分室,提携サイト:ゲーム工房URA

1981 Fifth Frontier War

Fifth Frontier War [GDW]

"Fifth Frontier War" was designed by Marc W. Miller, John Astell and Frank Chadwick. The game was published by Game Designers' Workshop (GDW) in 1981. The Japan edition isuued in 1986 by HobbyJAPAN CO., Ltd. The game is simulated war in the Spinward Marches Sector of the "TRAVELLER" RPG univers.

 "Fifth Frontier War" はSci-Fi RPGトラベラーの舞台として有名なスピンワード・マーチ宙域(Spinward Marchs Sector)での軍事衝突のシミュレーションである。1ヘスク=1パーセク、1ターン=1週間とトラベラーの情報伝達スケールに合わせてあり、艦隊をプロットで移動させるシステムは妥当なルールに感じる。また艦隊プロットが移動記録となって、Sci-Fi RPGトラベラーの背景に利用できる点も、トラベラー宇宙の戦争シミュレーションとして上手くできている。しかし無限の移動力で宇宙戦闘が頻発するImperiumとは異なり、惑星攻略を長々と続け、遭遇戦的な宇宙戦闘をたまに解決する、以外と地味な軍事シミュレーションである。

 Fig. 1は私が所有しているGDWが1981年に平箱(11 x 14 x 1 inch)で出版した"Fifth Frontier War"である。カバーアートはRich Banner が描いている。GDWのSci-Fi平箱ゲームで下箱裏面にゲームの説明が印刷されているのは、Fifth Frontier WarとAzhanti High Lightningだけである。


Fig. 1 Game components of "Fifth Frontier War"
Subsectors centered around the Regina system are located in the center of the map, and planetary surface boxes of each systems are located around it.

 Fig. 2は、1986年にホビージャパンがライセンス生産した「第5次辺境戦争」日本語版である。特徴は、ハードマップであること、艦隊移動用のプロット用紙が添付されたことである。右下の世界ボックスが全て灰色(大気タイプ: 汚染/呼吸困難)となっているため、プレイするときはエラッタに従い一部世界ボックスをし、真空世界と標準世界(呼吸可能)に修正する必要がある[1]。また細かい点ではAssault Carrierを強襲揚陸艦ではなく攻撃空母と訳しているので誤解を与える。タクティクス誌には、発売当時の販売促進用のリプレイが掲載されている[2]。加藤直之が描いた宇宙戦闘艦の精緻なイラストが箱絵に用いられている。


Fig. 2 Game components of "Fifth Frontier War" of japanese edition
The map is printed on card board.

 いつも参考にしているB級SFゲーム分科会には第5次辺境戦争に関する記事が無いので、私なりに簡単に紹介する。第5次辺境戦争は、移動プロット式のため、初期配置と初期移動に熟慮(または事前準備)が必要で、簡単にゲームを始めれない。そして盤面と前ターン迄に記した移動プロット(提督により長さが異なる)を見て味方艦隊の時間的・空間的位置関係を確認し、同じく敵艦隊の移動を予測して、自軍の艦隊移動をプロットするため、1ターンに要する時間が長くなる。私は1ターン1枚の白地図を用意し、その上に各ターンでの艦隊位置をプロットしていた。それでも25ターンまでプレイできたことがない。地上戦は、Invasion: Earthのシステムを簡素化して組み込んであり、兵科、練度、テック・レベルと規模だけで戦力が決まる。

 艦隊の移動と燃料補給を計画し、遭遇戦等に対応しながら、決戦ポイントに艦隊と地上軍を集結させる実戦の大変さを感じられる点は、軍事マネージメントのシミュレーションとして成功していると思う。ただし、兵站シミュレーションが省略されているのは残念と考えていた。しかし、F. ChadwickがButtle for MoscowのDesigner’s Notesの中で「軍隊は通常、 6週間から8週間の激走の後、再編成や補給部隊を前進させるために一時停止する必要がある。それを強制するルールは必要なく、そこでゲームを終了すれば良い。そうすれば、その期間内に達成可能な目標を設定することができ、一つの作戦範囲をカバーするゲームが非常にやりやすくなる」と述べている[3]。第5次辺境戦争の中心的デザイナーの1人であるChadwickが、当時から兵站シミュレーションの省略方法を考えていたのであれば、最初の奇襲と攻勢限界からくる期間内に達成可能な目標を設定してある第5次辺境戦争も、同じ方法で兵站を省略していると考えられて納得できた。

「第5次辺境戦争」はトラベラー未来史の再現(シミュレーション)性を意識してデザインされたゲームであると同時に、トラベラー宇宙での恒星間戦争の海軍シミュレータ(陸軍シミュレータはInvasion: Earthである) としてのツール的な意味が強い。一方で「トラベラー」世界での宇宙戦争を、本格的な作戦級シミュレーションとしてデザインした「第5次辺境戦争」は宇宙戦争の作戦級シミュレーションとしての完成度も高い。"Board Game Geek"での評価6.7は古いSci-Fiゲームとしてはかなり高い。GDW Sci-Fi 高評価ゲームの第4位だけに評価数も多い。

 学生の頃は、計画移動値が小さい優秀な将星を使うため、計画移動値が大きな将星を偵察艦で1ヶ所に集めたりしていた。しかし会社人を長くやると、集めた場所がリストラ部屋に見えてくるし、数値にならない能力もあるよな〜と考えてしまう。今なら計画移動値が大きな将星を排除せず、上手く活用するのもマネジメント力と考えてしまう。その意味でもゲームというよりは、シミュレーションなのだと思う。今の見識でまたプレイしてみたい。

References

[1] Editor's errata: TACTICS Mgz. Jpn. No. 40, pp. 117 (1987).
[2] RITZ: TACTICS Mgz. Jpn. No. 38, pp. 90 (1987).
[3] F. Chadwick: C3i Magazine No. 25, pp. 25 (2009).


1. GDW Sci-Fi Games
Dash's Collections: All right reserved by Kazuhiro Ueda, 2006, 2021.

Club TUBG was established in 1984 as a volunteer club.
We keep enjoying Simulation/Board/CardGames, ComputerGames and so on.