分室,提携サイト:ゲーム工房URA

Belterの時短

Reduce the playing time of the Belter

 TOROのPrivet Blog"Troopers"にあるBelterの3人プレイは「予定終了時間になったため74ターンで協議終了しました」とある[1]。私の昔の記憶でも100ターン位プレイしても終らなかったと思う。Troopersには正確なプレイ時間は書いてないが、1.5分/(人・ターン)とすると5.6時間、2分/(人・ターン)とすると7.4時間となる。1980年代には普通であっても、21世紀の今にこのプレイ時間は非常に重い。今ではユーロ・ゲーム的なアステロイド採掘ゲームも出版されているため、Belterようなアステロイド・ベルトで活動する企業がする経済活動の大半をシミュレーションするゲームが再び出版されることは無いと考えられる。

ベルターのモデル・プレイ

 最初に、確率を無視した幸運に恵まれたソロ・プレイBelterを簡易モデルとして考える。凍結ガス/金属アステロイドの探査は自動的に産出量30ユニット(pure)、鉱脈数4本)とする。ただし単純化のため、精錬施設(Smelter)の利用は考えない、また市場価格はCr100に固定とする。Marketplaceから4移動力以内の凍結ガス/金属アステロイドは0個、 6移動力以内に6個、8移動力以内に14個、12 移動力以内に36個、14 移動力以内に56個ある。計算を簡単にするため、全てのアステロイドは同じ移動力レンジにあるとしてモデル化した。例えば、14 移動力以内を計算する場合、往復に6ターン必要なアステロイドは20個で、14個は4ターンで往復できる。残りは探査船と貨物船で往復のターン数が異なる。そして実際のBelterプレイでは、往復時間の短いアステロイドから開発が進むが、簡易モデルでは開発する全てのアステロイドが往復6ターン必要として計算している。

 Marketplaceから6移動力以内にあるアステロイドは、Marketplaceとの往復に探査船で2ターン必要である。しかし片道2ターンかかる貨物船で採掘施設を運搬する必要があり、理想的に進めても100万クレジットを越えるのはと44ターンになる。Marketplaceから8移動力以内にあるアステロイドは、Marketplaceとの往復に4ターンを必要とする(探査船と貨物船の両方とも)。貨物船の往路で採掘施設を運搬し、復路で資源を運搬する等、理想的に進めると100万クレジットを越えるのは72ターンである。Marketplaceから14 移動力以内にあるアステロイドは、Marketplaceとの往復に6ターンを必要とする(探査船と貨物船の両方とも)。この場合、100万クレジットを越えるのは 81ターンである。

 次に、平均的なケースとして、産出量15ユニット(good)のアステロイドを開発する場合に修正する。この場合、100万クレジットを越えるのは Marketplaceから6移動力以内の場合は56ターン、8移動力以内の場合は108ターン、14 移動力以内の場合は153ターンになる。1ターンの所要時間を1人平均1.5分として4人プレイで考えると、5時間プレイしても50ターンである。

 以前、1ターン≒1ヶ月として50ターンでオリジナルBelterの200ターン分のプレイを圧縮する方法を試みたが、変化が大きくて不評だった[2]。しかし、探査のチット・プル化は評価が高かった。またWorker駒を3枚使って3交代24時間体制で採掘する方法はRichnessの影響を小さくする効果があった。先の平均的なモデル(幸運なモデル)に適用すると、56ターン→ 32ターン(44ターン→30ターン)、108ターン→ 66ターン(72ターン→ 48ターン)、153ターン→ 82ターン(81ターン→ 65ターン)に短縮できる。

特別区域を除くとマップ上にある凍結ガス/金属アステロイドは158個あるので、約1/3 の凍結ガス/金属アステロイド が14移動力以内にある。Marketplaceから13移動力以上離れた金属アステロイドで産出量30ユニット(pure)の鉱脈を3本以上発見した場合は、精錬施設を設置し、パトロール船での運搬を検討すると良い。精錬施設を用いることでパトロール船 1隻で150ユニット相当の鉱石を運搬することができる。

時間スケール

 トラベラー(TRAVELLER)に合わせて、1年を52週(364日)+正月(0日)、閏年(00日)の特別休日とする。ゲーム中では第26週にバカンス休暇、第52週にクリスマス休暇があるとして、1ターン = 1週間、1年間を実動50週 = 50ターンとする。

 ゲームは2047年第1ターンから始め2047年第50ターンまで進める。次のターンは2048年第1ターンとなる。これを繰り返し1年単位で進める。

貨幣価値

 2022年の米国ので週給中央値が$1,076、ゲーム上で定められた移民1人当りの週給はCr100なので、Cr1.00≒$10.00となる(物価上昇を考えると2074年時点ではCr1.00≒$20.00と考えられる)。2020年頃の兵士の週給は新兵で$460位、警官で$730位、ベテランで$1,900位とあったので、Troopの週給は1人は当りCr100で計算しても良さそうである。航空機パイロットの週給は$3,800位、トラック・ドライバーは$1,350位なのでCrewの雇用費用はCr760~270になる。

 人員(Crew, Worker, Troop)のカウンター1個 = 1チームとして、1チームの雇用費用をCr500/週とすると、Workerの3交代のルールと組み合わせで、鉱脈1本当りの雇用費用のCr900がCr1500に大幅増額となった。規定ターン数での残高で勝者を決める場合は影響しないが、目標額を勝利条件に設定するとゲーム時間を延ばすことになる。先の簡易モデルで検証すると100万クレジットを越えるターン数が1.5倍になった。

 ここでは、Immigrations(移民)の雇用費用はオリジナル・ルールと同じとし、カウンターに印刷されている人のシルエット1人につきCr100とする。

RichnessとExtensiveness

 Belterでのアステロイド評価は、Richness(豊富さ)とExtensiveness(広さ)で表わされている。Richnessの単位はunit(ユニット)である。Belterの精錬施設(Smelter)は純度を99.9%レベルに精錬・濃縮すると考えると、元の鉱石は含有率33.3%となる。つまり、含有率33.3%以上の鉱石のみを採掘していると考えると、施設1基当りの1週間の採掘量がRichnessとなる。HJの和訳はRichnessを「純度」としているが、ここではRichnessの訳語を「産出量」、単位を「ユニット」とする

 Prospectin and Mining(採掘と調査)ルールで、1ユニットは資源1トンと定義してある。アステロイド・ベルトは低重力下なので、質量や重量よりは、体積の方が重要である。資源の輸送ルールから考えて、宇宙船のCargo Hold (Weight)の単位も同じになる。そして、施設や武装のWeightも同じ単位である。そこでSci-Fi RPG トラベラー(TRAVELLER)に合わせて1ユニットは、液体水素1トン(5.0E5 mol)、約14立方メートル(一辺約2.4メートルの立方体)のコンテナに納まる量と考える。

 Extensivenessの単位は書いてないが、施設1基で採掘できる広さを単位面積としていると考えられる。HJの和訳では「鉱脈数」で単位は「本」となっている。意味は少し違うが、ここでは先達に倣い鉱脈数と本にする。

Contra-Terrene-Matter (CT)

 BelterではCT(反物質) 1ユニットは、0.01トン(10 kg)となっている。10 kgの反物質が対消滅エネルギーはTNT換算430Gトンである(1 gの反物質の対消滅によるエネルギーは、スペースシャトルの外部燃料タンク23個分に相当するとWikipediaに書かれている)。2010年代の研究レベルでは、反物質は自然界には存在せず、加速器で10個位の反陽子を創り、1000秒間保持するのが限界である。CTを捕集/短期保管する磁気セルのサイズを10 kg、1 CT-unit(以後、CTUと省略)として、セル内の反物質(反水素か反ヘリウム) の量は不明とする。宇宙船のCT保管室は1ユニット(1水素トン)サイズで長期保存、運搬用と考える。
 またCTは資源に含まれない(資源は鉱石とガスの両方を指す)。安全性を考えてCTは3交代で採掘できない

Contra-Terrene-Matter
BGGのBelter's Descriptionによると、ジャック・ウィリアムソン(Jack Williamson)の小説"Seetee"から引用された反物質の名称とのこと。

調査

 アステロイドの調査は、調査チットを引き、調査したアステロイドのヘクスに置く形に変更する。調査結果を非公開とする場合は、調査チットを裏にして置き、ベルト管理局(OBM)に登録して公開とする場合は、調査チットは表にして置く。

 アステロイド調査をチット引きにするため、CTチェックのサイコロの目と鉱脈数を決めるサイコロ目を1回にまとめて単純化した(下表)。この表を元に、凍結ガス アステロイド(101個)用は36枚3セット(108枚)、金属アステロイド(70個)用は36枚2セット(72枚)、岩石アステロイド(59個)用は36枚2セット(72枚)のアステロイド調査チットを用意する(下図)。

CTの確率は同じだが、金属アステロイドで産出量1x4鉱脈、岩石アステロイドで産出量1x2鉱脈の確率が5/216から0に減少し、他の確率が5/216から1/36に増加している。確率を元ルールに近くする場合は、金属アステロイドの1x2チット1枚と1x1チット1枚を1x4チット2枚に、岩石アステロイドの1x1チット2枚を1x2チット2枚に変更する。変更済チットのpdfは前ページ1979 Belter内にある。1x2や1x4を開発することはあまりないので、ゲームへの影響は無いと考えられる。

ガス凍結 アステロイド(産出量x鉱脈数)

Die Roll1(none)
2(trace)
3(poor)
4(good)
5(rich)
6(pure)
10 x 01 x 15 x 110 x 115 x 130 x 1
20 x 01 x 15 x 110 x 115 x 130 x 1
30 x 01 x 25 x 210 x 215 x 230 x 2
40 x 01 x 25 x 210 x 215 x 230 x 2
50 x 01 x 35 x 310 x 315 x 330 x 3
60 x 01 x 45 x 410 x 415 x 430 x 4

金属 アステロイド(産出量x鉱脈数)

Die Roll1(none)
2(trace)
3(poor)
4(good)
5(rich)
6(pure)
10 x 01 x 15 x 110 x 115 x 130 x 1
20 x 01 x 15 x 110 x 115 x 130 x 1
30 x 01 x 25 x 210 x 215 x 230 x 2
40 x 01 x 25 x 210 x 215 x 230 x 2
50 x 01 x 35 x 310 x 315 x 330 x 3
60 x 0CT5 x 410 x 415 x 430 x 4

岩石アステロイド(産出量x鉱脈数)

Die Roll1(none)
2(none)
3(none)
4(none)
5(trace)
6(poor)
10 x 00 x 00 x 00 x 01 x 15 x 1
20 x 00 x 00 x 00 x 01 x 15 x 1
30 x 00 x 00 x 00 x 01 x 15 x 1
40 x 00 x 00 x 00 x 01 x 15 x 1
50 x 00 x 00 x 00 x 01 x 15 x 1
60 x 00 x 00 x 00 x 0CT5 x 2

アステロイド調査チット例


白色: ガス凍結アステロイド、薄緑: 金属アステロイド、薄橙: 岩石アステロイド

手掘り

 リーダー(Leader)、鉱夫(Worker)、ならず者(Thugs)は1本の鉱脈を手掘りすることができる。1チームの採掘量はRichness(産出量)の10%である。1本の鉱脈を手掘り採掘するチーム数に制限はない。2チームなら20%である。ただし、1ターン当りの採掘量は整数とし、小数点以下の端数は切捨てる。最大でも産出量(Richness)と同量である。
 例: 産出量10ユニット(good)の2本の鉱脈を20チームで手掘り採掘した場合の1ターンの採掘量は20ユニットである。産出量15ユニット(rich)の1本の鉱脈を3チームで手掘り採掘した場合の1ターンの採掘量は4.5ユニットなので、小数点以下の端数が切捨てられて4ユニットになる。

機械掘り

 1 基の採掘施設は1本の鉱脈に設置し、鉱脈を機械掘りすることができる。採掘施設は完全自動運転だが点検・監督と整備に少なくとも1チームの鉱夫(Worker)が必要である。1チームの鉱夫(Worker)は採掘施設を8時間の間、点検・監督と整備できる。採掘施設は8時間で産出量と同量の資源を採掘する。2チームの鉱夫(Worker)は、2人の鉱夫が24時間3交代制で採掘施設を点検・監督するため、採掘量は産出量(Richness)の3倍になる。

採掘量の管理

 鉱石、ガスを示すカウンターを2種類用意する。カウンターには1〜10, 10〜90の数値を書く。数値の単位はトンである。
 精錬した鉱石とCTはポスト・イット等を貼ってメモ書きすること。宇宙船に積載する場合、そのポスト・イットを宇宙船カウンターに貼って示す。

例: 第5次辺境戦争/地球侵攻から損害を示すマーカー(10〜90)を借用する。黒い面を鉱石、白い面をガスとする。1〜9トンはメイデイ等にある別のカウンターで示す。現金は他のゲームのお札(例えば、Acquire [AH]のAH札)やコインを使う。

整備

 整備費用として設備の数を毎ターン数えて1駒毎にCr10支払う作業は非常に手間が掛かり時間を失う。そこで、整備費用の計算を50ターン(1年)に1回にするため、メーカーとの年間保守契約とし、第50ターンに次年度分を一括で支払う(一括現金払いなので20% off)。設備を購入した年度中の保守費用は、設備の購入価格に含まれている。これにより年度中の設備導入での整備の問題を減らし、また設備導入時の整備コストの低減になる。メーカーは消耗品を保守契約をしている設備にのみ供給するので、毎ターン支払の整備はできないとする。

故障と修理

 整備費用を支払わないと整備不良となり、故障のチェックをすることになる。整備費用は年間保守契約なので、基本的に第1ターンから整備不良となり、故障のチェックをすることになる。毎ターン支払の整備はないので、保守契約を結べる資金が貯まるまで整備不良となる。結果、保守契約を結べる資金が貯まるまで修理をしないことになり、余分な作業を省略できる。

 保守契約が切れたターンから整備不良となり、故障のチェックをする。故障が発生した場合、ルールに従って修理し、修理費用の支払後に保守契約を結ぶ。保守契約はいつの時点で結んでも年度末迄の契約となる。50ターンから現在のターン数を引いた期間の保守契約を結ぶ。支払は一括のみとする。割引はない。

ゲームの始めかた

 時短を図るため、ゲームは企業(corporation)で始める。
専任担当者: リーダー(Leader)x1、船員(Crew)x1、鉱夫(Worker)x1、
探査船(Seeker)x1、貨物船(Carrier)x1、 採掘施設(Mine)x1、
Cr2,000、探査済みアステロイドx6
 探査済みとするアステロイドはゲーム開始時にヘクス番号を6個記したメモを作成し、一斉にメモを公開する。

 他プレーヤーと探査が重なってないヘクスのアステロイドは、指定したレーヤーが1ヘクスづつ指定し、探査チットを引き、内容を確認した後、そのヘクスに置く(表/裏は自由)。このとき、自分の指定したヘクスに採掘施設を設置することができる。

 他プレーヤーと探査が重なっているヘクスは、メモの中で先にそのヘクス番号を記していたプレーヤーが探査チットを引き、そのヘクスを探査したプレーヤー全員で内容を確認する。探査したプレーヤーの中で1人以上のプレーヤーが公開を主張した場合、探査チットをそのヘクスに表にして置く。それ以外の場合は裏にして置く。探査が重なっているヘクスのアステロイドには採掘施設を設置することはできない。

 設置しなかった採掘施設はMarketplaceの自分の貨物船に積んだ状態でゲームをはじめる。

勝利の条件

最初に勝利条件を満したプレーヤーが勝者となる。

勝利条件2を満した後で100万クレジットを貯える迄の期間が、海賊が発生し易い期間となる可能性が高いが、今回は時短を優先した。

時短の効果

 整備を年額化して、24時間稼働で実効的な採掘量を3倍にし、人件費を2倍に留めることで、Marketplaceから14移動力以内の産出量15ユニット(good)のアステロイドを開発のモデルにおいて、100万クレジットを越えるのは74ターンとなった(オリジナルは153ターンなので48%に短縮)。このモデルでは、62ターンに全ての採掘施設をアステロイドに設置し16隻の貨物船の運航を開始して、クレジットを蓄えた。同様に、Marketplaceから8移動力以内の産出量15ユニット(good)のアステロイドを開発のモデルにおいて、100万クレジットを越えるのは62ターン(オリジナルは108ターン)となり、全ての採掘施設をアステロイドに設置し16隻の貨物船の運航を開始したのは54ターンとなり、貯蓄は貨物船を運航律速となった。そこで全ての採掘施設をアステロイドに設置し16隻の貨物船を運航開始を、勝利条件2とすることで時短を図った。4人プレイの時間は5~6時間位になると考えられる。

Marketplaceから14移動力以内の産出量30ユニット(pure)のアステロイドを開発のモデルでは、勝利条件1は65ターン(オリジナルは81ターン)、勝利条件2は57ターンで達成できた。Marketplaceから8移動力以内の産出量30ユニット(pure)のアステロイドを開発のモデルでは、勝利条件1は43ターン(オリジナルは72ターン)、勝利条件2は44ターンで達成できた。Marketplaceから6移動力以内のモデルでは、勝利条件2よりも先に勝利条件1が達成された。

References

[1] TORO: Privet Blog: Troopers, May 22, 2019, August 27, 2013.
[2] K. Ueda: "Compress the playing time of the Belter" (2021).


宇宙船管理用シート例





1979 Belter
Dash's Collections: All right reserved by Kazuhiro Ueda, 2023.

Club TUBG was established in 1984 as a volunteer club.
We keep enjoying Simulation/Board/CardGames, ComputerGames and so on.