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帝国の地勢学

Imperium Geopolitics

 1990年代後半にImperiumの話をしていたとき、同人誌ゲームジャーナルの「インペリウム100年戦争史」[1]がインペリストのバイブルとの話をきいた。アメリカ人にとって同じような記事は、GRYPHON誌に掲載されたS. Listのレビュー記事[2]だと思う。ホビージャパン版の日本語訳1982の訳者後書きにグリフォン誌の話が書かれていた[3]。今の私が参考にしているのも、S. ListのレビューとP. Kosnett のレビューである[4]。

 S. Listは、そのレビューの中でImperiumのマップを3つの領域に分割している。1つはAgiddaを一方の端とし、SOL、ALPHA CENTAURI A/B を含み、もう一方の端をProcyonとするテラン・ネットワーク(地球圏)である。ProcyonからMILRABILISに繋がっている支流は地球圏の一部である。2つ目は、帝国側マップ端からNUSKUを介して地球圏と繋がっている星系列である、インペリアル・ネットワーク(帝国圏)。NUSKUからAMARKU, LAGASHにつながる支流は帝国圏の一部である。最後の一つはSIRIUSを一方の端、他端をShuruppakとするマイナー・ネットワーク(シリウス圏)である。

 以下の内容は、Dash’s clinic: Imperiumの第1回から第5回までに示した内容を基にしている[5-9]。

帝国の初期配置

地球の初期配置

 帝国プレーヤーが帝国の初期配置を考えるうえで、地球プレーヤーの初期配置はほとんど影響しない。これは第1次恒星間戦争(ゲーム)において、地球プレーヤーのセットアップ自由度は非常に小さいからである。第1ターンは地球が先に移動するので、Barnard's star星系に前哨基地(OPM)と惑星防衛システム(PDM)、モニター艦(M)を含む全ての戦闘艦、輸送艦、地上軍を配置し、残りの1PDMをJunction、Proxima centauri、SOL、ALPHA CENTAURI A / Bのどれかの惑星地表ボックスに配置するか決めるだけである。また「ホーム・ワールド」のオプション・ルールを採用すると、第1ターン中に帝国プレーヤーがSOLを征服することがほぼできなくなるため、SOL星系にPDMを配置する必要も無い。

「惑星地表ボックスにいる宇宙艦は、(敵前哨基地があったとしても、攻撃を受けることなく)移動フェイズに恒星ヘクスに移動できる[10]」の元では、リアクション移動/戦闘フェイズに帝国艦隊がBarnard's star星系の恒星へクスを占領しても、惑星地表ボックスの地球の輸送艦は地上軍、未設置の前哨基地を積載して、第2移動フェイズに恒星へクスに移り、ジャンプ移動でBarnard's star星系を離れることができる(GDW版Imperiumではジャンプ移動してきた宇宙艦は強制的に停止することになっているが、国際通信社版インペリウムセカンドエディション2019版[11]では惑星地表ボックスから恒星へクスに移った宇宙艦も強制的に停止することに修正されている)。

帝国前哨基地の配置制限

 インペリウムセカンドエディション2019版では、帝国の初期配置に関して、「ワールドと前哨基地は接続可能な星系に配置する」となっている[11]。ホビージャパン版の日本語訳1982ルールは「ワールドと前哨基地は1つのジャンプ路を介してお互いに結ばれるように配置する」となっていた[3]。

 英語版[12-15]の文章は、"Care must be taken that all Imperial outposts and worlds are connected."で変わっていない。英語文献で、初期配置に関する記述があるのは、S. ListのGRYPHON誌のレビュー記事[2]だけである。S. Listは、レビューの中で"The Imperial player has discretionary placement of ten Outposts and Worlds, which must be placed in adjacent systems (this is not readily apparent in the rules, but was affirmed by Marc Miller in an interview)."(11ページ 左コラム 第2パラグラフ 4行目)、「初期配置に関して、ルールからは分かりにくいので、Marc Millerへのインタビューの中で確認した」と書いている。日本語訳1982の訳者後書にグリフォン誌の記事の話が書いてあることから、日本語訳1982ルールはGRYPHON誌のS. Listの記事のセットアップルールを反影したと推測される[3]。

 また、Youtubeには、米国人がImperiumの紹介、リプレイ動画をアップロードしている[16, 17] 。OutpostsをShulgu, Allamu, Shulgili, Enki kakamma, Shuruppak, Zaggisi, Apishalに配置したintro動画 とShulgu, Karkhar, Episilon Indi, Enki kakamma, Shuruppak, Zaggisi, Apishal に配置したReview動画 があることから、英語ネイティブの解釈は、「ワールドと前哨基地は1つのジャンプ路を介してお互いに結ばれるように配置する」だと推測される

 さらに、2000年にAvalanche Press Ltd.から出版された Imperium 3rd Milleniumのシナリオは、前哨基地とワールドの配置星系が指定されていた[18]。銀河戦争シナリオ6: 第1次恒星間戦争も開戦時の前哨基地とワールドを置く星系が指定されていた。SOL2 Marsの地上ボックスが追加されている、未設置の前哨基地が無い、初期配置される前哨基地の数がGDW版と異なる等、GDW版Imperiumにそのまま移植することはできないが、帝国のワールドと前哨基地が1つのジャンプ路を介してお互いに結ばれるように配置されていた。

 帝国にとって、インペリウム2019版の配置制限よりもS. Listの配置制限の方が厳しい。帝国が有利と思うプレーヤーは帝国に制限をかける意味で、配置A「ワールドの前哨基地は1つのジャンプ路を介してお互いに結ばれるように配置する」としてはどうだろうか。もし地球が有利と思うプレーヤーは、帝国に初期配置での戦略的自由度を与えるという意味で、配置B「ワールドと前哨基地は接続(連絡)可能な星系に配置する」とすれば良い。
 ここでは、S. List の配置制限 (配置A)に従って話を進める。

帝国の植民政策

 帝国のワールドと前哨基地の配置は、DINGIR、GASHIDDA、ISHKURの各星系にワールドを、各ワールドを1つのジャンプ・ルートを介して結ぶため、Shulgu、Allamu / Shulgili、Enki kakammaの各星系に3個の前哨基地を配置することは確定している。またワールドと前哨基地の数からZaggisi、Apishalの各星系に前哨基地を、NUSKU / Dushaam星系のNUSKUにワールド配置することも自動的に決まる。SIRIUS圏への蓋としてShuruppak星系にも前哨基地を配置したい。残るワールド2つの配置箇所は、TAU CETIとEPSILON ERIDANIの2星系、またはAMARKUとLAGASHの2星系しかない。つまり、つまり、残りのワールドと前哨基地の配置は、実質的に以下の3種類の配置で代表できる。

  1. TAU CETI, EPSILON ERIDANI の各星系にワールドを、Agidda星系に前哨基地を配置
  2. TAU CETI, EPSILON ERIDANI の各星系にワールドを、Markhashi星系に前哨基地を配置
  3. AMARKU / LAGASH の各星系にワールドを、Ishimshulgi星系に前哨基地を配置

 最後の前哨基地をDushaamに配置する案もある。しかし Dushaamに前哨基地を配置するのであれば、Agidda星系に前哨基地を配置し、第1ターンの生産で作った前哨基地を第2ターンにDushaamに設置する方が良い。その程度の時間はAgidda星系での争いで十分稼ぐことができる。

帝国の構想

 帝国プレーヤーから見て、第1ゲーム(第1次恒星間戦争)の勝利とキャンペーン(戦役)の勝利では、プレイの方針が異なる[9]。帝国プレーヤーがマップ全体を占有してのキャンペーン(戦役)の終了だけを望むなら、次の方針で負けゲーム(戦争)を進めることになる。

  1. 毎ターンの直訴で功績を減らす。
  2. 収入差の影響を小さくするため、4ターンのゲーム(戦争)を繰り返し戦う。
  3. ゲーム(戦争)の第1〜2ターンの戦力的優勢を使い、大規模な攻撃をする。
  4. 地球が大規模宇宙戦闘で負けて宇宙艦の大半を失った場合、後の第3〜4ターンは攻勢を継続する。それ以外では、地球にRUを備蓄する時間を与えないように消耗戦をする。

 一方、帝国プレーヤーが第1ゲーム(第1次恒星間戦争)に勝利するには、次の2つが目標となる。

  1. 地球ワールドを征服(中立化)し、地球前哨基地を1個征服(破壊)して、1ゲームターンで終戦とする。
  2. 地球ワールドを1個征服(中立化)して4ゲームターン戦う。
  3. 地球前哨基地を1個を征服(破壊)して、7ゲームターンを戦う。

 国内インペリウムの戦略検討は国内でのセットアップルールの混乱の影響もあるが、Agidda星系に帝国前哨基地がある配置を用いた「地球圏の防衛」に関するものが中心である。中村は帝国プレーヤーによるSOLとALPHA CENTAURI A / B の各星系の恒星へクス占領を目標とする Barnard's star星系への攻勢と地球プレーヤーによる防御戦略について述べている[1]。西山はリアクション移動でのSIRIUS 星系、Procyon星系への攻撃を提案している[19]。

 第1ターンの帝国プレーヤーによるBarnard's star星系への攻勢、またはSIRIUS星系、Procyon星系への攻勢は良く見られる光景である[10]。そして地球の艦隊が揃っていない第1ターンは、帝国プレーヤーにとって最も功績ポイントを獲得し易いタイミングである。

 Imperiumにおいてセットアップ時の戦力が変化するのは地上軍だけである。帝国地上軍は降下兵(JT)が4通り、一般兵(RT)が9通りの合計36通りに変化し、地球地上軍は15通り(降下兵が3通り、一般兵が5通り)に変化する。初期地上軍戦力の優劣から地球ワールドと地球前哨基地の征服の可能性を検討する。以下、2JT4は4戦力降下兵2個師団を、3RT2は2戦力一般兵3個師団を表す略号である。

地上戦闘

 帝国プレーヤーが第1ゲーム(第1次恒星間戦争)の勝利を目指す場合、帝国の第1目標は、ワールド(WLM)のあるALPHA CENTAURI A / B惑星地表ボックスである(ホーム・ワールドのオプション・ルールを適用したSOLに10戦力の地上軍を駐留させるのは困難なので、ここでの検討では除く)。帝国プレーヤーが惑星爆撃無しで1JT, 3TR(3RT)を降下させた場合、帝国地上軍の上陸期待値は、0.67JT, 1.5RT である。従って、[WLM, 3TR]、[WLM, 1JT, 2TR]、[WLM, 2RT, 1TR]で防衛している惑星地表ボックスを帝国が1戦闘フェイズで中立化できる確率8.3 %である。尚、[WLM, 2TR]で防衛している場合に帝国が中立化を成功させる確率は37.5 %である。

 第2目標は地球の前哨基地マーカー(OPM)のある惑星地表ボックスである。構成は次の5種類、(a) [OPM, 1JT, 3TR]、(b) [OPM, PDM, 1JT, 3TR] 、(c) [OPM, 2RT, 2TR]、(d) [OPM, PDM, 2RT, 2TR]、(e) [OPM, PDM, 1JT, 2RT, 1TR]である。両軍の地上軍を含めた組合せは、(a) と(b)がそれぞれ108通り、(c) と(d)が それぞれ180通り、(e) が540通りである。また地上軍戦力の期待値は、地球が降下兵(JT): 4.8戦力、一般兵(RT): 合計5.0戦力、帝国が降下兵(JT): 4.5戦力、一般兵(RT): 合計6.5戦力である。

 帝国プレーヤーは惑星防御射撃 - 地上戦闘の勝率がどの程度であれば惑星地表ボックスの攻略を決行するのが良いだろうか? 第1版[12,13]に従いPDMの惑星防御射撃の命中を3以下にすると、ワールド・マーカー(WLM)と惑星防衛システム・マーカー(PDM)がある惑星地表ボックスに惑星爆撃なしに初期配置の地上軍全戦力を降下させても、攻略の成功率は51.1 %を越えない。第2版[14]に従いPDMの惑星防御射撃の命中を2以下にしても64.4 %を越えない。この結果は、PDMの惑星防御射撃の命中が3以下の場合、地球プレーヤーがBarnard's starの惑星地表ボックスを[OPM, PDM, 2RT, 1JT]にすると、地球の地上軍が(2RT2,1JT4)で帝国の地上軍が(3RT3, 1JT6)だとしても、帝国の勝率は65 %を越えないことを意味している。またPDMの惑星防御射撃の命中が2以下の場合でも帝国の勝率は 79.4 %である。帝国プレーヤーがこの条件下で降下したプレイを見たことが無いが、計算結果を知って試すことを考えた自分がいるので、攻略のしきい値を80 %では無く、勝率70 %とした。ここでの攻撃側勝利は「降下した帝国軍が全滅しなかった」場合である

以後の検討は、基本的にGDWの第2版ルールに従う[14]。検討で頻繁に見にする第1版[12, 13]との違いは、1. PDMの惑星防御射撃の命中が2以下、2. 近接攻撃への防御射撃に短距離ミサイル射撃は使えない、3. 財政強化直訴での予算増額はその戦争(ゲーム)中に限られる、である。

 (e)条件、地球OPMとPDM、1JT、2RTが配置された星系に惑星爆撃なしで降下した帝国軍の勝率は、基本的に60%未満である。帝国の勝率が70%以上となるのは、帝国にJT6がありRTの合計戦力が6以上で、且つ地球地上軍の合計が8戦力[JT4, 2RT2]の場合だけである。帝国はこの幸運に恵まれたならば、第1ターンにBarnard's starを攻略するべきである。

 帝国艦隊は合計23ミサイル力を持っているため、PDMを惑星爆撃した場合、無力化に成功する確率は50%である。惑星爆撃でPDMを無力化/破壊できると勝率は10〜15 %向上する。そして惑星防御射撃により、12.7~21.1 RUの艦隊を失うことになる。帝国プレーヤーは通常、このリスクを取れないと思うので、ここでは惑星爆撃無しで降下する場合を扱う。

 Fig. 6-1(a)~(d)に惑星爆撃なしで帝国地上軍 1JT, 3TR(3RT)が降下した場合の帝国の勝率を縦軸、横軸を帝国が降下させた地上軍の合計戦力とした分布を示した。円マーカー(ぬき)の色は地球の地上戦力、円マーカー(塗り)の色は帝国降下兵の戦力を、それぞれ示している。PDMとOPMが防衛する惑星地表ボックスに、1JT, 3TR(3RT)を降下させた場合の上陸期待値は、0.69JT , 1.33RT、2個師団の上陸が期待できる。OPMだけの惑星地表ボックスに、1JT, 3TR(3RT)を降下させた場合の上陸期待値は0.83JT, 2RTである。2個師団以上の上陸を期待したい場合は、3個師団を降下させると良い。

 Barnard's starやJunctionが [OPM, PDM, 1JT, 3TR] で防衛されている場合、Fig. 6-1(b)から、地球の降下兵が 4戦力で、

を投入すると勝率が70%以上となる。

 Barnard's starやJunctionが [OPM, PDM, 2RT, 2TR] で防衛されている場合、Fig. 6-1(d)から、

の投入により勝率が70%以上となる。

 地球がPDM無しで防衛している前哨基地は、Fig. 6-2(a), (c)から

の投入により勝率が70%以上となることが分かる。


Fig. 6-1 Attack win rate on drop to Planetary box without bombardment on all combinations of ground troops
Inside the planetary surface box are (a) OPM, 1JT, 3TR, (b) OPM, PDM, 1JT, 3TR, (c) OPM, 2RT, 2TR, (d) OPM, PDM, 2RT, 2TR. The attacker is the Imperial player.

 これまでの計算により、第1ターンに攻略可能な地球前哨基地の有無が判断可能となった。しかし、地球のPDMで防衛されていない地球の前哨基地は、Proxima centauri 星系(位置的にJunction星系にPDMが配置される可能性が高い)と第1ターンに地球プレーヤーが前哨基地を設置した星系である。しかし地球プレーヤーが前哨基地を設置するのは、第1ターンの帝国攻勢が到達可能な領域の外に位置する Perasphrs, Ember, Loki, Midway, Dismat の惑星地表ボックスである可能性が高い。また地球プレーヤーがProcyon星系に前哨基地を設置するのは、帝国プレーヤーターン中の地球のリアクション移動フェイズとする可能性が高い。何故なら帝国の第2戦闘フェイズ中に前哨基地が破壊されないようにTRを積めば、第2ターンに受け取る生産された地上軍で帝国を撃退できるからである[8]。

 帝国プレーヤーは、Barnard's star, JunctionやProxima centauri の前哨基地が攻略可能、またはALPHA CENTAURI A / Bのワールドを征服・中立化が可能なら、配置1「 TAU CETI, EPSILON ERIDANI の各星系にワールドを、Agidda星系に 前哨基地を配置」を選択すると良い。

配置1 前哨基地: Agidda

 配置1は、帝国プレーヤーがAgidda星系に全ての帝国艦隊(2SC, 4DD, 2CL, 1CR, 1M, 4TR, 1AO)を配置して、Barnard's star星系の突破を狙う場合に良く使う配置である[1, 20]。地球プレーヤーが「第一次バーナード星系会戦」を回避して「宙域確保戦略」に従うと、地球プレーヤーは帝国のジャンプ移動を足止めするために、Barnard's star、SOL、ALPHA CENTAURI A / B、Proxima centauri、Junction、SIRIUS、Procyonの各星系に1個艦隊、合計7個艦隊を配置する必要がある[1]。帝国プレーヤーは足止め艦隊の排除に、Proxima centauri星系に2個、Junction星系に2個、Procyon星系に2個の合計6個艦隊をジャンプ移動させる必要がある (日本版2019ルール[11]では、更に接続を妨害するためSOL星系に1個、ALPHA CENTAURI A / B星系に1個を配置する必要がある)。

 このとき、帝国プレーヤーが帝国の第1戦闘フェイズに攻略目標とするのはALPHA CENTAURI A / B である。1JT, 3TR(3RT)が惑星地表ボックス[WLD] に降下した場合に期待される上陸部隊数は、0.67JT, 1.5RTなので(2 + α) 個師団 である。

 地球プレーヤーが対策としてALPHA CENTAURI A / B の2つの惑星地表ボックスを[WLD, 2TR]とすると、地球プレーヤーがBarnard's starから輸送できる地上軍が2個師団となるため、地球のリアクション戦闘フェイズの地上戦闘で勝利できる可能性が高くなる。[WLM, 1JT]の惑星地表ボックスは降下兵の戦力により攻略可能である。惑星地表ボックスを[WLD]だけとした場合、地球ワールドは無力化/中立化されるので、輸送で地上軍を受け取れなくなるため、地球艦隊と帝国艦隊がALPHA CENTAURI A / Bの恒星へクスで宇宙戦闘をすることになる。

「宙域確保戦略」では地球艦隊はJunction - Proxima centauriラインの外側(SOLから離れる側)にいることになるが、この配置ではALPHA CENTAURI A / Bに地上軍を送ることができない[1]。艦隊が地上軍を伴うとALPHA CENTAURI A / B 星系ではなくBarnard's star星系に帝国地上軍が降下することになる。地球艦隊がBarnard's star星系の惑星地表ボックスにいる場合は理想的であるが、地球艦隊の戦闘艦は(1DD, 1CL, 1MB)である。帝国プレーヤーがALPHA CENTAURI A / B星系の征服を考えている場合、帝国艦隊がALPHA CENTAURI A / B星系の恒星へクスにいることになる。帝国プレーヤーがALPHA CENTAURI A / B星系に1SC, 3DD, 4TR(1JT, 3RT)を送れば、ALPHA CENTAURI A / B星系での宇宙戦闘は、地球プレーヤーの勝率が50 %を切るため、地球プレーヤーからの仕掛けを防ぐことができる(日本版2019ルール[11]では Barnard's star星系の恒星へクスに守備艦隊を配置するだけで防げる)。

 帝国プレーヤーが帝国の第2戦闘フェイズの攻略目標とするのはJunction、Proxima centauriの中でPDMの無い星系の惑星地表ボックスである。惑星地表ボックスに4TRを積まれると1戦闘フェイズでは攻略できないが、ALPHA CENTAURI A / B星系、Barnard's star 星系の防衛を考えるとTRの数が不足するはずである。ワールドを征服中の場合は、1個師団での攻略となるが、成功すると功績+5ポイントの10功績ポイントで休戦である。

 ワールドを征服していない場合は、全地上軍を投入して、地球前哨基地を確実に征服する必要がある。この後、第1次恒星間戦争(ゲーム)中に功績ポイントを得る機会は非常に少ないので、確実にポイントを得る必要がある。

シリウス方面

 帝国プレーヤーは配置1においてShuruppak星系等のシリウス圏の星系に分艦隊を初期配置することができる[19, 20]。分艦隊がリアクション移動フェイズのジャンプ移動でSIRIUS星系 - Procyon星系に進出しなければ、最初に分艦隊をシリウス圏に配置する意味はほとんど無い。シリウス圏に2個艦隊以上の戦闘艦を配置した帝国主力艦隊がAgidda星系からBarnard's star星系にリアクション移動フェイズのジャンプ移動で進出した場合、地球の第2戦闘フェイズに発生する地球主力艦隊(3SC, 2DD, 1CL, 1MB, 5TR)との宇宙戦闘「第一次バーナード星系会戦」は、地球の勝率が80 %を超えるからである(帝国勝利に帝国優勢での撤退を含む[6])。シリウス圏に配置されている分艦隊が1SC、1DD、1CL、1CR、2SCの場合のみ「第一次バーナード星系会戦」における地球の勝率は80 %以下となる(地球が1SCを節約し、2SC, 2DD, 1CL, 1MB, 5TRで攻撃する場合は、2DD、(1SC, 1DD)、(1SC, 1CL)でも地球の勝率が80 %以下となる)。

 次に帝国プレーヤーがシリウス圏に主力艦隊となる6個艦隊とした場合、Agidda星系の防衛艦隊は戦闘艦4個艦隊(モニター艦を含む)と4個輸送艦となる。地球プレーヤーが第1戦闘フェイズに艦隊(4SC, 2DD, 1CL, 1MB, 6TR)でAgidda星系を攻撃した場合、地球の勝率は70 %を超える。帝国プレーヤーがシリウス圏に6個より多くの艦隊を初期配置すると、Agidda星系の防衛が厳しくなることが分かる。

ここで扱っている宇宙戦闘は、Imperiumの最初のターンの宇宙戦闘である。Imperiumをプレイする毎に同じ宇宙戦闘が繰り返される可能性が高い。私は1日に「第1次恒星間戦争」ゲームを3回位、対戦相手を変えて同じ初手で対戦しても、ある程度の再現性が欲しいと考えている。勝率70 %で3連勝する確率は34 %、勝率80 %では51 %なので、本論文では勝率80 %を大規模な艦隊による宇宙戦闘を実行するしきい値とした。

 帝国プレーヤーがシリウス圏の艦隊をリアクション移動フェイズのジャンプ移動でSIRIUS星系に進出させた場合、地球プレーヤーは、SIRIUS星系に進出してきた帝国艦隊が3個以下ならSIRIUS星系に反撃することになる。

 地球プレーヤーがSIRIUS星系に反撃する場合、地球の防衛線は Barnard's star、SOL、ALPHA CENTAURI A / B、SIRIUS、Procyonの各星系となり、帝国のジャンプ移動を足止めするには5個艦隊が必要である。逆に地球プレーヤーがSIRIUS星系を放置する場合、防衛線は Barnard's star、SOL、ALPHA CENTAURI A / B、Junction、SIRIUS、Procyon、Hades、Infernoの各星系となり、帝国のジャンプ移動を足止めするには8個艦隊を必要とする。その差3個艦隊、つまり地球プレーヤーは3個艦隊をSIRIUS反撃艦隊として使っても必要とする総艦隊数は変わらない。

 帝国艦隊がSIRIUSから撃退された場合、帝国プレーヤーは、SOL、ALPHA CENTAURI A / B、Procyonの各星系の足止め艦隊の排除に各星系に2個、合計6個艦隊を用いたい。帝国の戦闘艦は9個艦隊なので、SIRIUS星系の攻防で許容される損害は3個艦隊までとなる。

 地球プレーヤーがSIRIUS星系への反撃に使える艦隊は最大で(1SC, 2DD, 1CL, 1MB, 3TR) である。この艦隊が勝率80 %以上で撃退可能な帝国艦隊は3個艦隊以下である。

つまり地球プレーヤーはSIRIUS星系に進出した帝国艦隊が(1SC, 3DD)、または3個艦隊以下であれば、地球は勝率80 %を確保できる。

 地球プレーヤーはSIRIUS星系に進出した帝国艦隊が4~5個艦隊の場合に限り、SIRIUS星系を放置することになる。地球の第1ターン中の防衛線は Barnard's star、SOL、ALPHA CENTAURI A / B、Junction、SIRIUS、Procyon、Hades、Infernoとなり、帝国のジャンプ移動を足止めするために8個艦隊が必要である。帝国プレーヤーは第1移動/戦闘フェイズにBarnard's star星系とProcyon星系の足止め艦隊を排除し、第2移動/戦闘フェイズにSOL、ALPHA CENTAURI A / B、Junction、Hades、Infernoの5星系の足止め艦隊を排除することになる。帝国戦闘艦は9個艦隊であること、整備不良艦の発生もあるため、2個艦隊で足止め艦隊を攻撃できない星系が複数発生する。1星系でも失敗するとProcyon星系とSOLまたはALPHA CENTAURI A / B星系が接続する[8] (日本版2019ルール[11]では、SOL星系とALPHA CENTAURI A / B星系の恒星ヘクス占領に成功するだけで接続を防害できるため、容易である)。一方で、帝国艦隊は帝国の第1移動/戦闘フェイズにProcyon星系に到着するため、地球プレーヤーによるProcyon星系への前哨基地設置を妨害できる。地球プレーヤーが既にProcyon星系に前哨基地を設置している場合は、第1戦闘フェイズに地上軍を降下させて征服を試みると良い。

 リアクション移動/戦闘フェイズにBarnard's star星系へ進出した場合より1フェイズ遅いが、第2移動/戦闘フェイズにALPHA CENTAURI A / B星系に到着できる。帝国プレーヤーには地球ワールドを征服するチャンスがあるが、地球プレーヤーが最適化手順を選んだ場合、地球ワールドの征服は難しい。また帝国艦隊はProxima centauri星系に届かないので、地球PDMはJunction星系に配置されることになる。このため第1ターン中に功績ポイントを獲得できる可能性がある星系がJunction星系だけとなるが、Barnard's star [OPM, PDM, JT, 2RT]、ALPHA CENTAURI A [WLD, 2TR] / B [WLD, 2TR]、Junction [OPM, PDM, 2TR]となると、1ターン中に征服することが難しい。この配置は大きな宇宙戦闘を発生させないため艦隊温存に優れている、また地球プレーヤーにProcyon星系を要塞化(塹壕化)させてないことから、戦争(ゲーム)の後半に功績ポイントを獲得できる可能性がある。

配置2 前哨基地: Markhashi
配置3 前哨基地: Ishimshulgi

 配置2は、「TAU CETI, EPSILON ERIDANIにワールドを配置するのであれば、最後の前哨基地はAgiddaよりMarkhashiに配置したい」とS. Listが書いている配置である[2]。シリウス圏の防衛にMarkhashi星系の前哨基地を活用する戦略は、キャンペーン(戦役)戦略として理解できる。しかしキャンペーンを考えるなら、配置1でスタートし、第1次恒星間戦争(ゲーム)中に Dushaam、Markhashiに前哨基地を設置することも考えに入れることができる。第1ゲーム(第1次恒星間戦争)の勝敗を考えたプレイでは、シリウス圏の前哨基地の損失/ワールドの中立化による功績減がゲーム(戦争)の勝敗を決定する。このためシリウス圏を安全に保持することを優先し、想定より多くの資源を消費する傾向がある[20]。また配置2と配置3の違いはシリウス圏の拠点がMarkhashi星系からShuruppak星系に1ジャンプ分だけ後退することである。この影響はリアクション移動フェイズのジャンプ移動で進出できる先がProcyon星系かその先にある4星系(Junction, Hades, Hepaistos, Cakgary)かの違いのため、SIRIUS星系 - Procyon星系間での争いが中心となる第1次恒星間戦争(ゲーム)ヘの影響は小さい。私は、配置2よりシリウス圏を空にして、防衛線を帝国圏に限定している配置3の方が、第1ゲーム(第1次恒星間戦争)を安定して戦えると考えている。

NUSKU防衛

 配置2、配置3は初期配置の艦隊・部隊でNUSKU / Dushaam星系を防衛する必要がある。全ての帝国艦隊(2SC, 4DD, 2CL, 1CR, 1M, 4TR, AO) をNUSKU / Dushaam星系に配置した場合、文明地での整備による支出を避けるため、帝国のリアクション移動フェイズにAgidda星系、Apishal星系、Ishimshulgi星系にジャンプ移動することになる。

 最初に帝国プレーヤーがAgidda星系を確保するために必要なリアクション移動を考える。地球プレーヤーはAgidda 、Barnard's star、SOL、ALPHA CENTAURI A / B、SIRIUS、Procyonの各星系で帝国のジャンプ移動を足止めするために5個艦隊を必要とする。帝国のリアクション移動フェイズにジャンプ移動でAgidda星系に進出した帝国艦隊は、地球の第2 移動/戦闘フェイズに地球艦隊(3SC, 2DD, 1CL, 1MB, 3TR) から攻撃される可能性がある。(2CL, 1CR)を整備のためApishal星系に送った場合の宇宙戦闘は次の通り。帝国が Agidda星系を確保するには計算上6個艦隊以上を送る必要がある。

 帝国プレーヤーがつづく帝国の第1移動フェイズにBarnard's star星系とSIRIUS星系にジャンプ移動で艦隊を送る場合、地球プレーヤーはリアクション移動フェイズのジャンプ移動で Barnard's star星系に最大で(2SC, 2DD, 1CL, 1MB, 1M, 3TR)、SIRIUS星系に最大で(1SC, 2DD, 1CL, 1MB, 3TR)の艦隊を送り、反撃することができる。

 帝国は主力艦隊を投じてもBarnard's star星系での宇宙戦闘に勝利を見込めない。SIRIUS星系への派兵(2個艦隊)と巡洋艦クラス1個艦隊を欠く(整備不良の期待値)影響で、地球の勝率が80%を越えるためである。

 ジャンプ移動で Barnard's star星系に2SCを送り込み、残りの帝国艦隊(4.5(DD+CL+CR), 4TR)をSIRIUS星系に派遣した場合、地球プレーヤーのリアクション戦闘フェイズに発生する宇宙戦闘の結果は以下の通りである。

地球は、Procyon星系の恒星ヘクスを占領されても接続が妨害さないのでリスクを負う必要はない[8] (日本版2019ルール[13]では接続が防害されるため、Procyon星系に前哨基地を設置済なら、反撃するのも良い選択である)ため、帝国はSIRIUS星系を確保できる。

 帝国は第2移動フェイズにジャンプ移動で Procyon星系に進出できる。しかしこの状況でProcyon星系に地上軍を降下させても、維持は覚束ない。また地球がProcyon星系に前哨基地を設置している場合も、第2戦闘フェイズで前哨基地を破壊するのは困難である。

 Barnard's star星系の2SCは、リアクション移動のジャンプ移動で送られたSCと合流したモニター艦(M)との戦闘を避けて退却することになる。退却した2SCは第2移動フェイズにジャンプ移動で再度Barnard's star星系に再び進出することになる。

NUSKU放置

 NUSKUのワールドを失わないのであれば、NUSKU / Dushaam星系の恒星へクスを地球に占領されても収入に変化がない。そこで帝国プレーヤーがシリウス圏 (Shuruppak星系またはMarkhashi星系)に分艦隊を初期配置することもできる。この場合、シリウス圏の星系に(1SC, 4DD, 1AO)、NUSKU / Dushaam星系の恒星ヘクスに1SC、NUSKU惑星地表ボックス[WLM, OPM, 1JT, 3RT, 1M]、Apishal星系に(2CL, 1CR, 4TR)が初期配置となる。配置3の場合はIshimshulgi星系に1SCを配置、シリウス圏の星系に(4DD, 1AO)となる。

 地球プレーヤーは、SIRIUS、Procyon、Agidda、Barnard's starの各星系に帝国のジャンプ移動を足止めする艦隊として4SCを必要とするため、NUSKU / Dushaam星系に突入できる地球艦隊は最大(1SC, 2DD, 1CL, 1MB, 6TR)となる。帝国プレーヤーがNUSKU / Dushaam星系の地球艦隊に反撃すると、帝国の勝率は75 %となる。

地球プレーヤーが小規模な艦隊でNUSKU / Dushaam星系の1SCを排除した場合、

  1. NUSKUはワールドなので収入に影響がない。
  2. 反撃した艦隊は「文明地での整備」費用がかかる。

この2点から帝国プレーヤーはリアクション移動フェイズに、本来の目的であるシリウス圏の艦隊をSIRIUS星系にジャンプ移動させることになる。

 地球プレーヤーが第2移動フェイズにApishal星系を強襲した場合、帝国艦隊がSIRIUS星系に進出しているため、帝国プレーヤーは帝国の第1移動/戦闘フェイズにProcyon星系を攻撃できる。地球の主力艦隊はApishal星系にいるため、地球のリアクション移動フェイズにProcyon星系に反撃できない。帝国の第2移動フェイズのジャンプ移動を Junction - Hades - InfernoとAgidda(NUSKU / Dushaam星系配置の足止め艦隊は帝国モニター艦により排除されるため配置しない)の各星系で足止めするために、4SCを必要とする。このためApishal星系での宇宙戦闘の結果は次の通りである。

 SIRIUS星系に第2移動/戦闘フェイズに反撃する場合、帝国の第2移動フェイズのジャンプ移動をNUSKU / Dushaam、AgiddaとProcyonの各星系での足止めに3SCを必要とするため、SIRIUS星系での宇宙戦闘の結果は次の通りである。

 地球プレーヤーが第2移動/戦闘フェイズにSIRIUS星系の帝国艦隊を攻撃した場合、帝国プレーヤーはApishal星系艦隊(2CL, 1CR)内の整備良好艦を用いて、帝国の第1移動/戦闘フェイズにSIRIUS星系の残敵を排除する。

 SIRIUS星系が帝国支配下ならば、帝国プレーヤーは帝国の第1移動/戦闘フェイズにProcyon星系に進出する。

 どちらの場合も、NUSKU / Dushaam星系の足止め艦隊はモニター艦を用いて排除する。

 配置2、配置3は、配置1と比較して、地球圏への侵攻速度が遅いため、第1ターンでの功績ポイント獲得は難しい。逆に艦隊温存に優れていることから、ゲーム(戦争)の後半に功績ポイントを獲得できる可能性もあるが、実効的には直訴の予算増額が恒久的であった第1版[3, 12, 13]用のキャンペーン(戦役)向けの配置である。第1ゲーム(第1次恒星間戦争)の勝敗に使える帝国のワールド/前哨基地配置は、実質的に配置1のみである。

本論内での明確化
 Dushaam の惑星地表ボックスにモニター艦と輸送艦、降下兵があり、リアクション移動フェイズに降下兵が降下できるように、帝国の第2移動フェイズに惑星地表ボックス内の輸送艦が降下兵を積載したとする。地球プレーヤーが地球の第1移動フェイズに NUSKU / Dushaam星系に進出し、NUSKUの惑星地表ボックスに地上軍を降下させて無力化/中立化した場合、帝国のリアクション移動/戦闘フェイズにDushaam の惑星地表ボックスにいる輸送艦とモニター艦はDushaamを離陸し、NUSKU / Dushaam 星系の地球艦隊と宇宙戦闘後にNUSKUの惑星地表ボックスに降下兵を下ろすことができる[8, 9]。地球プレーヤーが地球の第1移動フェイズにDushaamの惑星地表ボックスに地上軍を降下させた場合、輸送艦に乗船した降下兵は輸送艦の荷物と扱うのか? それとも下船して地上軍として戦うのか?
ここでは「下船して地上軍として戦うことが選択できる」とする。また、リアクション移動フェイズに積載した地上軍を輸送艦ごと惑星地表ボックスに降下させた場合、第2戦闘フェイズでその惑星地表ボックスで地上戦闘が発生した場合も「下船して地上軍として戦う」とする。

ジル・シルカの影

帝国の干渉

 これまで数多くの人とゲームをプレイしていると、ルールには「シーケンスに従ってプレイする」とか「シーケンスの順番を変えることはできない」と書かれているのに、意外と思い込みによってシーケンス通りにプレイしない人が多くいることに気がつく。

 Imperium/インペリウムでは、帝国の整備と生産フェイズの進め方で、シーケンス通りにプレイしない場合がよく見受けられる。読者の方で帝国干渉表と直訴表を参照してから、収入の計算している人はないだろうか?

 第1版は「10. 経済」の中に、「自己の整備と生産フェイズの開始時(第1段階として)に収入源を確かめてRUを徴収する」とあり、続いて「整備」、「生産」(生産の中に新造ユニットの配置が書いてある)と順に書いてある。「11. 功績」のルールを挟んで、「12. 帝国」の中で「帝国の干渉」と「直訴」とルールの記述が続く。プレイ順序を明示的に指示していないが、ルールの順番にプレイするように読める[3, 12, 13, 21]。しかし「生産」と「帝国の干渉」の間に「11. 功績」ルールがあるため、順序が分かり難い。第2版の帝国プレーヤーターンは下記の通り、プレイの順序が明確に指示している[14, 22]。日本版2019では帝国干渉表と直訴が1つサブフェイズにまとめられているが順序は同じである[11]。

 帝国の整備と生産フェイズを、第2版の順序でプレイを進めた場合、帝国干渉のイベントと直訴結果の適用を確認する。

「不況」は分かりやすく"This situation is evidenced by a reduction of the provincial income (by 10 RU; ...) for the next three game-turns."[11-15]、「次の3ターンの間、収入が10 RU減る」[3, 21]となっている。つまり次ターンの収入の合計から10 RU減るのである。国際通信社版[11, 22]では、「現在のターンを含めて3ターンの間、収入が10 RU減る」と修正されている。収入の計算、整備や生産が終わった後で減った10 RUの処理方法は不明である(生産から10 RU相等分を取り除く、次ターンにマイナス10 RUとして繰り越す、のかもしれない)。

 「好況」は、直ちに10 RUを資源チャートに加えて備蓄となる。なぜなら、シーケンス通りに進めていると、このイベントが発生した時、今ターンの整備と生産は終わっているからである。好況の効果で 増える10 RUは直ちに受け取るが、使えるのは次の帝国ターンの生産と整備フェイズとなる。不況の影響下の今ターンに好況が発生すると、不況の影響は無くなるため、不況の影響で減っていた収入10 RUが復活する[3, 12-15, 21]。更に好況の効果で予算が10 RU増える。今ターンの整備と生産が終わっているため、資源チャートに合計20 URが備蓄として計上される。

「辺境地の危機」は、今ターンの移動フェイズにジャンプ移動で盤外に艦隊を送り出す。

「名ばかりの増援」と「増援」は、ローカル(通常)収入とは別扱いのRUで、ただちに艦隊を購入し、今ターンの移動フェイズに盤外から到着する。

「攻勢命令」は、攻勢艦隊が盤外から登場する次ターンから始まる。攻勢艦隊は合計功績ポイントを増やすことに失敗するまで、盤上に留まる。

「内戦」は、発生した帝国干渉表サブフェイズに、直ちに派遣部隊を選び、ミサイル力を計算し、内戦表を参照して結果を得る。派遣部隊はつづく第1移動フェイズにジャンプ移動で秘密裏に艦隊を盤外に送り出す。内戦の結果は「Nターン後に帰還」なので、派遣部隊はNターン後の第1移動フェイズにマップ端のジャンプ路を経由して帰還する。報奨金は艦隊が帰還すると直ちに受け取り、資源チャートに加える(備蓄できる資源の上限が99 RUであることに注意すること)。使えるのは次ターンの生産と整備フェイズとなる。恒久的な予算の増額は艦隊が帰還すると、直ちに紙片に増額分を加えた予算額を記録する。収入計算に反映されるのは次ターンの生産と整備フェイズとなる。

 財政強化直訴の「予算増額」は、直ちに紙片に増額分を加えた予算額を記録する。このイベントが発生した時、シーケンス通りに進めていると、今ターンの収入計算は終っているので、収入計算に反映されるのは次ターンの生産と整備フェイズとなる。

 財政強化直訴の「10 RUを与える」は、直ちに10 RUを資源チャートに加える。シーケンス通りに進めていると、直訴のサイコロを振るのは、今ターンの整備と生産を終えた後になるからである。直ちに10 RUは受け取るが、使えるのは次の帝国ターンの生産と整備フェイズである。

 戦力増強直訴の「建造許可」は、直ちに紙片に許可された艦種を記録する。今ターンの生産は終っているので、生産できるのは次ターンの生産と整備フェイズとなる。

 戦力増強直訴の「戦時急造」は、ターン・トラック上の建造予定の宇宙艦を3ターン進める。「それらの宇宙艦が今ターンとなった場合は、直ちに現れる(appear immediately)」書いてあるので、即時受領、即時配置となる[12-14]。つまり今ターン生産した宇宙艦(含む戦艦)は、ターン・トラック上にあるため、3ターン進み、即時受け取り、即時配置となる。帝国プレーヤーは次ターン受け取れるのが、今ターン生産した地上軍、前哨基地、惑星防衛システムと補充の宇宙艦1個艦隊となることに注意すること。

 戦力増強直訴の「どれでも3隻与える (Any 3 ships Granted)」は登場のタイミングに関して、ルールに記述はない。私は「増援」と同じく、そのターンの移動フェイズ盤外から到着と考えている(「攻勢命令」と同じく次ターンとする方もいた[20])。

 シーケンス通り、帝国の整備と生産フェイズの最後に帝国干渉表と直訴の結果を参照しても、問題が無いように、ルールは記述されていることが分かる。

直訴(Appeal)

 第1版の直訴は、財政強化の予算増額が恒久的なため、財政強化を選択するのが普通である[3, 12, 13, 21]。一方、第2版は、直訴(財政強化)の予算増額がその戦争中のみに限定されているため、戦力増強と財政強化のどちらの直訴をするのが良いか考える必要がある[11, 14, 15, 22]。

 戦力増強直訴の場合、「3隻与える」と「戦時急造」以外の効果は、財政強化と比較できないので、ここでは計算に入れない。「3隻与える」で3BBを得るとすると期待値は1.67 RUとなる。「戦時急造」でCRとCLまたはMで3個艦隊が急造されると考えると期待値は 4.00 RUとなる。つまり、戦力増強直訴1回の期待値は5.67 RU、2回の期待値は11.33 RUである。

 財政強化直訴1回での予算増額の期待値は0.97 RUである。直訴1回の場合、休戦は第6ターン終了時となり、0.97 x 5(2, 3, 4, 5, 6ターン)= 4.85 RUの収入となる。直訴2回の場合は、休戦は第4ターン終了時となり、第1ターンの直訴分0.97 x 3 = 2.91 RU、第2ターンの直訴分0.97 x 2 = 1.94 RUの合計4.85 RUとなる。「臨時予算10 RU与える」の期待値は1回当り1.67 RUなので、財政強化直訴の期待値は直訴1回なら最大で6.52 RU、直訴 2回なら最大で8.19 RUとなる。

 戦争中に2回直訴する場合、戦力増強直訴を2回すると、財政強化直訴を2回するよりも、 3.14 RU以上多く受けとれることが期待できる。直訴を第1ターンに1回だけする場合は、財政強化直訴の方が 0.85 RU だけ多く受けとれることが期待できる。一方で、第2ターン以後に1回だけ直訴する場合は戦力増強直訴の方か多く受け取れることが期待できる。戦力増強の直訴は、3BBを受けとるとゲームの行方をほぼ決定づけ、直訴するタイミングを自由に決められるため、良い選択である。

Appendix

 一連の論文は、PDMの惑星防御射撃の命中が2以下の場合[11, 14, 15, 22]で検討してある。 PDMの惑星防御射撃の命中が2以下の場合 と3以下の場合[3, 12, 13, 21]で、帝国の勝率が、どのくらい変化するかを計算した結果をFig. 6-2 に示す。近似曲線は惑星防御射撃の命中が2以下の場合の帝国の勝率をy、命中が3以下での帝国の勝率をxとすると、y ≒ 1.495x -0.469x^2となる。

惑星爆撃なしでPDMのある星系に降下した場合の成功率が高いと感じるなら、PDMの惑星防御射撃の命中を3以下にすると良い。その場合、地上戦の勝率はx ≒ √(3.1886 -2.1336y)で計算し直すこと。


Fig. 6-2 The effect of different PDM′s hit number on the winning ratio of the Imperial Ground Forces


Fig. 6-1, 6-2 は、第1ターンに発生可能性がある地上戦闘の組み合わせを解析的に解いた結果ではないため結果には誤差がある。地上戦闘を正確に解くには、マルチ・ナップサック問題という数理モデル問題を解く必要があり、GPUを用いた高速計算が必要な課題になる。地上戦闘の勝率計算は、ナップサック問題を解かないで近似解を与えて高速化したモンテカルロ・シミュレーション・プログラムを作成し、試行回数N = 1E6の結果ある。計算誤差は1%未満のため、エラーバーはマーカーサイズより小さい。また計算は、惑星地表インタラクションサブフェイズ〜地上戦サブフェイズ内で閉じているため、フェイズ越えの水平線効果を回避していない。宇宙戦闘の勝率は試行回数N = 1E4のモンテカルロ・シミュレーション[6]の結果である(Ver. 3.1.5)。

References

[1] T. Nakamura: Game Journal Jpn. Ed. No. 10, pp. 1 (1993), No. 11, pp. 9 (1993), No. 12, pp. 17 (1993),
reprint: Game Journal Jpn. Ed. No. 1, pp. 50 (2001), No. 2, pp. 50 (2002), No. 3, pp. 46 (2002).
[2] S. List : GRYPHON #1, pp. 6 (1980).
[3] Imperium rules booklet (HobbyJAPAN CO., Ltd.: 1982).
[4] P. Kosnett: The Grenadier #1, pp. 9 (No.2) (1978).
[5] K. Ueda: Dash's clinic: Imperium "FAQ of Imperium" (2005).
[6] K. Ueda: Dash's clinic: Imperium "Estimate space combat results" (2021).
[7] K. Ueda: Dash's clinic: Imperium "Fighter Transporter" (2021).
[8] K. Ueda: Dash's clinic: Imperium "Both ends along jump routes for connection" (2021).
[9] K. Ueda: Dash's clinic: Imperium "Milestone and goal" (2021).
[10] M. W. Miller: The Dragon #20, pp. 4, pp. 28, pp. 31, III (No. 6)(1978).
[11] Imperium rules booklet (Kokusai-tushin Co., Ltd.: 2019).
[12] Imperium rules booklet (Conflict Game Co.: 1977).
[13] Imperium rules booklet (GDW: 1979).
[14] Imperium rules booklet (GDW: 1990).
[15] MPG-Net Imperium Help Files (1997). Wayback Machine.
[16] Tabletop Sci-Fi: YouTube channel Tabletop Sci-Fi (2020).
[17] calandale: YouTube channel calandale (2011).
[18] Imperium 3rd Millennium scenarios booklet (Avalache Press Ltd.: 2000).
[19] T. Nishiyama: Privet website (since 2001). URL://www.geocities.jp/aokigaryou/
[20] Private game matches and post-game analysis with other clubs member since 1986.
[21] Imperium rules booklet (HobbyJAPAN CO., Ltd.: 1985).
[22] Imperium rules booklet (Kokusai-tushin Co., Ltd.: 2001).


1. Imperium
第5回 目的と目標
第7回 地球の初手
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