 40%から、品質調整の時間を入れて、1ターンの採掘量 を33.33 %とする。また、鉱石の品質が高くなることを反映して、鉱石の売却価格を20%upとする

ベルター 圧縮ゲーム・ルール

単位と用語

ゲームを圧縮するに当り、単位とスケールを統一しておく。

1.ゲームに含まれるもの

 PKF、基地(Base: 2基, 購入費: Cr20,000、整備費: Cr10 / turn)は、基本ゲームを想定しているため、使用しない。

2. ゲームの手順

A. 準備フェイズ

    1. 生産サブフェイズ
      資源を産出。整備費を支払う。
    2. イニシアチブ決定サブフェイズ

B. 第1プレーヤーターン

    1. 移民フェイズ
      第4プレーヤーによる相場変動分と同じ数だけ移民カウンターを追加。
    2. 移動フェイズ
      移動途中(移動を開始したヘクス、移動を終了したヘクスを含む)、貨物搬入2回、搬出2回可能。
      • 戦闘サブフェイズ
        移動中に、他の宇宙船、小惑星と同じヘクスに入ったなら戦闘可能(任意)。戦闘後、移動可能。
        同じ移動フェイズ中に、同じヘクス内で、同じ宇宙船同士、同じ宇宙船と同じ施設の戦闘は、1回に制限される。同じヘクスに別の宇宙船が攻撃をしかけるのは可能。
    3. 相場フェイズ
      第1プレーヤ一の売却資源量による相場変動。
      • 鉱石価格1d6, DM有
      • ガス価格1d6, DM有
        売却価格は変動後の値段
    4. 雇用フェイズ
      相場変動がマイナスでなければ、雇用可能。
      雇用中のユニットの給料を支払う。
    5. 設備購入フェイズ
      新規宇宙船、設備を購入。

C. 第2プレーヤーターン

    1. 移民フェイズ
      第1プレーヤーによる相場変動分だけ移民カウンターを追加。
    2. 移動フェイズ以下は第1プレーヤーと同じ。

D. 第3プレーヤーターン

    1. 移民フェイズ
      第2プレーヤーによる相場変動分だけ移民カウンターを追加。
    2. 移動フェイズ以下は第1プレーヤーと同じ。

E. 第4プレーヤーフェイズ

    1. 移民フェイズ
      第3プレーヤーによる相場変動分だけ移民カウンターを追加。
    2. 移動フェイズ以下は第1プレーヤーと同じ。

F. 今のターンを終了し、次ターンのA. に進む

3. 順番の決めかた

4. 移動

5. 戦闘

6. 整備

7. 調査と採掘

7.1 調査

単純化のため、CTチェックのサイコロの目と鉱脈数を決めるサイコロ目を1回にまとめた(下表)。CTの確率は同じだが、金属アステロイドで豊かさ1x4鉱脈、岩石アステロイドで豊かさ1x2鉱脈の確率が5/216から0に減少し、他の確率が5/216から1/36に増加している。確率を元ルールに近くする場合は、金属の1x2チット1枚と1x1チット1枚を1x4チット2枚に、岩石の1x1チット2枚を1x2チット2枚に変更する。1x2や1x4を開発することはあまりないので、ゲームへの影響は無いと考えられる。オリジナルのBelterでも、サイコロの代わりにチット引きを使っても良い。

ガス凍結 アステロイド(産出量x鉱脈数)

Die Roll1(none)
2(trace)
3(poor)
4(good)
5(rich)
6(pure)
10 x 01 x 15 x 110 x 115 x 130 x 1
20 x 01 x 15 x 110 x 115 x 130 x 1
30 x 01 x 25 x 210 x 215 x 230 x 2
40 x 01 x 25 x 210 x 215 x 230 x 2
50 x 01 x 35 x 310 x 315 x 330 x 3
60 x 01 x 45 x 410 x 415 x 430 x 4

金属 アステロイド(産出量x鉱脈数)

Die Roll1(none)
2(trace)
3(poor)
4(good)
5(rich)
6(pure)
10 x 01 x 15 x 110 x 115 x 130 x 1
20 x 01 x 15 x 110 x 115 x 130 x 1
30 x 01 x 25 x 210 x 215 x 230 x 2
40 x 01 x 25 x 210 x 215 x 230 x 2
50 x 01 x 35 x 310 x 315 x 330 x 3
60 x 0CT5 x 410 x 415 x 430 x 4

岩石アステロイド(産出量x鉱脈数)

Die Roll1(none)
2(none)
3(none)
4(none)
5(trace)
6(poor)
10 x 00 x 00 x 00 x 01 x 15 x 1
20 x 00 x 00 x 00 x 01 x 15 x 1
30 x 00 x 00 x 00 x 01 x 15 x 1
40 x 00 x 00 x 00 x 01 x 15 x 1
50 x 00 x 00 x 00 x 01 x 15 x 1
60 x 00 x 00 x 00 x 0CT5 x 2

7.2 採掘

7.3 採掘量の管理

例: 第5次辺境戦争/地球侵攻から損害を示すマーカー(10〜90)を借用する。黒い面を鉱石、白い面をガスとする。

8. 相場

9. 移民と雇用

サイコロの目船員(Crew)鉱夫(Worker) ならず者(Thugs) 兵隊(Troop)
1----
2----
3--操業停止-
4 操業停止- 操業停止-
5ストライキ 操業停止ストライキストライキ
6辞職ストライキ暴動ストライキ
Troopは傭兵/警備員と考え、Cr100x5人x4週=Cr2,000で標準とし、Crewはパイロット、Workerは採掘施設稼働に必要な特別なスキルが必要なので高給とした。Thugsは特別なスキルが無い集団として少し給与を下げた。

10. 専任担当者(Dedicated pearsonnal)

11. 乗員・貨物等の移しかえ

12. 救助と捕虜

13. 設備等の購入

これは採掘施設ユニットに金属/岩石用と凍結ガス用の違いがないための便宜的な方法である。金属アステロイドに設置する採掘施設には、精錬設備が附随していると扱い、価格がアップしている。鉱石相場も簡易精錬の効果として20%アップしている。
宇宙船武器設置点生命維持能力貨物積載量
(ユニット)
価格
(kCr)
整備費
(Cr)
燃料費
(Cr)
パトロール船
(Patrol)
32450100400/ターン
5000/年
500/ヘクス
探査船
(Seeker)
1101001040/ターン
500/年
200/ターン
貨物船
(Carrier)
154005040/ターン
500/年
200/ターン
施設武器設置点生命維持能力貨物積載量
(ユニット)
運搬時体積
(ユニット)
価格
(kCr)
整備費
(Cr)
採掘施設
(Mine)
93001040/ターン
520/年
CT採掘施設
(*Mine)
94005080/ターン
備品運搬時体積
(ユニット)
価格(kCr)
戦闘用レーザー(Military Laser)105
ミサイルラック(Missile Rack)2010
荷電粒子砲(Accelerater)5020
CT保管室15

14. 特別区域

15. 宇宙船の収容能力

16. 精錬

17. CTに関する特別ルール

18. 設備どうしの戦闘行為

19. ゲームの始めかた

20. 勝利の条件

圧縮の効果

1ターンを4週間に圧縮し、整備を年額化したこと、24時間稼働で実効的なRichnessを3倍にできるので、プレイ時間を1/10位にできていると思う。

References

[1] Kanjin koubou Privet blog: 閑人工房(2020/07/12)
[2] TORO: Privet Blog: Troopers, May 22, 2019.


1979 Belter
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