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1981 Invasion: Earth

Invasion: Earth [GDW]

"Invasion: Earth" was designed by Marc W. Miller, John Astell, Frank Chadwick. The game was published by Game Designers' Workshop (GDW) in 1981. The game was simulated the invasion of earth by the Third Imperium in the universe of the Sci-Fi RPG "TRAVELLER". The earth player defended on moon, close obit and earth surface. The earth surface shows on an icosahedron.

 "Invasion: Earth"は、Sci-Fi RPGトラベラーのソロマニ戦争(The Soromani War)の最終局面である、帝国による地球侵攻作戦を扱っている。トラベラーでも象徴的な存在である地球が、第2次世界大戦のスターリングラードやエル・アラメインのようにターニング・ポイントになるのであれば、この局面のシミュレーションも面白いのだが、トラベラー未来史では、陥落間近のベルリンといった状況であり、できることは限られている。兵力差を見ればシミュレーションする迄もなく地球が占領されることが分かる。つまり帝国軍は多くの損害を出しながらも、粛々と地球の占領を進めることになる。

 1980年までに出版されたGDWのSci-Fiゲーム群はトラベラー未来史が一部しか完成してなかったため白紙領域を自由に使えた。そのためシミュレーションの目的に背景を合わせ、シミュレーション粒度(時間・規模等)を調整できるデザイン自由度が大きく、背景説明から楽しませてくれるシミュレーションとなっていた。1981年以後出版されたSci-Fiゲーム群はデザインの方向性が変化したと私は感じている。Invasion: EarthとFifth Frontier Warは、その頃の代表的なシミュレーションだが、Sci-Fiゲームというよりも、トラベラーのシミュレーション・ツールとしての利用を、強く意識してデザインされいる[1]。

 Fig. 1は私の持っている、"Invasion: Earth"である。William H. Keith Jr. のカバーアートは、2隻の宇宙戦艦とキンニール級小型巡洋艦が青い地球に向かっている、ゲームの状況を的確に示している美しいイラストである。


Fig. 1 Game components of "Invasion: Earth"
The beautiful cover art of three space battleships heading towards the blue Earth is drawn by W. H. Keith Jr. .

 このゲームは当時のホビージャパンがライセンス生産しなかったゲームの1つなので、日本国内での流通数は比較的少ないと思われる。ゲームのマップは地球全体をあらわした正20面体を展開した(トラベラーではお馴染みの)惑星マップと4つに分けられた宇宙空間ボックスからなる。帝国軍はまず宇宙空間のOut Systemより侵入し、月を前線基地として、防衛軍の少ない地表に降下し、橋頭堡を確保した後、都市へクスの占領を目指す。ソロマニ軍はそれを迎え撃つことになる。

 ゲームとしてのバランスは悪くないが、展開は一方的でプレーヤーのモラルが続けば必ず地球は陥落する。ゲームの勝敗は帝国の損害の多少で決まるため、その意味はトラベラー未来史における攻略の歴史的評価と同義である。

 このゲームの1番ポイントは、トラベラー世界での陸軍シミュレータとしての意味である。部隊の兵科や質、リーダーシップ/戦術差を考慮してデザイナーが戦闘力を数値化する普通のウォーゲームとは異なり、部隊の規模で戦闘力が決まり、兵科、部隊の質(エリート/一般)、テックレベルで、戦闘力係数とコラムシフトが自動的に決まる形に規格化し、指揮官の能力、疲労等の属人性を無くしている。また、移動力と補給線に関しても、反重力、装輪/装軌式、徒歩(+使役獣)で分類されて決っている。1ヘクス = 1140 kmなので簡素化されているが、Sci-Fi 的な陸軍戦力の規格化法として面白いチャレンジだと思う。トラベラーの戦闘システムが1.5 mスクエアで15秒(「ライトニング級巡洋艦」では0.5秒)で、"Invasion: Earth" が1140 kmで2週間なので、トラベラーのレフリー/プレーヤーをしていた私としては、トラベラーブック4 「傭兵部隊」の部隊戦闘ルールやStriker (1981)のミニチュア用の陸上戦闘ルールではなく、間を埋めるスケールの同じ規格のシミュレーションが欲しかった。

 古いSci-Fiゲームの評価が低い傾向がある"Board Game Geek "での評価6.1は普通である。B級SFゲーム分科会の評価は惑星攻略の戦略レベルのゲームというより作戦級のゲームとしての評価で「まあまあのできばえ」とのこと。

Reference

[1] T. Watson: Ares Mgz. #14, pp. 49 (1983).


1. GDW Sci-Fi Games
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