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第7章 技量差調整

プレーヤーの技量

 UpFrontはシミュレーションゲームが最も盛んな時代の終わり頃に発表された名作ゲームである。ホビージャパンが日本版アップフロントを出版し、国内で活発にプレイされるようになったのは1986年である。そのUpFrontでも,2013年時点で発表されて30年になった。私はシミュレーションゲームをプレイした世代の後半に属しているが、UpFrontに関しては、タイムリーに触れることができ、多くの研究記事、論文を読み、仲間と数多く対戦することで、内容の検証と独自の研究を進めることができた、幸せな世代である。
 私より5歳若い友人達は,高校〜大学とゲームをするに最適な年齢とこの種のゲーム人気が下り坂となった時代が重なり、対戦相手探しにも苦労している。また、UpFrontに関するGeneral誌やタクティクス誌の記事を目にすることができた終わりの世代である。これ以降の年代に属するプレーヤーは、文献的知識、経験値を十分得ることが困難になり、若い方と老兵の間で技量差が生じているように思われる。このことは、General誌等で述べられていた内容が咀嚼反映されたプレイを、若い方と対戦したときに感じないことから強く意識するようになった。
 どれだけ面白いゲームでも技量差が大きいと、常敗側プレーヤーは技量を身につける前にプレイすることを諦めてしまう場合が多い。老兵は、その重要な仕事の1つに、新兵を自立できるまで導くことがあることを、忘れてはならない。また,プレーヤーの技量や性格により,得手不得手の国籍があると思う。UpFrontは、特定の国でだけ強くても巧いとは言えない。そのような人は数多くいる。私は、色々な国籍の特色を生かして強くあることが、UpFrontにおいて巧いと言える技量と考えている。苦手な国籍を減らすためにも、不慣れな国籍軍で戦うことは大切である。そのとき、ハンディキャップを引き受けることも,経験である。

UP FRONTにおけるハンディキャップ

 囲碁では、ゲーム開始前に星の位置に黒石を置くことで技量差を調整するハンディキャップとしている。UpFrontでも同様のハンディを検討してみた。

対戦国

 相手プレーヤーが本当の意味で初心者である場合、ドイツ、アメリカ、ソ連邦の間で対戦するのが良い。この3カ国は,組み合わせやルールの適用範囲により強弱に変化があるが、特色があり、プレイし易い国である。特別なルールがある日本やイギリス、プレーヤーに技量が必要なフランスやイタリアは避けるべきである。
 UpFrontのルールを理解し、少し経験を積んだプレーヤーであれば、日本やイギリスを含めても良い。
 対戦相手から、フランスやイタリアをプレイしたいと望まれた場合は、フランス対イタリア戦にするのが良い。この2カ国は他の国籍と比較して、問題がある国である。付録A 連合/枢軸中小国には、フランス/イタリア軍より欠点が緩和されている中小国が示されている。対戦相手が許すのであれば,これらの国を使うことも良い選択となる。

下手側のハンディキャップ

 本人が自身が下手と理解しているプレーヤー相手であれば、下手側にハンディキャップを受け取ってもらえば良い。それは,相手のSLの上にSSGTのチットを置くだけで良い(SLがSSGTの場合、手札が1枚増加する)。

上手側のハンディキャップ

 技量差に無自覚なプレーヤーや、技量差を自覚しているが、気にしないプレーヤーが相手の場合、上手側が巧くハンディを負う必要がある。ただし、このハンディキャップは、ある種の狡なので、対戦相手を傷つけないように巧く、活用してほしい。
 上手は兵士カードはシナリオOBそのままに、部隊の質を2線部隊としてプレイすれば、相手プレーヤーに分からないようにハンディキャップを負うことができる。ドイツ軍2線部隊は、捨て札を相手に見せる必要があるため、相手プレーヤーに分からないようにハンディキャップを負うことができない。そこで、ドイツ軍プレーヤーは、『非機能カードを捨て札とするときは,アクションができない』だけを採用する。これにより、手際の悪い戦列部隊(2線部隊でのプレイ)は、相手にハンディ戦かどうかの判断が難しいため、非常に良い方法である。上手は自分が不利になった場合、ハンディキャップを返上しても良い。なぜなら、この結果は相手とあなたの技量差は、ハンディキャップを必要としない程度まで、小さくなっているのです。

対戦国での調整

 前述でのハンディキャップで補正できないレベルに技量差が小さくなれば、ハンディ戦をする必要はない。もし,微調整が必要であれば、上手がイタリア軍やフランス軍付録A 連合/枢軸中小国をプレイすることで調整できるはずである。非主要国軍は、イタリア軍〜フランス軍〜主要国の間を埋めるようにデザインしたつもりである。相手と相談して選んで欲しい。

初心者の方に

 UpFrontは四半世紀に渡りプレイされてきたゲームです。過去の研究記事を読むことは、経験から得る教訓を補完できるはずである。英語でよければ、Board Game Geekに多くの記事のcopyがuploadされているので、読むことを進める[1-6]。日本語の場合、タクティクス誌20号の翻訳記事,27号から30号に連載された翻訳記事[1, 2]が参考になる。ゲームサークルの先輩や、中古ゲーム市場を当たると見つけられるかもしれない。


フランス軍

 仏国はUpFrontゲーム上で、1グループの相対距離0以外での火力を最も大きくできる軍隊である。つまり、射撃戦の火力では負けない配置が可能である。この点が仏国軍の最大の長所である。また、射撃カードはグループ火力が大きくなると、非機能でなくなることから、グループ火力を大きくしておくことも、捨て札制限の厳しい仏国としては重要である。

 仏国vs露国の場合、最大手札、最小捨て札 vs 最小手札、最大捨て札で持ち札のコントラストが最大になる。一方、大火力グループを持つ仏国軍と相対距離3での撃ち合いになると、仏国でも十分手が回転するするため、露国兵士が釘付け状態になる場合が多い。つまり、仏国は大火力グループがあれば、相対距離3での撃ち合いでは、手札の回転は問題にならなくなるようである。露国との噛み合わせは悪いかもしれないが、バランス的には面白い。
 米国vs仏国の場合、捨て札枚数と非機能枚数の違い、モラルの違い等が差になり、類似の部隊ながら、小さい差の影響が見えやすく、システムの理解が進みやすいと思う。この対戦も以外と面白い。


ヘタリア軍

 伊国の標準分隊には、モラル4+の兵士が5人(含む,ASL, LMG)、モラル3の兵士が7人(含む,SL, LMG)、モラル2の兵士が6人いる。しかし、多くのペナルティを持っているため、どの相手に対してもイニシアチブをとることは困難である。また、伊国は、質の悪いライフル兵、最低の回復/移動/隠蔽枚数、手札4枚、捨て札2枚という、厳しい手札/デッキ制限から、3デッキの間、戦線を維持することが困難である。このため、勝利のためには,相手の分隊崩壊を目指す以外に方法はないと考えら得られる。
 これまで検討を進めた結果からすると,独国との相性は最悪である。露国とは降伏ルールが無くなる等ペナルティが緩和されるため、相対距離2で撃ち負けないことに注意すれば、良い勝負になる。仏国、米国、英国との対戦は手札枚数や非機能枚数等の違い分隊運用に与える影響が良く感じられる。現在のところ、LMG有遠距離射撃専門Gr、LMG無火力Gr、LMG有火力Grの3グループ編成の勝率が良い。コラム 羊と狼



 イタリア軍やフランス軍は、独自の縛りを持っているため、普通以上に戦術やテクニックを活用する必要があり、良いトレーニングになる。UpFrontの達人には、ぜひ使ってみてほしい。

References

[1] J. Vurnett: General 21, pp. 15 (No.1) (1984): (reprint: BANZAI Rules book)
  Translation by M. Kitashino: TACTICS Mgz. Jpn. No. 20, pp. 55 (1985).
[2] D. Greenwood: General 21, pp. 5 (No. 1) (1984).
  Translation by M. Kitashino: TACTICS Mgz. Jpn. No. 27, pp. 18 (1986), No. 28, pp. 42 (1986), No. 29, pp. 14 (1986), No. 30, pp. 40 (1986).
[3] D. Greenwood, R. A. Martin and K. Whitesell: General 21, pp. 18 (No. 1) (1984).
[4] J. Vurnett and R. Whaley: General 22, pp. 5(No. 2) (1985).
[5] J. Vurnett, R. Whaley and R. A. Martin: General 22, pp. 13 (No. 2) (1985).
[6] L. Moore, S. Harvester and R. A. Martin: General 26, pp. 20 (No. 5) (1990).


2. UP FRONT
第6章 トレーニング
付録A 連合/枢軸中小国
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