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第6章 トレーニング

パトロール部隊

 UpFrontを始めて、最初にプレイするシナリオは「シナリオA:パトロール部隊の遭遇」である。そして最も良くプレイされるシナリオも「シナリオA:パトロール部隊の遭遇」である。
 パトロールシナリオが最も良くプレイされるには、以下の理由がある。
(1) シナリオMも含めると全ての対戦国が網羅されている(シナリオAの日本軍VS米軍はアメリカ陸軍(#1-12)であり、シナリオMは海兵隊(#3-5, 7, 9, 11, 12, 42, 43)である)。
(2) 登場する兵士カードが連番で準備し易い。
(3) 最低限のルールで初心者からベテランまで対戦可能。
(4) 勝利条件にサドンデスがあり、プレイ時間が短い。
 一方で,パトロールシナリオは、いくつかの問題点もある。
(A) 使用するルール範囲により対戦国間のバランスが変化する。
(B) 距離チット「4」でのサドンデス勝利条件があるため、このシナリオ専用のテクニックがある。

 利点が4つ、問題点が2つであることから、優れたシナリオであることが分かる。問題点(A)に関しては、プログラム学習方式の問題点である。問題点(A)は使用するルール範囲、特に塹壕の有無によって、グループ編成まで変える必要があるので、ルール範囲をプレイ前に決める必要がある。以前は,塹壕ルール無でのプレイが良いと考えていた。現在は、英米の強弱の関係等から、塹壕ルールは有った方が良いと考えている。ここでは全ルール利用を薦める。
 一方、問題点(B)に関しては問題点(A)よりシナリオAの本質的な問題である。一般にパトロールシナリオでは、1) 分隊崩壊、2) 距離チット「4」での勝利を目指すため、利点(4)が得られる。しかし、(B)は距離チット「4」での勝利を目指すために起こるからである。
 歩兵戦闘は「敵を排除する」のが目的であり、歩兵戦闘を再現しているUpFrontのゲームとしての本質は「敵を排除する」のが目的のゲームとなる。つまり,勝利条件と照らし合わせると、(a)敵分隊の崩壊が目的であり、前進は「敵を排除する」目的を達成すための手段である。UpFrontでは、敵を排除できなかったときに、その勇気が評価され、(b)勝利ポイントを得て、勝敗を付ける。つまり勝利ポイントでの勝利はボクシングの判定勝、サッカーのPK戦のようなものである。一方、シナリオAの距離チット「4」への前進は,歩兵戦闘の目的では無く、シナリオ固有の目的である。敵に近づくテクニックを習得する意味では、良い目的である。しかし,本質を間違えると、シナリオに特化したテクニックとなり、UpFrontが再現しようとしている歩兵戦闘の本質からは外れてしまうことになる。つまり歩兵が前進する理由が置き去りになることである。

シナリオA:パトロール隊の遭遇

先攻:枢軸側 時間:3デッキ
使用せずに,もしくはRPC/RNCで引かれて捨て札となった、最初の5枚
の「建物」カードを除く。
特別ルール:A.1: 「トーチカ」と「地雷原」は非機能カードとして扱う
勝利条件:距離チット4で侵入されていない自分のグループ(1つ以上)
の非ピン状態の兵士が少なくとも4人、それらに対する攻撃の「射撃力」
を減らせる「地形」カード上にいる最初のプレーヤーが勝つ。

シナリオA部隊
米国1−12
英国1−10
仏国1−12
独国1−10
伊国1−18
日本1−13
ソ連1−15

近似的な対戦
日本vs独国,日本vs伊国の対戦は独国をオーストラリア、伊国を中華民国と扱い、日本軍が先配置先攻とする。
仏国vsソ連,英国vsソ連の対戦は仏国をルーマニア、英国をスロバキアと扱い、ソ連が後配置後攻とする。
米国vs英国の対戦を近似するには適当ではないが、英国をスロバキアと扱い、英国軍が先配置先攻とする。

市街戦

 多くのUpFrontプレーヤーとシナリオAで対戦すると、「陣地に籠っての射撃戦」や「狂気のような突撃」に遭う。「狂気のような突撃」するプレーヤーはUpFrontが中距離射撃戦の歩兵戦闘ゲームであることを正確に理解していないのだと考えられる。万歳突撃を繰り返した日本軍と同じように、前進し白兵戦をすることや距離チット4での勝利に注力しすぎているだけだと思う。ルールブップ巻末のデザイナーズノートを読み、遮蔽物、地形を考えて前進し、敵の火力を漸減することを学ぶとよい。
 「陣地に籠っての射撃戦」を好むプレーヤーは敵を安全に排除するという意味では良い戦術であり、最も見かける病気である。しかし、UpFrontが戦闘を再現している以上、安全に戦闘をすることはできない。兵士の安全に対する意識は国籍の特徴として現れているため、プレーヤーが大きく意識する必要は無い。また、相対距離2までの射撃戦では運まかせになる部分も大きく、幸運/悪運により一度傾いた形勢を逆転することは難しい。安全と対極にある、日本軍の突進力と白兵戦について学習することがこの病気から回復する良い薬となる。
 最も、多くのプレーヤーは日本軍を経験してかつ、「陣地に籠っての射撃戦」を選択するのだと思う。現在の日本人にとって、米軍同様、生命が重いためである。しかし、ソ連軍や日本軍の兵士は米軍兵士より軽く扱われていた。このことを理解しないと、次にステップアップできない。私の場合、次へのステップアップには、日本軍に可能な前進力が、他の国でなぜ発揮できないのか? どうすれば他の国でも発揮できるのか? 兵士の軽重と突進力について考えることが突破口となった。
 次の段階に進むには、問題(B)の落とし穴にはまり込み、前進が目的となる、小さいながら根深い問題が発生する。このとき,、シナリオB市街戦に含まれる爆薬に関する理解は良い薬となった。

 シナリオB:市街戦は、問題(B)の落とし穴からの脱出するための道筋を示してくれるシナリオだと私は考えている。シナリオBを数多くプレイすることは、UpFrontというゲームが強くなるための近道だと思う。それは,シナリオAがUpFrontに関するルールとテクニックの基本を覚えるためのシナリオなのに対して、シナリオBは,UpFrontの再現する歩兵戦闘を端的に表現しているシナリオに思えるからである。

 シナリオB:市街戦はシナリオAと異なり次の利点がある。
1) デッキから森林カードが減るため、塹壕構築において米英仏伊と独日露の有利不利の影響が小さくなること。
2) 勝利ポイントが「建物」地形からしか得られないため、手札の枚数が影響力が大きいこと。
3) 地形効果が大きい地形カードに部隊がいるため、相対距離を詰めて戦う必要があり、パトロール以上に接近するためのテクニック等が身に付く。

シナリオB:市街戦

先攻:枢軸側 時間:3デッキ
使用せずに,もしくはRPC/RNCで引かれて捨て札となった、最初の4枚の
「森林」カードを除く。
特別ルール:B.1: 「トーチカ」と「地雷原」は非機能カードとして扱う
勝利条件:時間制限がきた時点で最も多くの勝利ポイント(16.4項)を持
プレーヤーが勝つ。ただし、積極的行動による勝利ポイントは「建物」地
形にいる兵士についてのみ得る。損害(潰走により除去された兵士も含む)
による勝利ポイントは通常通り得る。

シナリオB部隊
米国1−9 11 21 22 爆薬
英国1−7 16−18 爆薬
仏国2−9 11 12 18 20 21 爆薬
独国1−4 6 9 10 17 18 22 爆薬
伊国2−21 23 24 爆薬
日本1−10 18−20 爆薬
ソ連2−9 11 12 15 22−24 26 爆薬

近似的な対戦
日本vs独国,日本vs伊国の対戦は独国をオーストラリア、伊国を中華民国と扱い、日本軍が先配置先攻とする。
仏国vsソ連,英国vsソ連の対戦は仏国をルーマニア、英国をスロバキアと扱い、ソ連が後配置後攻とする。
米国vs英国の対戦を近似するには適当ではないが、英国をスロバキアと扱い、英国軍が先配置先攻とする。


2. UP FRONT
第5章 手札/捨て札と連続性
第7章 技量差調整
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