分室,提携サイト:ゲーム工房URA

帝国の戦役

Campaign of Imperium

 ここでは第1次恒星間戦争(第1ゲーム)の危機を乗り越えたプレーヤーによる、Imperiumの戦役(キャンペーン)を序盤戦、中盤戦、終盤戦の3つに分けて検討する[1-3]。尚、この検討はDash’s clinic: Imperiumの第1回から第5回までの内容を基にしている[4-8]。

 キャンペーン(戦役)における帝国プレーヤーのこの時期の目標は、地球圏攻略の足場としてProcyonを征服し、「Procyonに帝国前哨基地を設置する」ことが目標である。S. Listは「初期の地球は『戸締り』と『地球圏の安定化』の2つが目標である。現実的な『戸締り』の場所はProcyon星系とBarnard's star星系(またはAgidda星系)である。『地球圏の安定化』は地球圏に帝国艦隊を侵入させないことと地球圏の植民(地球前哨基地の設置)である」と記述している[9]。私はゲーム開始から地球プレーヤーによる地球圏の植民完了とMILRABILISの地球ワールド化までを「Imperium序盤戦」としている。

 MIRABILISのワールド化と地球圏の植民を終えた地球プレーヤーの次の目標は、2カ所の扉星系Procyon星系と Barnard's star星系(またはAgidda星系)をShuruppak星系と NUSKU / Dushaam星系に変更することである。帝国プレーヤーの目標は「Imperium序盤戦」と同じである。地球プレーヤーが「Shuruppak攻略」か「NUSKU / Dushaam攻略」に成功する、または帝国プレーヤーが「Procyonに帝国前哨基地を設置」すると「Imperium中盤戦」が終了する。

 そして「Imperium終盤戦」は2つある。1つは帝国プレーヤーが「Procyonに帝国前哨基地を設置」して始まる「地球圏侵攻」である。もう1つは地球プレーヤーが「Shuruppak攻略」か「NUSKU / Dushaam攻略」に成功すると始まる「帝国圏への進出」である。

第1版のルール[10-14]では、財政強化の直訴での予算増額は恒久的である。このため帝国プレーヤーはProcyon、SIRIUS、Markhashi、EPSILON ERIDANIで防御に徹しながら財政強化の直訴を繰り返し、予算を大幅に増やすことができた。このため帝国プレーヤーは予算が地球の収入を越えてから地球圏に再侵攻していた。本論文のImperiumは、財政強化の直訴での予算増額がその戦争中に第2版のルールに従い限定している [15-17]。

Imperium序盤戦

 MIRABILISの地球ワールド化はキャンペーンのマイルストーンである。地球プレーヤーは、Barnard's starとProcyonを要塞(塹壕)化して地球圏を安定させ、早期にMIRABILISを地球ワールド化し、地球圏内の全ての第2種惑星地表ボックスに前哨基地を設置することが「Imperium序盤戦」の目標である。帝国プレーヤーは地球圏攻略の足場としてのProcyonの征服と帝国前哨基地の設置が「Imperium序盤戦」の目標である。

植民計画

 Imperiumのマップ上にはLuuruとSmade's starを除いて、第1種星系が12個、第2種星系が34個ある。地球プレーヤーと帝国プレーヤーはそれぞれ11個のワールド・マーカーを持っている。つまりキャンペーン終了時は地球(帝国)ワールド・マーカーが配置された11個の第1種星系と無力化された帝国(地球)ワールド・マーカーと地球(帝国)前哨基地マーカーが配置された第1種星系が1個ある状態になると考えられる。第2種星系は34個あるが、地球プレーヤーは22個、帝国プレーヤーは20個の前哨基地マーカーしか持っていない。Imperiumのルールに自分の前哨基地マーカーを除去する方法は記載されてないので、一度設置した前哨基地マーカーは敵対プレーヤーの攻撃で破壊されない限り盤上に残る。

 帝国圏に第2種星系は15個、シリウス圏に1個ある。ゲーム開始時に帝国プレーヤーの支配領域に16個、Agiddaを入れると17個ある。全てに前哨基地を配置すると残り3個である。しかし、図9-1(a)に示すように、地球圏を占領してキャンペーンを終了するには、最低でもProcyon、Junction、Proxima centauri、Agiddaに前哨基地を配置してALPHA CENTAURI A / Bに前哨基地を設置、ALPHA CENTAURI A / Bの帝国ワールド化を待ってBarnard's starとSOLに前哨基地を設置する形になり、地球圏に配置する前哨基地として最低でも前哨基地が6個必要である。NUSKU方向からでもProcyon、Agidda、Barnard's star に前哨基地を配置して、ALPHA CENTAURI A / Bに前哨基地を設置、ALPHA CENTAURI A / Bの帝国ワールド化を待ってSOLに前哨基地を設置して地球圏の前哨基地を消滅させるとしても、前哨基地が5個必要である。つまり帝国圏とシリウス圏の植民に使える前哨基地は14個となる。つまり帝国プレーヤーが1ターン当り確保可能な資源量(以後、収入と呼ぶ)は、Agiddaの前哨基地と地球圏以外に設置した前哨基地14個の前哨基地から合計15 RU、帝国圏のワールド6とシリウス圏のワールド2個で合計8 RU、予算(10 RU)と合わせて33 RUが上限である。恒久的な予算の増額は内戦の報酬でしか得られないが、そのゲーム(戦争)に限れば、財政強化の直訴での予算増額がある[15-17]。Agiddaに帝国前哨基地がある場合、帝国プレーヤーは第1種星系に設置する分も含めて10個の前哨基地の生産と配置が必要である。前哨基地の残りは3個なるが帝国ワールド化で2個戻り5個となる(1個はAgiddaに設置済)。

 地球圏に第2種星系はAgiddaを含むめて18個ある。ゲーム開始時に地球プレーヤーが支配できるBarnard's star〜Procyon〜MIRABILISの地球圏内プレーヤーの支配領域に17個。全てに前哨基地を配置すると残り5個である。しかし図9-1(b)に示すように、地球圏のAgidda とDushaam、シリウス圏のMarkhashi とShuruppakに前哨基地を設置したい。そして帝国ワールドの出口を塞ぐ意味でも帝国圏のEnki KalammaとShulgiに前哨基地を設置する必要がある。合計7個の前哨基地が必要である(最後の1個は帝国ワールドに設置)。つまり地球プレーヤーが植民に使える前哨基地は15個となる。地球プレーヤーは前哨基地を10個生産し配置する必要がある。MIRABILIS の地球ワールド化が完了すると前哨基地が1個戻り前哨基地のストックは7となる。地球プレーヤーの収入は、MIRABILIS の地球ワールド化が完了する迄は39 RU、ワールド化すると46 RUとなる。


Fig. 9-1 Placements of world and outpost markers on the map at the end of the campaign
(a) the winner is the Imperial player, (b) the winner is the Terran player.

 帝国の収入に相当する艦隊規模33 RUの帝国艦隊は、Lanchesterの二次則[18]で近似計算すると、帝国艦隊攻撃時の損害比は0.71なので、艦隊規模38.2 RUの地球艦隊に勝利できる。つまり帝国艦隊は補充艦隊を入れれば、「Imperium序盤戦」の地球艦隊を撃破することは可能と考えられる。

「Imperium序盤戦」の地球プレーヤーはフル・スタックの「艦隊決戦」での勝利は難しいので、帝国艦隊をBarnard's starとProcyonに2分割する必要がある。2分割した帝国艦隊との「艦隊決戦」に勝利し続けるには、Lanchesterの二次則から 40.0~46.0 RUの収入が必要である (モニター艦と戦闘機を使わない計算なので実際はもう少し小額で支えられる)。MIRABILISのワールド化が完了して収入が49 RUに増加するまでは、地球プレーヤーは戦力的に不安定な状態であることが分かる。

Imperium に Lanchesterの二次則を適用した詳細は付録参照のこと。Damage-rate: 損害比(交換比とも訳される)は自軍の損害を分母、敵軍の損害を分子とする比率が用いられる場合が多いが、ここでは防御側を分母、攻撃側を分子とした比率を用いる。

 地球プレーヤーがMIRABILISを地球ワールド化するには平和5ターンが必要である。地球プレーヤーが平時の第1ターンにMIRABILISに植民し、次のゲーム開始時にワールド化している、6ターン以上の平和の長さとなる確率は44.4 %である。第2ゲーム(戦争)開始時にMIRABILISが地球ワールド化している場合、通常、地球圏の植民が完了していない。この場合、地球プレーヤーは第2ゲーム中も地球圏に閉じ籠もり、地球圏の植民を進めることになる。つまり「Imperium序盤戦」の地球プレーヤーは防御側で、帝国プレーヤーは攻撃側である。2回連続で6ターン以上の平和とならない確率30.8 %、3回連続は17.1 %、2回の合計で5ターン以上とならない確率は8.3 %である。MIRABILISは4ゲーム開始時に地球ワールド化していない確率は3.2 %ので、第4ゲーム開始前までに地球圏の植民を終えておきたい。

 インペリストの多くはゲーム中に数多くの前哨基地を設置している[19]。しかしProcyon、Agidda、DushaamやMarkhashi等の係争地や軍事拠点となる星系を除き、ゲーム中の植民(前哨基地の設置)は多くの場合はマイナスである。第1ターンに前哨基地(4 RU)を生産したとすると、第2ターンに受け取り植民することになる。第3ターンから1 RUの収入源となるが、前哨基地への投資を回収できるのは6ターン、または5ターンと平時歳入(または次ゲームの第1ターン)となる。つまり戦闘艦を必要とするゲーム中に前哨基地を作って植民しても、収支がプラスとなるのは次のゲームからである。植民用の前哨基地を作るよりも宇宙艦を建造し、艦隊数を増やして損失を減らす方が投資として有効である。その結果として平時生産で宇宙艦の代わりに前哨基地を生産し、平時植民で多数の前哨基地を設置できる。両プレーヤーに共通する方針としては、軍事拠点に設置する前哨基地を除き、植民用の前哨基地は最終ターンか平時に生産し、平時植民で設置する方が良い投資方法である。

退役

 惑星防衛システム(PDM)、モニター艦、戦闘機、地上軍(JT, RT)の退役は整備値4の巡洋艦と同じ確率である。また整備値の2倍の資源量を費やして艦隊を維持する必要性に関しては、CR以下の艦艇は平和の長さに関係なく退役のサイコロを振る方が良い。例えば5CSを維持する場合、40 RUの資源量が必要である。CSの退役率は最大2/3なので、5CS全てが退役する確率は13.2 %である。40RUの資源量で4CSを建造すれば86.8 %の確率で5CS以上を維持できる。期待値を計算しても6.7 RU有利である。同様に主力艦(B, B1~BB)は、平和が3ターン以下のとき、退役のサイコロを振る方が良い。ただし、プレーヤー自身の運が悪いと思っているなら、期待値が同じとなる平和が5ターン以上でのCRと平和が 3ターンのときのBBは退役のサイコロを振らずに、2倍の整備費用を支払っても良い。

開戦時戦力

 キャンペーン(戦役)中のゲーム(戦争)のほとんどは、帝国属州の指導者が更迭されて終了する(帝国の敗北で終了)。前ゲームで帝国が敗北している場合、帝国と地球との戦力差が最大となるのは、帝国プレーヤーが今ゲームの1ターンの生産を受け取った時点になる。つまり地球プレーヤーの最大の危機はゲーム開始の第1~2ターンである。従って地球プレーヤーは、ゲーム開始時の危機に対応できるだけの資源量を前ゲーム中に備蓄し、平時生産でゲーム開始時戦力を整えることが、「Imperium序盤戦」のもう1つの目標となる。

 帝国が勝ってゲーム終了となった場合、帝国プレーヤーはBarnard's star星系、Procyon星系等の戦略重要拠点を確保している可能性が高い。帝国プレーヤーは、地球プレーヤーのゲーム開始時の攻撃で拠点星系を失わないように拠点星系の防衛力を強化する必要がある。帝国プレーヤーがゲームに敗北すると防衛拠点が出撃拠点に変わるため、地球プレーヤーはゲーム終了までに戦略重要拠点を奪還することが肝要である。帝国プレーヤーが連勝を望めるのは、Procyon星系に帝国前哨基地を設置した次のゲームで、MIRABILISを征服し帝国前哨基地を設置するときである(Imperium終盤戦)。

 帝国小型艦で編成された効率的かつ規模が大きな帝国艦隊は、艦隊規模44 RU(11SC, 11DD)から母艦を追加した艦隊規模54 RU(11SC, 11DD, 3F, 1MS)である。この帝国艦隊に勝率80%以上となる地球艦隊の艦隊規模(RU)は、下記の通り帝国の艦隊規模(RU)の1.50~1.57倍である。全ての平時歳入の資源量がジャンプ艦隊の生産・編成に投入される訳ではないが、地球プレーヤーが開戦時に保持する部隊の目標艦隊規模(RU)は、帝国プレーヤーの平時生産の1.5倍以上となる。帝国には小型艦以外に巡洋艦が数個ある。詳細に考える場合、地球プレーヤーは帝国1CLなら1MB、巡洋艦1個艦隊がなら2MB、主力艦1個艦隊なら3MBで撃破可能なので、1個艦隊当り4~12 RUを加える。

 第2ゲーム(第2次恒星間戦争) 開始時の場合、帝国プレーヤーは第1ゲーム最終ターンの収入+ 平時歳入≒ 46 RUで平時生産をする。地球プレーヤーは46 RUの1.5倍以上である70 RU以上の資源量で平時生産をすることが目標である。第2ゲーム第1ターンの生産を受け取る時点で、帝国プレーヤーの艦隊規模(RU)は70 RU程度となる。帝国艦隊全体で(11SC, 11DD, 3F, 1MS, 1CR, 1CL)と考えると、SC、DDが枯渇しているため、地球プレーヤーの必要資源量は外挿より小さくなるが、平時生産 で93 RU以上の資源量を必要とする。地球プレーヤーには平時歳入が15 RU程度なので、備蓄資源量として55~78 RU以上が必要となる。地球プレーヤーの第1ゲーム中の収入は30 RU位なので、第1ゲーム中に2~2.5ターン分の資源量を備蓄する必要がある。

 第3ゲーム以降は、帝国プレーヤーの収入が33 RUとなり、帝国プレーヤーは66 RU以上の資源量で平時生産する可能性が高い。その場合、地球プレーヤーは89 RU以上の資源量で平時生産をすることが目標となる。この時期になると地球プレーヤーは平時歳入が39 ÷ 2 = 19 RU(端数切捨)程度あるはずなので、備蓄資源量の目標値は70 RU以上となる。帝国プレーヤーの第1ターンの生産分を計算に入れると備蓄資源量の目標値は94 RU以上となる

 地球艦隊の艦隊規模(RU)が80 RUを超えると、小型艦だけで編成された艦隊にBBを加えると勝率が高くなる。地球BBは帝国の主力艦対策と要塞(塹壕)化された星系、SIRIUS星系を突破する道具でもある。必要に応じて建造し使い捨てること重要である[19]。

昔々、私が帝国を担当したとき、第1か2次恒星間戦争(ゲーム)終了までに地球プレーヤーが90 RU位を備蓄して平時にBBを建造されて、大敗したことがある。対戦後の感想戦で、対戦相手の新保が「第1〜2次恒星間戦争の地球は、休戦までに99 RU備蓄するのが目標」と言っていたのを記憶している[20]。前述の「目標は93~94 RU以上の備蓄」は、新保の経験的コメントに、私の数理的理解が追いついたと言える。彼とは、地球と帝国の担当を交代して2戦2敗であった。私はImperiumのプレイが上手くないことを実感した。

 地球プレーヤーは第1~2ターンの危機的状況を凌げれば、残り時間を考えても戦闘機とモニター艦、そして退路の妨害とリアクション部隊の組み合せで、地球圏を防衛できる可能性は高い。Barnard's star星系は接続が妨害されないため、恒星ヘクスを帝国艦隊が占領しても星系ヘクス内にモニター艦や戦闘機、地上軍や惑星防衛システム(PDM)を配置できる。これは接続されている前哨基地が収入以外にも、生産された部隊の配置先としても機能するためである[4]。生産された艦隊をSOLからBarnard's starに回航する必要も無い。生産で受け取りBarnard's starの恒星ヘクスに配置した宇宙艦は、続く第1移動フェイズにAgidda星系にジャンプ移動してAgiddaの恒星ヘクスに駐留中の帝国艦隊と宇宙戦闘をすることも可能である。

 また地球プレーヤーがProcyon星系に前哨基地を設置すると、ほとんどの場合、帝国プレーヤーはProcyon星系の地球前哨基地と地球ワールドとの接続を妨害できない。そのためProcyonの恒星ヘクスに帝国艦隊がいても、Procyon星系ヘクス内にモニター艦や戦闘機、地上軍や惑星防衛システムを配置できる[4]。生産で受け取りProcyonの恒星ヘクスに配置された地球艦隊は第1移動フェイズに恒星ヘクスを占領している帝国艦隊と戦闘することなくSIRIUS星系に移動し、SIRIUS星系の帝国艦隊を攻撃することも可能である(Procyonを発進する地球艦隊にタンカーが含まれていれば、SIRIUS星系の先に進出することも可能)。SIRIUS星系の帝国艦隊を撃破できれば、Procyon星系は帝国プレーヤーのリアクション部隊からの攻撃を受けない可能性が高くなる。

 「Imperium序盤戦」の帝国プレーヤーは地球圏攻略の足場としてのProcyonの征服と帝国前哨基地の設置が目標である。この時期、帝国ワールドとProcyon星系の接続はSIRIUSを通過する必要があるため、平時植民でProcyon星系に前哨基地を設置できない(平時植民は、保持可能で接続できる星系に限られている)。つまり帝国プレーヤーがProcyon星系を征服しても、ゲーム中に帝国前哨基地を設置しなければ、地球プレーヤーに平時植民で前哨基地を再設置されることになる。従って帝国プレーヤーはゲーム中に帝国前哨基地をProcyon星系に設置することは、Procyon星系征服の必須条件である。

 帝国プレーヤーはゲーム開始時の戦力優位でProcyon星系を征服する必要があるため、Agidda星系方面を戦闘機スタックで蓋をする必要がある。Barnard's star星系を攻撃する方がSOLやALPHA CENTAURI A / Bへの直接圧力となるため有効に見える。しかし、Barnard's star星系は地球ワールドとの接続が妨害されないため、戦闘機やモニター艦との消耗戦になり、帝国小型艦の優位性が弱くなる。Procyon星系とSOL星系の間にはJunction等の星系があるため、3~4星系に小型艦で編成した小艦隊を派遣し、接続の妨害を試みることができる。1ヶ所の星系でも敗退すると接続の妨害に失敗することになるが、帝国小型戦闘艦による「消耗戦」を3~4星系で展開でき、地球プレーヤーの艦隊/資源の備蓄を妨げることができる。これは「Imperium終盤戦」の「地球圏侵攻」にも共通するが、小規模艦隊戦は、Lanchesterの二次則の帝国攻撃時の損害比が0.65、地球攻撃時の損害比が1.08と帝国プレーヤー有利である。「存亡の機を越えて」に示したように「消耗線」を繰り返えすと地球プレーヤーの方が帝国プレーヤーよりも4 RUほど大きな艦隊規模(RU)を必要とするので、帝国プレーヤーは戦場とする星系を増やすほど、地球プレーヤーの戦力集中を妨げることができる。Imperiumはリアクション移動以外、ジャンプ移動の回数に制限が無い(移動力∞)ため、戦力分割を一方的に強いることはできない。自軍を分散しなければ相手は戦力を分散しないので、帝国プレーヤーは自らの艦隊を分散させて戦場とする星系を増やす意識を持つ必要がある。

「Imperium中盤戦」にも共通するが、帝国プレーヤーはProcyon星系方面の戦闘に注力し過ぎると、Agidda星系方面の防衛が疎かになり易い。地球プレーヤーにとってAgidda星系は、喉元に突き付けられた剣先のため、絶えず攻略する機会を狙っている。地球プレーヤーはAgidda方面の帝国艦隊が薄いと見ると、艦隊戦力を集中して突破してくる。一方、Procyon星系を狙う帝国プレーヤーにとってAgidda星系は遠く、リアクション部隊はNUSKU / Dushaam星系までも届かない。帝国プレーヤーがNUSKU / Dushaam星系を失うのは致命的である。「Imperium序盤戦」の帝国プレーヤーはAgidda星系に12F、またはNUSKU / Dushaam星系に(12F, 1M)を配置して動かさないことが重要である。そして予備艦隊(5SC, 5DD, 5TR)をKarkhar星系に配置できれば、リアクション移動でNUSKU / Dushaam星系まで、反対方向はEPSILON ERIDANI星系とMarkhashi星系まで届き穴埋め用の予備艦隊として最適である。BBを建造する前の地球プレーヤーに帝国12Fを攻撃・撃破して、更に侵攻する余力はない。

帝国の戦術変更

「Imperiumの艦隊戦術論」の1つとして「地球艦隊を如何に早く短距離に移すか?」がある。その議論は地球の母艦2個艦隊と戦闘機6個艦隊(ここでは機動部隊と呼ぶ)の含めた艦隊編成に向う。しかしモンテカルロ・シミュレーションで何百万回も宇宙戦闘を繰り返すと、小型艦編成の地球艦隊が小型艦編成の帝国艦隊に対して安定して80%以上の高い勝率を得るには、第2ラウンド終了時点で帝国艦隊の2倍(戦闘艦は1.7倍)を維持している必要があり、地球の機動部隊は距離決定のDMにほとんど寄与しないことが分かる。そして地球艦隊は帝国艦隊の2倍位の数的優位を維持した状態で短距離に移らないと安定的に勝利できないこと、結果的に距離決定のDM+1は帝国小型艦を強くしていることに気が付く。

 地球プレーヤーはSCの長距離カバーとしてのTR、そしてDDの質的劣勢とミサイル艇の有効利用のため、最初から数的優位を得るための艦隊編成を用いる。CRやBBの運用を始めても艦隊編成の基本構造は変化しない。

 帝国プレーヤーは帝国小型戦闘艦の地球小型戦闘艦に対するミサイル力の優位を使い、多少艦隊数で劣勢でも、短距離に移るまでに数的優位を確立できれば勝利することができる。つまり数的劣勢で距離決定のDM+1を受けて、長距離を維持し帝国艦隊が数的優位を確立してから、距離決定のDM+1が地球プレーヤーに移ることになる。ここで短距離に距離が変化しても、帝国艦隊の優位は変わらない。小型艦隊のビーム戦は命中率が高いので、数的優位の帝国艦隊は16.7~33.3%程度のビーム命中率の低さを数的優位で補えるので、地球と帝国ともに半数程度の艦隊を失う形で進行する。短距離で劣勢になると距離決定のDM+1が帝国プレーヤーに戻り、長距離になりやすくなる。帝国プレーヤーは小型艦の質的優位性を使って数的劣勢を解消しているのである。

 地球プレーヤーが100 RUを超える予算規模の艦隊を編成する場合、艦隊編成にBBを入れる。一方、帝国SC, DD, MS(3F)の小型戦闘艦では地球BBを撃破できないため、帝国プレーヤーは地球のBB建造に対抗してCLやCS (または主力艦)を建造する。小型艦で編成した帝国艦隊と地球BBを含む艦隊規模98 RUの艦隊同士の宇宙戦闘は、地球が攻撃側での地球勝率93 %、帝国が攻撃側でも地球勝率75 %である。BBを含む地球艦隊に対して数的劣勢な帝国艦隊は脆いことが分かる。

 最初に、1個艦隊の地球BBをN個艦隊の帝国CSで攻撃する宇宙戦闘を確認しておく。帝国CSのミサイル射撃はBBを16.7%の確率で撃破し、集中ミサイル射撃では50.0 %の確率で撃破する。帝国の勝率を80 %以上にするにはN ≧ 3である(集中ミサイル射撃を用いない場合はN ≧ 6)。次に3CSに小型艦を加えた帝国艦隊と同じ予算で編成できる1BBを含む地球艦隊との宇宙戦闘の勝率を計算した。

 帝国艦隊の艦隊数の1.5倍の艦隊数を揃えたBBを含む地球艦隊が相手では、小型艦編成の帝国艦隊が質的に優れていても、攻撃時に苦戦することが分かる。地球プレーヤーがBBを建造すると、数的不利な条件では帝国CS等のミサイル力の優れている宇宙艦多数で地球1BBを攻撃することが難しい。また帝国プレーヤーが主力艦(B1~BB)を建造した場合も、主力艦を複数のミサイル艇の集中ミサイル射撃から守るために、数的優位は必要となる。つまり、地球プレーヤーがCRやBB、帝国プレーヤーが主力艦を建造すると、帝国プレーヤーは数的優位を用いる艦隊に編成変更する必要がある。帝国プレーヤーが安価に数的優位を得る場合、艦隊編成にTRを入れることになる。帝国プレーヤーが艦隊編成に11TRを追加した場合の計算結果を次に示めす。

 Imperiumの戦闘は攻撃プレーヤーに戦闘組作成のイニシアチブがあるため防御側が弱い。地球プレーヤーは数的優位を得る艦隊編成をしている。地球の艦種性能もあり防御時は弱い。帝国プレーヤーが質的優位のある小型艦編成の帝国艦隊に11TRを加えると、質的効果は無くなり、防御時に弱くなっている。帝国艦隊には地球艦隊のように長距離戦をTRでカバーする必要が無いため、帝国艦隊中のTRは地球BB攻撃や主力艦防御以外では足手纏いである(しかもビーム射撃のカバーとしては弱過ぎる)。帝国プレーヤーは、基本的に質的優位がある小型艦を複数星系での宇宙戦闘で使い、数的優位が必要な場合にのみ11TRとCSや主力艦を使う戦闘形態が一番効率的である

ここでの計算はCSを用いたが、数的優位を用いるなら主力艦でも問題は無い(一度建造すれば補充で回収可能である)。

Imperium 中盤戦

 S. ListはShuruppak星系とNUSKU / Dushaam星系が「戸締り」の場所として理想的と記述している[9]。MIRABILISのワールド化を終えた地球プレーヤーの次の目標は扉星系をProcyon星系 からShuruppak星系に、 Barnard's star星系(Agidda星系)からNUSKU / Dushaam星系に変更することである。帝国プレーヤーの目標は序盤戦と同じ地球圏攻略の足場としてのProcyonの征服と帝国前哨基地が設置である。私は「Imperiumの中盤戦」はシリウス圏で、地球による「Shuruppak攻略」と帝国による「Procyon攻略」が交錯する。私はシリウス圏で起こる一連の戦闘を「シリウス戦役」と呼んでいる。

戦争の長さと帝国干渉

 第2版[15-17]では、予算増額がそのゲーム(戦争)中に限定されている(戦時予算増額)ため、予算の大幅増額は期待できない。帝国プレーヤーが予算の恒久的な増額を獲得するには、「皇位継承」で「内戦」が発生し、支援した政府軍が勝利する必要がある。内戦が発生する確率は3.7 %なので、4ゲームターンのゲーム中に1回以上発生する確率が14.0 %、8ゲームターンのゲームでも26.1 %である。1回以上発生する確率が 50%を超えるのは19ゲームターン(51.2 %)、2回以上発生する確率が50.0 %になるは45ゲームターンである。 1回の戦争を長くしても、短い戦争を多く繰り返しても、内戦発生の確率は同じだが、内戦支援の報酬はゲーム(戦争)中にしか受け取れないことに注意する必要がある。ほとんどの場合、最終ターンの内戦は役に立たない(平和が短く次のゲーム中に帰還する場合を除く)ので、最終ターンの回数が多い短いゲーム(戦争)を繰り返す方が少しだけ損と言える。

 帝国干渉で発生する「内戦」と「皇帝の注目」を除くイベントの1ターン当りの効果は、1ミサイル力= 1 RUで資源量換算すると「好況、(名ばかり)増援、攻勢命令」で+1.393 RU、「不況」で-1.404 RU、「辺境地での危機」は派遣艦隊が戻ってくるので±0.623 RUとなる。イベントの合計は-0.01 RUとなる。「不況」の影響は終戦後まで継続しないので評価値はもう少し小さくなる。つまり時間積分した場合の実行的な帝国干渉の影響はゼロと言える。つまり内戦を多く発生させるために帝国干渉表を多く振り、支援した政府軍を勝利させれば予算が恒久的に増える。

「Imperium序盤戦」の帝国プレーヤーの収入は33RUなので、Lanchesterの二次則の損害比から攻撃可能な地球の艦隊規模(RU)は38.2 RUとなる。地球プレーヤーの収入は39 RUなので補充を考えると攻撃可能である。

「Imperium中盤戦」の帝国プレーヤーの収入は33~30 RUである。シリウス圏の第1種星系が地球のワールドにならなければ、地球プレーヤーの収入は46~49 RUに留まるので、シリウス戦役序盤は巡洋艦、中盤からは主力艦の補充と財政強化の直訴による戦時予算追加を入れると許容範囲である。

 地球プレーヤーが艦隊規模33~30 RUの帝国艦隊を攻撃するには、損害比から地球艦隊は艦隊規模51.9~48.1 RUが必要である(地球艦隊にBBが加わり、帝国プレーヤーがCSを使うと損害比が少し小さくなる)。地球プレーヤーの収入46~49 RUを考えると、「Imperium中盤戦」の中盤からは、帝国艦隊と「艦隊決戦」が可能にとなったと言える。

 帝国プレーヤーは(11SC, 11DD)を1ターンで再建できるだけの予算(44 RU)があるとかなり戦い易くなる。この予算額を得るには内戦を2回以上経験する必要がある。2回以上内戦が発生する確率が50%以上になるのは45ゲームターンである。ゲーム数に直すと6~9ゲームになるので「Imperium中盤戦」までの長さとしては長すぎる。実際のImperiumのキャンペーンでは、終了まで2回、少し運が良いと3回内戦が発生する位だと考えられる。つまり恒久的な予算増は「Imperium序盤戦~中盤戦」で+3.5 RU、「Imperium中盤戦~終盤戦」で3.5~7 RU位と考えられるので、帝国プレーヤーは補充艦隊を有効に使って帝国艦隊を整える必要がある。

シリウス戦役

「Imperium中盤戦」における帝国プレーヤーの攻撃目標は「Procyon星系攻略」であり、「シリウス圏の2つの第1種星系が地球のワールドになるのを阻止すること」が、シリウス戦役の防衛目標である。

 シリウス戦役序盤は、SIRIUS星系とAgidda星系を通過しょうとする地球プレーヤーを帝国プレーヤーが阻止する形となる。帝国プレーヤーはSIRIUSとAgiddaの両星系をリアクション移動の範囲に入れることができない。つまりSIRIUS星系にリアクション移動で迎撃をすると、Agidda星系は突破され第2線のNUSKU / Dushaam星系まで攻撃を受けることになる。シリウス戦役序盤の帝国プレーヤーは、次の2つの選択枝がある。

  1. Agidda星系を拠点艦隊(12F, 1M)で要塞(塹壕)化して、ジャンプ艦隊でSIRIUS星系に進出する地球艦隊を迎撃する
    • Agidda星系、NUSKU / Dushaam星系を突発される可能性があるのでKarkhar星系等に予備艦隊が必要である。
    • 代わりに、SIRIUS星系の戦闘結果次第でProcyon星系が攻撃可能となる利点がある。
  2. Barnard's star星系に攻勢をかけ、SIRIUS星系を通過した地球艦隊はEPSILON ERIDANIとMarkhashiで迎撃する、
    • 地球プレーヤーが第1移動フェイズでSIRIUS星系に、第2移動フェイズにMarkhashi、EPSILON ERIDANIに進出するのを許容する。
    • 代わりに、帝国プレーヤーは第1移動フェイズでEPSILON ERIDANIに生産配置した帝国艦隊をSIRIUS星系にジャンプ移動させ、帝国主力艦隊でEPSILON ERIDANI星系とMarkhashi星系を攻撃し、SIRIUS星系、EPSILON ERIDANI星系とMarkhashi星系の地球艦隊を退却不可で殲滅する。
    • Barnard's star星系を攻撃しているため地球艦隊が分割され易い。

 帝国プレーヤーがAgidda星系に前哨基地を設置していない場合は、NUSKU / Dushaam星系を拠点艦隊(12F, 1M)で要塞(塹壕)化して、NUSKU / Dushaam に生産・配置されたジャンプ艦隊とリアクション部隊でAgiddaの恒星ヘクスを占領してBarnard's starに圧をかける。後は2.と同じである。リアクション移動の範囲を「TAU CETI, Markhashi, EPSILON ERIDANI〜3ジャンプ〜Karkhar〜3ジャンプ〜NUSKU / Dushaam」とできるメリットがある。この型で、母艦と戦闘機を積載した輸送艦をAgiddaの惑星地表ボックスに降下させて、11F [1MS]とAgiddaを塹壕化したプレーヤーもいる[20]。

 帝国圏は帝国プレーヤーの絶対防衛圏とも言える領域である。NUSKUからAMARKU / LAGASHにつながる帝国圏の支流は、NUSKU / Dushaam星系を入れると第1種惑星地表ボックス3個、第2種惑星地表ボックス5個を有しており、シリウス圏(第1種惑星地表ボックス2個、第2種惑星地表ボックス1個)よりも収入的に重要である。私が見てきた早期の帝国崩壊のほとんどは、帝国がAgidda - Barnard's starでの攻勢/防衛に失敗してNUSKU / Dushaam星系を失い、そしてAMARKU / LAGASHにつながる帝国圏の支流も失われて、経済力差に帝国プレーヤーの艦隊と継戦意思が粉砕された形が多い[20]。「Imperium中盤戦」の帝国プレーヤーにはシリウス圏、Agidda星系を放棄してもShuruppakとNUSKU / Dushaamの両星系は維持することが求められる。

 シリウス戦役序盤で劣勢となった帝国プレーヤーはシリウス圏(TAU CETI, Markhashi, EPSILON ERIDANI)の防衛のため、リアクション移動範囲を「TAU CETI, Markhashi, EPSILON ERIDANI〜3ジャンプ〜Karkhar〜3ジャンプ〜NUSKU / Dushaam」としてAgidda星系の防衛を諦めることになる。ここでの帝国プレーヤーのリアクション移動範囲は「Agidda 〜3ジャンプ〜Zaggisi 〜3ジャンプ〜Shuruppak」とすることも可能だが、シリウス圏(TAU CETI, Markhashi, EPSILON ERIDANI)の3星系損失とAgidda星系損失の影響の軽重は簡単に分かるのでAgidda星系を切るはずである。しかしゲームの流れから視野が狭くなり切れなくなることもあるので注意が必要である。プレーヤーが主力艦を持つと反撃範囲が重ってない星系が攻略目標となる。シリウス圏の攻防とAgidda星系の攻防には主力艦の位置を含めたリアクション移動範囲の冷静な駆引きが求められる。

 帝国プレーヤーにとってシリウス戦役中盤は、初めての本格的な防衛戦となる。地球プレーヤーから見るとProcyon星系からのジャンプ先はSIRIUS星系のみだが、SIRIUS星系からはMarkhashi星系、EPSILON ERIDANI星系の2ヶ所に、Markhashi 星系又はEPSILON ERIDANI 星系からはEPSILON ERIDANI星系又はMarkhashi星系、TAU CETI星系、Shuruppak星系と3ヶ所に増加する。つまりProcyon星系から進む地球プレーヤーにとつてシリウス圏は戦線が拡大していく戦場である。帝国プレーヤーはシリウス圏を使って地球艦隊を引き込み、分散させて、帝国小型艦が効率的な小規模艦隊戦に持ち込むのは防御戦略の1つである。帝国プレーヤーからは、SIRIUS星系に進むとき以外は、Shuruppak星系から3ヶ所全てにジャンプ移動でき、シリウス圏の帝国前哨基地/ワールドは地球艦隊の退路を妨害するからである。

 もう1つの防御戦略は拠点防御である。地球プレーヤーが「Imperiumの序盤戦」を上手く戦えるのは、防御拠点星系がリアクション移動範囲内であること、退路妨害とスクリーン力8のモニター艦による部分が大きい。拠点防御戦略を使う帝国プレーヤーはシリウス圏の防衛戦が本格化する前にスクリーン力8以上の主力艦を手に入れる必要がある。帝国プレーヤーはEPSILON ERIDANI、TAU CETIにワールドを持っているため、シリウス圏の地球艦隊の退路を簡単に妨害できる。そしてスクリーン力8の主力艦は、長距離での地球MB、CR (、CS)のミサイル射撃またはCL、CRの近接攻撃でしか撃破できない。帝国主力艦を短距離のビーム射撃で撃破できるのは地球主力艦だけである。つまり地球MB、CL、CRのいない退路の無い地球艦隊は、帝国B1~BBが攻撃側として投入されると、自動的に全減である。帝国プレーヤーは余裕があるタイミングで必ず主力艦(B1~BB)を建造することがシリウス戦役中盤に向けた準備として重要である。帝国プレーヤーが主力艦を持てば、必ず地球プレーヤーは戦艦を建造することになる。注目点としては、帝国のビームモニター艦もシリウス圏では主力艦と同じ働きをするということである。帝国主力艦が届くまではビームモニター艦で対応するのも一案である

 モンテカルロ・シミュレーションの戦闘組作成処理のプログラミングから見えてきた事の1つに、地球ドレッドノート(B)は攻撃力強化型CRであり、地球戦艦(BB)はミサイル搭載モニター艦(ジャンプ可)である。帝国B1~BBは短距離戦闘力強化型のモニター艦(ジャンプ可)である。そしてスクリーン力8以上の主力艦に共通するのは、短距離では無類の強さを発揮することである。主力艦同士の1対1での勝率は、下に示すように額面の数値の大きさとは異なり帝国BB>地球BB>帝国B2, B1である。

 帝国プレーヤーは「Imperium序盤戦」に実現できなかった「Procyon征服」を「Imperium中盤戦」で実現するのは難しいと考えるもしれない。その場合、帝国プレーヤーは攻勢軸をBarnard's starに向けることになる。その結果、地球プレーヤーが1回の大規模な艦隊決戦に負けて全てを失うパターンは数々見られた光景ではある[19]。しかし本論文のImperiumは退路妨害が簡単にできるため[8]、キャンペーンを決めるためにBarnard's starに向うのは勧められない。遠回りに思えても地球主力艦隊と戦闘してSIRIUS星系を突破してProcyonを征服する方が、地球の収入源の破壊と地球艦隊の分散撃破に繋がり近道である。尚、主力艦等を使ってBarnard's starの要塞(塹壕)を突破し、SIRIUS方面の圧力を一時的に下げるのは有効である。

 帝国プレーヤーにとって地球圏の一方の入口がProcyon星系である。MILRABILISのワールド化により、Procyon星系への接続を妨害するために艦隊を配置する必要がある星系が4ヶ所に増え、Procyon星系の接続を妨害することは更に困難になっている。EPSILON ERIDANIとMarkhashiは接続を妨害されないため、恒星ヘクスを占拠されていても生産した艦隊をEPSILON ERIDANI星系またはMarkhashi星系からSIRIUS星系にジャンプ移動させることができる。SIRIUS星系は惑星地表ボックスを持たないため、片方が一方的に不利にならないので、艦隊決戦をするには良い戦場である。そのため1ゲーム中に1~2度は「艦隊決戦」が発生する。帝国プレーヤーの場合、防戦で1度、攻撃で1度勝利すると、Procyonが視界に入いる。この時期、Procyon星系はまだ帝国プレーヤーの手の届く範囲にある。突発的なチャンスに対応して、1戦闘フェイズで惑星地表ボックスの攻略までを終える必要があるので、十分な数の地上軍を用意しておく必要がある。

 互いにゲーム前(平時)に準備した艦隊を磨り潰すと、帝国プレーヤーの艦隊は、1ターンの生産(33 RU)で造れる艦隊(11SC, 7DD)と補充の巡洋艦(主力艦)が攻撃・迎撃を担う。地球プレーヤーが規模44 RUの帝国艦隊に対抗するには規模59RUの艦隊(11SC, 10DD, 2MB, 10TR)が必要である。地球プレーヤーは収入が46~49 RUあるため、平時の準備が十分であれば第1ターンにBBを建造し、規模45 RUの(8SC, 2MB, 1BB, 9TR)で規模44 RUの帝国艦隊に対抗することも可能である。

 プレーヤーが主力艦を投入すると、戦闘機スタックの防衛線は簡単に突破される。これを避けるため、戦闘機スタックを惑星地表ボックスに降して塹壕戦化すると、恒星ヘクスは敵支配となり易く、リアクション移動/戦闘で取り戻す必要が出てくる。地球プレーヤーは「Agidda 〜3ジャンプ〜Junction 〜3ジャンプ〜Markhashi, EPSILON ERIDANI」、「NUSKU / Dushaam 〜3ジャンプ〜SOL 〜3ジャンプ〜SIRIUS」とシリウス戦役序盤のポイントとなる両方の星系をリアクション移動の範囲に入れることができる。しかし帝国プレーヤーはNUSKU / Dushaam(当然、Agiddaも)とSIRIUSの両星系をリアクション移動の範囲に入れることができない。したがって地球プレーヤーは、帝国プレーヤーのリアクション移動範囲を見て、SIRIUSを突破してMarkhashiかEPSILON ERIDANIに、Agiddaを突破してNUSKU / Dushaamに、地球艦隊を転進させることが可能である。

「Imperium中盤戦」における地球プレーヤーの目的は、Shuruppak星系とNUSKU / Dushaam星系の片方を地球支配の扉星系とすることである。そしてシリウス戦役序盤は「SIRIUS星系を越えたMarkhashi、EPSILON ERIDANIに進出すること」、中盤は「EPSILON ERIDANIとTAU CETIのワールド地球ワールド化」、終盤は「Shuruppak星系の征服」が目標である。帝国プレーヤーに隙があれば「NUSKU / Dushaam星系の征服」で目的を達成することもできる。

 シリウス戦役中盤には地球プレーヤーもリアクション移動の範囲を選択する必要がある。リアクション移動の範囲が「Agidda 〜3ジャンプ〜Junction 〜3ジャンプ〜Markhashi, EPSILON ERIDANI」または「Barnard's star〜3ジャンプ〜Procyon 〜3ジャンプ〜Shuruppak, TAU CETI」となるためである。地球プレーヤーはAgiddaとShuruppakの両星系を、帝国プレーヤーはAgiddaとシリウス圏の星系を同時にリアクション範囲に入れることができないため、Agidda星系の重要度はシリウス戦役中盤を戦う両プレーヤーから見て低下する。プレーヤーはBarnard's star星系とAgidda星系をモニター艦(M)と戦闘機(F)、惑星防衛システム(PDM)で要塞(塹壕)化して放置することが多い。ただし気を抜くと、NUSKU / Dushaam星系から帝国主力艦が湧き出てAgidda星系、Barnard's star星系を攻略することがある。このためShuruppak攻略は注意が必要である。

 シリウス圏 (Markhashi, EPSILON ERIDANI, TAU CETI)は、恒星間距離が1~1.5パーセク(2~3ヘクス)と近く狭いため、モニター艦の亜光速移動も使った攻防が繰り広げられる。地球MBは亜光速移動できないため、地球プレーヤー は深宇宙でのモニター艦迎撃を苦手とする。シリウス戦役は戦術レベルの工夫や駆引きが使い易い、興味の尽きない戦場である。

AgiddaとBarnard's star

 帝国プレーヤーが配置1で始めると、NUSKUとAgiddaはSOLとBarnard's starと同じ位置関係になる。Agidda星系はNUSKU / Dushaam星系の出城に、Barnard's star星系はSOLの最終防衛線になる。異なる点は、地球プレーヤーが内線に位置し、帝国プレーヤーが外郭に位置していることである。両プレーヤーがシリウス圏で戦闘を続けていると、帝国プレーヤーはAgidda星系の防衛力に頼り、NUSKU / Dushaam星系の防衛が疎かになり易い(拠点艦隊をAgidda星系とNUSKU / Dushaam星系に分散する等)。帝国のリアクション部隊がシリウス圏に向いていると、NUSKU / Dushaam星系に届かなくなるため、地球艦隊がAgidda星系を突破するとNUSKU / Dushaam星系の防衛が間に合わなくなる。内線側の地球プレーヤーは帝国艦隊がBarnard's star星系を突破しても、はリアクション部隊で穴埋めできる。「Imperiumの序盤戦」でも述べたが、この非対称性からNUSKU / Dushaam星系を失う帝国プレーヤーを良く見かける[20]。

 これを避ける方法の1つに、初期配置でAgiddaに前哨基地を置かない配置2、3を用いることがある。帝国プレーヤーが1歩下がることでNUSKU / Dushaam星系が前線となり、最重要星系に大規模な拠点防衛の艦隊を配置することになる。NUSKU / Dushaam星系を突破されても、NUSKU / Dushaamより高価値な星系はないので、全てはNUSKU / Dushaam星系の攻防に収束する。帝国プレーヤーのリアクション移動の範囲もNUSKU / Dushaam星系〜3ジャンプ〜Karkhar〜3ジャンプ〜シリウス圏の全ての星系となるため、帝国プレーヤーはシリウス戦役で内線の有利を使えるようになる。ただし、帝国はAgiddaに前哨基地を配置しないため、収入が32 RUとなる。

 「Imperium中盤戦」は、地球プレーヤーが「帝国圏入口の2ヶ所の扉星系 の一方を征服する」か、帝国プレーヤーが「地球圏入口のProcyonを征服する」と終わる。

Imperium 終盤戦

 Imperium終盤戦は2つに別れる。帝国プレーヤーがキャンペーン終了に向う「地球圏侵攻」と、地球プレーヤーがキャンペーン終了に向う「帝国圏への進出」である。どちらもキャンペーン終了に向うという意味でImperium終盤戦だが、当然内容は大きく異なる。

地球圏侵攻

 帝国プレーヤーが「Procyonを征服し前哨基地を設置する」と「地球圏侵攻」が始まる。「Imperium序盤戦」から中盤戦をとばして「地球圏侵攻」が始まる場合もある。「地球圏侵攻」は「地球がProcyonを奪還する」のが先か、それとも「帝国がMILRABILISに帝国ワールドを配置する」のが先かの競争である。「地球がProcyonを奪還する」と状況は「Imperiumの中盤戦」に戻る。「帝国がMILRABILISに帝国ワールドを配置する」とキャンペーン終了が秒読みに入ったことになる。

 古きインペリストならば、初期配置で帝国がProcyonに前哨基地を配置できた時代[21]を思い出すと良い。マップ上のほぼ全て星系に前哨基地とワールドが配置されているため、

  1. 地球プレーヤーの収入は43 RU位、46~49 R
  2. 帝国プレーヤーの収入は34 RU + α (α: 予算増額)、
  3. 帝国の残り前哨基地が4個と少ない、

の点は異なるが、要所となる星系は同じである。

 帝国プレーヤーはMILRABILISがある地球圏支流に矛先を向けないで、SOL攻略を優先するかもしれない。しかしMILRABILISを攻略すると地球の収入が6 RU減り、帝国の収入が1 RU増える。帝国前哨基地は帝国ワールドに交換されるので、前哨基地のストック数も減らないので地球圏攻略の前準備として重要である。

 Barnard's star ~ ALPHA CENTAURI A / B ~ SOL~ Proxima centauri ~ Junctionは接続が切れない収入27 RUの領域[7]である(ここではSOL防衛圏と呼ぶ)。帝国プレーヤーはSOL防衛圏の攻略のため、戦争中に前哨基地を配置しながら前進する必要がある。帝国プレーヤーの前哨基地ストック4個でワールドを4ヶ所(MILRABILIS攻略済なら3ヶ所)征服する必要があるので、1ゲームでのキャンペーン終結は難しい。キャンペーン終結了まで2~3ゲームを必要とする。SOL防衛圏は帝国前哨基地を配置しないと維持が難しい上に、ALPHA CENTAURI A / B攻略で前哨基地が2個必要なので、Junction→ Proxima centauri→ ALPHA CENTAURI A / Bと攻略するのが良いルートとなる。これで帝国プレーヤーの前哨基地ストックが無くなるので、ALPHA CENTAURI A / Bの帝国ワールド化を待って、SOLとBarnard's starを攻略し、キャンペーン終結とする。

 Procyonを失った地球プレーヤーは勢力範囲をSOLのある地球圏とMILRABILISのある地球圏の支流に分断される。地球プレーヤーは地球が先攻なら、第1~2ターンの戦力的優勢を使ってProcyonを奪還しなければならない。地球プレーヤーが後攻の場合、SOL側地球圏の防衛拠点をJunction、Hades、Hephaistosの3星系にすると、リアクション部隊の発進星系がProxima centauriに制限される。防衛拠点をJunction、Hades、Infernoの3星系とすると、SOL、ALPHA CENTAURI A / B、Proxima centauriをリアクション部隊の発進星系として使えるが、防衛線の外側に位置するHephaistos、Calgary、Forlornは放棄することになる。帝国プレーヤーには前哨基地のストックに余裕が無いので、地球プレーヤーはProxima centauriとJunctionが攻略されない限り、地球圏内の前哨基地と接続できる可能性は高い。

 帝国プレーヤーは、地球プレーヤーの収入に与える影響が小さいため、Barnard's starから侵攻せずに、 Procyonから侵攻する。Procyonから侵攻すると地球が守る星系を増やせる点でも帝国プレーヤーに都合が良いからである。一方で地球艦隊には Procyonに進出するルートが5本あるので、帝国プレーヤーが地球艦隊のProcyon進出を阻止することは以外と難しい。このため地球プレーヤーが帝国プレーヤーにProcyon進出を強く印象付けて、帝国プレーヤーにProcyonに戦力を集中させることができる。地球プレーヤーは1回のチャンスでの逆転を狙い、地球BBを含む艦隊でAgidda → NUSKU / Dushaamと侵攻するのは良いチャレンジである。成功するとProcyon征服以上のインパクトがある。この時期の地球プレーヤーはチャンスを逃さない注意力と諦めない意志が必要である。帝国プレーヤーが注意深いと、Agidda → NUSKU / Dushaam 侵攻は出来ない代わりに帝国艦隊が2分割される。MILRABILISが地球ワールドである間にProcyon星系を奪還するのは、骨の折れる作業になるが、帝国戦力が減るイベントが発生するか、帝国タンカーを撃破して一時的にSIRIUS星系を通過不可にするなどの幸運が無くても可能性はある。

帝国圏へ

 帝国プレーヤーがNUSKU / Dushaam星系を失っている場合、地球プレーヤーのリアクション移動範囲は、NUSKU / Dushaam〜3ジャンプ〜SOL〜3ジャンプ〜SIRIUSまたはApishal〜3ジャンプ〜Barnard's Star〜3ジャンプ〜Procyonにできる。そして地球プレーヤーは分艦隊で粛々と帝国圏支流を攻略する。従って帝国プレーヤーがNUSKU / Dushaam星系を失うと、NUSKUからAMARKU / LAGASHにつながる帝国圏の支流も失われる。NUSKU / Dushaamと支流(第1種惑星地表ボックス3個、第2種惑星地表ボックス5個)の収支は帝国-6 RU、地球+25 RUに対してシリウス圏(第1種惑星地表ボックス2個、第2種惑星地表ボックス1個)の収支は帝国-3 RU、地球+17 RUよりも大きいため、NUSKU / Dushaam星系を失った場合、シリウス圏の保持が必須である。

 帝国プレーヤーが巧く進めているとNUSKU / Dushaam星系は帝国領の可能性が高い。その代わりに、地球プレーヤーが「Shuruppakを征服」して「帝国圏への進出」が始まる。「帝国圏への進出」の状況ではShuruppakとNUSKU / Dushaamが初期の地球のBarnard's starとProcyonの関係に見立てることができる。

「帝国圏への進出」時の地球プレーヤーの目標は「NUSKU / Dushaamの征服」である。地球プレーヤーがシリウス圏の地球ワールド化で手にする収入は最大65 RUである。帝国プレーヤーの収入は30 RU以下なので、帝国艦隊が対抗可能な地球艦隊の艦隊規模(RU)は34.6 RU迄である。ここにきて地球プレーヤーは2ヶ所を同時に攻める規模の艦隊を手にすることになる。この2個艦隊を用いて、Shuruppakの防衛とNUSKU / Dushaamを征服することになる。一方で地球プレーヤーは前哨基地のストックが厳しくなっているはずである。地球圏で15個使い、ShuruppakとMarkhashi、Agidda とNUSKU / Dushaamに設置していると残り2個である。NUSKUの地球ワールド化と見込んで、帝国圏支流の前哨基地の征服を粛々と進め、AMARKU / LAGASHに前哨基地を設置し、前哨基地のストックが3個に回復する地球ワールド化まで留まることになる。帝国プレーヤーから見て残り地球プレーヤーの前哨基地ストックが3個ということは、地球プレーヤーはShulgiとEnki Kalamma、そして第1種惑星地表ボックス以外に前哨基地を設置する余裕が無いということである。

今後の検討によっては、地球圏に設置する前哨基地を減らせる可能性はあると思うが、現時点では、Imperium序盤戦を乗り切るために、15個以上の前哨基地を使う必要を感じている。

Imperium終盤戦の帝国プレーヤーの目標は「NUSKU / Dushaamの保持」と「Shuruppakの再征服」である。帝国プレーヤーが地球プレーヤーの艦隊規模(RU)に対抗するには55.2 RU以上の艦隊規模(RU)、56 RU以上の収入が必要である。この時期迄に内戦が3回発生し、支援した政府軍が3勝したとしても期待できる恒久的な予算増額は+10.5 RU位なので、15 RU以上不足している。帝国は不足する予算を各艦種の性能と主力艦の補充で補う形でゲームを進めることになる。「Imperium中盤戦」の間に多数(最低3個艦隊)の主力艦を用意し、補充でローテーションできる状態を作る必要がある。

 帝国のSC, DD, Fといった小型戦闘艦の優秀さは既に見てきた。帝国の巡洋艦(CS, CR, CA)は小型戦闘艦の強化型に近いため、使い易いがコストに見合わなくなる[19]。帝国の主力艦(B1, B2, BB)は地球BBの高い額面数値や主力艦キラーのMBの影になりがちだが、巡洋艦迄の帝国艦隊とは別物で優れた艦艇である。先に見たように主力艦同士の1対1での勝率では帝国BB>地球BB>帝国B2, B1である。また地球プレーヤーから見た帝国主力艦は、長距離ではCS以上かMBでしか破壊できない、短距離では地球の主力艦のビーム力でしか撃破できない。そして地球MBは主力艦キラーだが 11MBでも帝国主力艦は4個艦隊位しか破壊を期待できない。一度に5個艦隊以上の帝国主力艦を相手にすると、第1ラウンドで帝国主力艦の撃破失敗 = 宇宙戦闘敗北となる可能性が大きい。帝国は補充で主力艦を受け取れるため、数多くの主力艦を運用できる。大量投入された帝国主力艦は、終盤戦に入ったImperiumを中盤戦に戻すためのゲーム・チェンジのツールとなる可能性がある。一方で収入が少ない帝国プレーヤーが多数の主力艦を運用し続けるのは無理である。帝国プレーヤーは道具(主力艦)を集め、使うタイミングを見極める戦略眼が求められている

 帝国圏での争いは、地球プレーヤーの前哨基地ストックの不足から、地球プレーヤーが前哨基地を設置するのはShulgiとEnki Kalammaの2星系に限られる。この2星系を帝国プレーヤーが確保していると帝国圏内の全ての前哨基地と接続されるのである。地球プレーヤーは帝国前哨基地を破壊するが、地球前哨基地を設置できないので、何時でも再植民し、戦闘機やモニター艦を配置し、地球艦隊を分散させることができる。

 そしてImperium終盤戦こそ、帝国の攻勢軸はNUSKU / Dushaam星系からBarnard's starに向うことになる。Enki KalammaとShulgiを要塞(塹壕)化して、Shuruppak に攻勢かけ、地球プレーヤーの注意をShuruppakとEnki Kalammaに引き、その間にNUSKUを起点とした攻勢がどこ迄とどくか試すときである。地球プレーヤーがEnki Kalamma攻略に注力しているタイミングで、Barnard's star星系に攻勢する。巧く勝利できれば、地球プレーヤーをキャンペーンから脱落させることができる。地球プレーヤーがEnki Kalammaではなく、NUSKU / Dushaamを狙っている場合は、Shuruppakを掠め取れる可能性が高い。地球プレーヤーには前哨基地を余分に設置する余裕がないはずなので、遅滞戦術と平和時の再植民で失地を回復することも考えに入れる必要がある。

 帝国プレーヤーがShuruppak星系とNUSKU / Dushaam星系を失い、AMARKU / LAGASHにつながる帝国圏の支流も失われると、キャンペーン終了が秒読みに入ったことになる。

第1版のルール[10-14]では、財政強化の直訴での予算増額が恒久的なため、どの様な盤面であっても(長く不毛な)時間をかけて財政強化の直訴を続ければ逆転の可能性があった。それに対応するため、テラフォーミングのオプションルール利用や前哨基地の駒数の上限を無くすルールの提案があった[22]。第2版[15-17]では、財政強化の直訴での予算増額がその戦争中に限定されたため、(長く不毛な)時間を費やすことは無くなったが、帝国の逆転も難しくなった。

シナリオ

シナリオ1: 最速の第2次恒星間戦争

シナリオ2: シリウス戦役

シナリオ3: 黄昏れの帝国

Appendex
Imperium とLanchesterの数理モデル

 戦闘における戦闘員の減少度合いを数理モデル化したLanchesterの法則(Lanchester's law: ランチェスターの法則)をImperium上で考えてみた[18]。全てのウォーゲームや歴史ボードゲームに適用できるとは思わないが、Imperiumはルールに"In basic terms, Imperium is a science-fiction simulation game"、シミュレーションと明記してあるので、戦闘(戦争)を数理モデル化したLanchesterの法則は、Imperiumに適用できると考えられる[10, 12, 15]。

 Lanchesterの一次則(Linear law)は、戦闘は1対1の戦いの集まりとモデル化している。Imperiumは戦闘組を作るときに、防御側を一列に並べて、攻撃側が1対1の戦闘組を作る(正確ではないが簡易的なやり方)。この方法は一次則のモデルと同じに思えるかもしれない。しかし一次則は余った兵士は戦闘に関与できない(味方を越えて後ろから攻撃できない)。Imperiumの戦闘組は余った艦隊を完成した戦闘組に加えることができる。そして味方越しに射撃できるため、一次則からは外れる。

 Lanchesterの二次則(Square law)の数理モデルは近似的に次の微分方程式が成り立つとしている[18]。

Δb / Δt = - r * c . . . . . . (式9-1)
Δr / Δt = - b * k . . . . . . (式9-2)

 例えば、r個艦隊の帝国DDとb個艦隊の地球DDとの戦闘とする。cとkは、Imperiumのミサイル射撃の命中確率(帝国c: 1/3, 地球k: 1/6)、ビーム射撃の命中確率(帝国c: 1/2, 地球k: 1/2)に対応していると考えると、インペリストは見なれた式になると思う。つまりImperiumの宇宙戦闘は二次則に従って減少することを示唆している。実際、モンテカルロ・シミュレーションが示す艦種毎の艦隊数の減少曲線は、二次則に従って減少する[5]。

 しかしLanchesterの数理モデルでは、cとkは定数としているが、Imperiumでのcとkは先に示したように距離により変化するため、時間の関数である。戦闘数Nを増やし距離を統計的に平均化すると、第3ラウンド以後は cとkは定数と扱えるため二次法則に従う。しかし第1~2ラウンドのcとkは時間変化するため別に漸次処理する必要がある。一種の艦種で編成された艦隊同士の宇宙戦闘は、cとkを簡単に導出できるが、複数の艦種で編成された艦隊同士の宇宙戦闘でのcとkは簡単に記述できない。実際の戦闘をLanchesterの法則に従って解析する場合、戦闘結果の時間変化からcとkを導出する。ここではモンテカルロ・シミュレーションの結果を利用して、攻撃側yに対する防御側xの交換比(c/k)または(k/c)の導出を検討する。Imperiumは兵員も含めてリソース(Resources Unit: 資源単位)としているので、艦艇数を艦隊規模(RU)に置き換えられる。

 防衛側: 帝国の初期の艦隊規模(RU)の二乗をXr(0)、攻撃側: 地球の初期の艦隊規模(RU)の二乗をYr(0)とする。Imperiumは攻撃側に投入戦力の選択権があるので、Yb(0) > Xr(0)と仮定すると、戦闘終了時の攻撃側: 地球の残艦隊規模(RU)の二乗Ybは(式9-3)となる。

Yb = Yb(0) - (k/c) * Xr(0) . . . . . . (式9-3)

攻守を入れ替えると、Yr(0) > Xb(0)となり、戦闘終了時の攻撃側: 帝国の残艦隊規模(RU)の二乗 Yrは(式9-4)となる。

Yr = Yr(0) - (c/k) * Xb(0) . . . . . . (式9-4)

 Fig. 9-2に、Fig. 8-1(b), Fig. 8-2, Fig. 8-3の縦軸、横軸を艦隊規模(RU)の2乗でプロットした結果である。Fig. 9-2(a)は(式9-3)と同じ表式、Fig. 9-2(b)は(式9-4)と同じ表式になっている。Fig. 9-2の近似直線の傾きがの損害比(k/c)、(c/k)に対応する。 Fig. 9-2(c)は小規模艦隊の宇宙戦闘結果をプロットした図である。攻撃側: 地球の近似直線を(式9-5)、攻撃側: 帝国の近似直線を(式9-6)として示す。(式9-5)のxとyは(式9-3)のXb(0)とYr(0)に、(式9-6)のxとyは(式9-4)のXr(0)とYb(0)に対応している。

y = 1.08 * x + 41.37 . . . . . . (式9-5)
y = 0.65 * x + 4.50 . . . . . . (式9-6)

 (式9-5)と(式9-6)の傾きは、損害比(k/c)と(c/k)に対応している。(式9-5)の傾き(k/c)は1.08なので、防御側: 帝国1 RUの損失に対する攻撃側: 地球の損失が1.08 RUと損害比はほぼ互角である。(式9-6)は、傾き(c/k)から防御側: 地球1 RUの損失に対して攻撃側: 帝国は0.65 RUの損失 (攻撃側: 帝国1 RUの損失に対する防御側: 地球の損失が1.54 RU)なので、損害比はかなり帝国有利なことが分かる。

 データとして使ったシミュレーション結果は攻撃側勝利の結果を集めているので、(式9-3)、(式9-4)のYb 、Yrは1以上である。(式9-6)の切辺は4.50なので両軍全減よりも4.50 RU^2分だけ多くの帝国艦隊を投入していることを示している。(式9-5)の切辺は41.37なので、地球艦隊は帝国艦隊より初期戦力として多くの艦隊を投入する必要があることが分かる。地球が大きな初期戦力を必要としているのは、Lanchesterの二次則の外側にある第1~2戦闘ラウンドで失う艦隊規模(RU)が含まれていると考えられる。切辺部分は、戦闘終了時に残存する艦隊規模(RU)と第1~2戦闘ラウンドで損失する艦隊規模(RU)を加算した値と考えると、この戦闘モデルを理解し易い。


Fig. 9-2 The result of plotting the relationship between the defensive fleet resource amount and the fleet resource amount required for the attacking side to win, according to Lanchester's square law
(a) the attacker is an imperial player; (b) the attacker is the Terran player; (c) for small fleets.

戦力分割モデル

 Imperiumキャンペーン上の地球プレーヤーは、帝国プレーヤーに対して損害比で劣っているが資源量収入に優位がある。つまり地球プレーヤーは、収入で優位を得るまでは、帝国艦隊を分割(初期の地球プレーヤーは、ProcyonとBarnard's starに帝国戦力を分割している)して、局地的優位を作る必要があることを示している。

 帝国プレーヤーが帝国圏とシリウス圏で確保できる資源量は32 RU位なので√Xr(0) = 32とする。Fig. 9-2(b)の"11SC+DD-SC+DD+MB"の傾き(k/c)は2.0、切辺Ybは510.9 なので(式9-3)から√Yb(0) = 50.6となる。つまり地球プレーヤーは収入が51 RUを越えるまでは、帝国の戦力を分割(初期の地球は、ProcyonとBarnard's starに帝国戦力を分割している)する必要がある。帝国艦艇を2分割してxr1 = xr2 = 16とすると、両方を各個撃破するには√Yb(0) = 39.2~45.2となる。計算値の幅は切辺に相当する艦隊が残存する場合と1.0しか残存しない場合の幅である。地球プレーヤーが地球圏で確保できる資源量は42~49 RUなので、MIRABILISがワールド化するまでは、地球プレーヤーは厳しい状況にあることが分かる。

 シリウス圏を地球プレーヤーが確保すると、帝国プレーヤーの収入は30 RUに減少し、地球プレーヤーの収入は49~63 RUとなる。この状況、√Xr(0) =30では、√Yb(0) = 48.1となり、地球艦隊は帝国艦隊を「艦隊決戦」で撃破できることを示している。弱者となった帝国プレーヤーは地球艦隊を分割して戦う必要がある。Fig. 9-2(a)の"11SC+DD-SC+DD"の傾き(c/k)は0.71、切辺(Yr)は50.7 なので、√Xb(0) = 63では√Yr(0) = 53.6、地球艦隊を2分割してxb 1 = xb2 = 32として各個撃破する場合、√Yr(0) = 39.4となる。つまり直訴や内戦で予算増額を10 RU確保しなければ、Shuruppak方面と NUSKU / Dushaam方面に地球艦隊を2分割するだけでは対抗できないことを示唆している。各個撃破は分割数を多くする方が有利(地球艦隊を3等分した場合、√Yr(0) = 33.0)なので、帝国プレーヤーはShuruppak方面で巧く地球艦隊を分割する必要があると考えられる。

 上記解析では戦闘機を入れてない。戦闘機を入れた解析は今後の課題である。Lanchesterの法則は盾よりも矛が強いモデルのため、一方に主力艦があるような宇宙戦闘のモデル化には適してない。大型艦艇を入れたモデル化も今後の課題である。


宇宙戦闘の勝率は試行回数N = 10000のモンテカルロ・シミュレーション[2]の結果である(Ver. 3.1.5)。

最後に

 私は、長く第1次恒星間戦争、特に第1ターンの展開を考えてきた。それは私の考えられる展開では地球プレーヤーが第1次恒星間戦争終了時迄にProcyon星系を保持できる可能性が50~60%位しか無かったからである。そして保持に成功しても、それ以降の戦争でProcyonが征服される可能性は非常に高いと感じていた。Procyon星系が征服されると、キャンペーンは地球降伏に収束していくからである。実際、第2次恒星間戦争以後の展開に詳しく言及している国内の検討は発表されてない。私の検討も最近まで第1次恒星間戦争で止まっていた。

 TUBGメンバーからは「Imperiumは日露戦争のような戦争だから、地球が勝利するには幸運が必要だ」と言われても、第1次恒星間戦争だけなら分かる、しかし繰り返す戦争(戦役)では必敗となるのは納得できなかった。GDWとMarcはそんなゲームを作らないと信じて、自らの能力不足や何らかの思い違いがあるのではないかと考えていた。

 3度目のパラダイムシフト「接続でチェックするのは恒星ヘクスではなく星系ヘクス」(慣れないと間違える)と「接続(連絡)線の始点と終点の処理」は、もう一度、Imperiumをプレイし、プログラムを考え作るモチベーションとなった。輸送母艦戦術には賛否があると思うが、戦闘の資源量収支も整い、防御プレーヤーが惑星防衛システム(PDM)を守るために前哨基地(OPM)を犠牲にするプレイが減った。パラダイムシフト3と新戦術(?)、そしてモンテカルロ・シミュレーションの結果から、初期の地球プレーヤーがProcyon星系を保持できると確信できるようになった。そして地球プレーヤーと帝国プレーヤーはシリウス戦役で新しい課題に直面することが分かり、この一連の論文をまとめる切っ掛けとなった。

References

[1] K. Ueda: Dash's clinic: Imperium "Imperium Geopolitics" (2022).
[2] K. Ueda: Dash's clinic: Imperium "First move in the Terran Confederation" (2022).
[3] K. Ueda: Dash's clinic: Imperium "After the first crisis" (2022).
[4] K. Ueda: Dash's clinic: Imperium "FAQ of Imperium" (2005).
[5] K. Ueda: Dash's clinic: Imperium "Estimate space combat results" (2021).
[6] K. Ueda: Dash's clinic: Imperium "Fighter Transporter" (2021).
[7] K. Ueda: Dash's clinic: Imperium "Both ends along jump routes for connection" (2021).
[8] K. Ueda: Dash's clinic: Imperium "Milestone and goal" (2021).
[9] S. List: GRYPHON #1, pp. 6 (1980).
[10] Imperium rules booklet (Conflict Game Co.: 1977).
[11] M. W. Miller: The Dragon #20, pp. 4, pp. 28, pp. 31, III (No.6) (1978).
[12] Imperium rules booklet (GDW: 1979).
[13] Imperium rules booklet (HobbyJAPAN CO., Ltd.: 1985).
[14] Imperium rules booklet (HobbyJAPAN CO., Ltd.: 1982).
[15] Imperium rules booklet (GDW: 1990).
[16] Imperium rules booklet (Kokusai-tushin Co., Ltd.: 2019).
[17] Imperium rules booklet (Kokusai-tushin Co., Ltd.: 2001).
[18] F. W. Lanchester: "Aircraft in Warfare; The dawn of the fourth arm." Constable & Co. Ltd. (1916). Ref.
[19] P. Kosnett: The Grenadier #1, pp. 9 (No.2) (1978).
[20] Private game matches and post-game analysis with other clubs’ member since 1986.
[21] I. Nakao: TACTICS Mgz. Jpn. No. 20, pp. 21 (1985).
[22] T. Nishiyama: Privet website (since 2001). URL://www.geocities.jp/aokigaryou/


1. Imperium
第8回 存亡の機を越えて
付録A 帝国と暗黒星雲
Dash's Clinic: All right reserved by Kazuhiro Ueda, 2022.

Club TUBG was established in 1984 as a volunteer club.
We keep enjoying Simulation/Board/CardGames, ComputerGames and so on.